(完結）婚約破棄から始まる真実の愛

ブルジョワジーのドン

　ーーブロンディ王国の商業地域には、数多の大富豪達が住んでいる。彼らは貴族ではないが、着実に貴族よりも勢力を伸ばしつつあるブルジャワジーなのだった。そのブルジョワのドンとも言われるアダムは、カミラ女王から孫娘の王女バイオレットの後見人になるように託されていた。けれど、彼はカミラ女王が亡くなってすぐに持病が悪化し意識不明の重態になっていた。漸く、回復し病院から戻った時には、すでにバイオレット王女は隣国に渡っていたのだった。ーー




「バイオレット王女が国境で亡くなっただと？　そんなばかな！　しかも、あの妹のバカ姫が女王になるという噂もあるだと？そんなことは許さない！」

　眉間に皺を寄せて、怒り狂う私に、仲間のブルジョワジーも激しく同意してみせた。

「今こそカミラ女王のご恩に報いるときだ！我らを保護し商業の発展に多大なる影響与えた賢女王様の秘蔵っ子のバイオレット王女の行方をお捜しし、もし殺されているのならそれに関わった者にはそれ相応の償いをしてもらう。生きていらっしゃったのなら、どんな場合であろうと我らが女王にすえよう！」

「「「異論なし」」」

「「「賛成だ！　」」」

「一説には、カルロス王国に嫁ぎに行く途中で襲われたとの話もありますよ。なんでも、護衛は一人もいなくて馬車一台だけだったとか･･････かなり、確かな情報だそうです」

　バカな！あり得ない。馬車一台で嫁入りだと！それが、本当なら、あのカミラ女王の愚息を絞め殺してくれるわい。私はカミラ女王に生前から進言していたのだ。愚かな息子夫婦とばか姫は国外追放にするようにと。できれば、どこかに閉じ込めてもいいと。

　（バイオレット王女様。ぜひご無事でいてくだされ。そうでなければ、この爺はあの世でカミラ女王様に会わせる顔がありません！）

「念のため、カルロス王国には私が確認しに行こう。ブロンディ王国の商業地域を代表する商会長アダムがカルロス王国のトリスタン王に謁見したいと使者を送ってくれ。最近、開発した目の色を変えるレンズと珍しい布を貢ぎ物に加えよう。トリスタン王は珍しいものがお好きと伺ったことがある」

　私は、この老体にむち打って、カルロス王国に行くことを決意したのだった。