(完結)婚約破棄から始まる真実の愛

青空一夏

文字の大きさ
上 下
25 / 34

アリッサ王女の結婚式

しおりを挟む
 私の結婚式はとても華やかに行われるはずだった。純白のドレスに二重の真珠のネックレスとブレスレット。ティアラだって真珠をこれでもか!というぐらいにてんこ盛りにつけさせた。当然、誰よりもかわいい私ができあがった。

 鏡を見れば、この世の者とも思えぬかわいい女性がえくぼを浮かべてこちらを見ている。完璧だわ!これ以上の女はこの世にいないはず。

 私は胸を反らせて大聖堂に向かった。皆が私の美しさにどよめく。良い気分だわ。そうして式が始まる直前になって姿を現したのは・・・・・・お姉様? だった。

 銀髪は光り輝き、アメジストの瞳はどんな宝石よりも美しい! 氷姫と揶揄された高貴な雰囲気をまとった圧倒的な存在感に、周りの者は釘付けになっている。

 ちょっと、誰の結婚式だと思っているのよ? しかも、なぁに、あのドレス? 純白じゃない? 被ってるわよ?色が! 私は、お姉様のドレスを観察する。胸元は全て真珠が縫い付けられている。しかも、あの色合いは最上級ランクの真珠だ。色も違えて、ピンクパールやナチュラルゴールドの真珠が花模様をつくりながら規則的に並んでいる。

 真珠で刺繍をしているようなものだ! なんて贅沢な! そして、お姉様が綺麗に結い上げた髪には黄金のティアラが輝く。そこにも、真珠! 真珠とダイヤのオンパレードだわ・・・・・・

 負けた・・・・・・って、なんでここにお姉様がいるのかしら? 死んだのではなかったの? 盗賊の首領の愛人になっているのではなかったの?


 私は、お姉様のところに行き尋ねたわ。

「生きていらっしゃったんですね?」

「えぇ、あなたがシミだらけにしたドレスのお陰かしら? さぁ、心置きなく結婚式を楽しんで?」


 見回せば、周囲は全てカルロス王国の兵士達に囲まれている。これは、やっぱりそういうことよね?

「ノーラン様が私を奪いに兵を連れて来てくださったのだわ! あぁ、それで、お姉様が代わりにこの国を継ぐということね? いいわよ。こんなしけたブロンディ王国なんていらないわ。あ、ついでにこのジェイデンもあげてもいいけど・・・・・・」

 お姉様は苦笑しているばかりだ。

「アリッサの頭のお花は、どんな状況でも咲いているのね」

 不思議な言葉を言った。そっか、お花のようにかわいいということよね?

 お姉様に散々、嫌がらせしてやったけれど、そんなに怒ってないみたい。

 結婚式は滞りなく終わった。すると、戴冠式も行うと大聖堂の教皇様が言い出した。

「あぁ、お姉様に譲るわ。私はノーラン様とカルロス王国に行くからぁーー」

 そうよ、この結婚式は余興だわ。式をあげた花嫁をさらうというロマンチックなシチュエーションでしょう?


*:.。 。.:*・゚✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*


「ただ今から正当な女王の跡継ぎであるバイオレット王女の戴冠式を行います。すべてのここにいる王族達が承認し祝福をするものである」


 お姉様のティアラがそっとはずされ、ブロンディ王国の王冠が載せられた。各国の王族が、私の結婚式の時の3倍の声を張り上げた。

「「「おめでとうございます!!」」」「「「祝福と栄光を」」」「「「太陽と月と星に」」」

 祝福の声が鳴り止まない!! これじゃぁ、誰が主役かわからないじゃない!!


 ひとしきり、祝福の大合唱が収まったころ、ノーラン様が声を張り上げた。

「これから、このブロンディ王国の粛清をする! 邪悪な者どもを集めろ!」

 私は、お母様とお父様とジェイデンと一緒に兵士から剣を向けられたのだった。

 
しおりを挟む
感想 126

あなたにおすすめの小説

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

見捨てられたのは私

梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。 ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。 ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。 何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~

矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。 隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。 周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。 ※設定はゆるいです。

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。

星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。 グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。 それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。 しかし。ある日。 シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。 聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。 ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。 ──……私は、ただの邪魔者だったの? 衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

婚約者を想うのをやめました

かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。 「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」 最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。 *書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。

処理中です...