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私は強くなってみせる(バイオレット王女視点)
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私は、カルロス王国に無事に着けるとは思っていなかった。間違いなく、途中で殺されると思ったのだ。
護衛騎士が3人しかいないのだ。とても、私を守ることはできない。
国境には、凶悪な犯罪者達が潜んでいると聞いたことがある。もしもの時の為に、辱めを受けることがあったら自害しようとお婆様から頂いた護身用の懐刀をドレスの下に隠し持っていた。
国境に近づくにつれ、私の体は恐怖で震えてくる。すると、予想通り荒くれ者の集団が近づいてくるのが見えた。もう、おしまいだわ。きっと、私は殺される。いいえ、殺されるくらいなら、まだましかも・・・・・
けれど、その男達をよく見れば、カルロス王国の紋章の入った剣を腰に下げていた。ひときわ背の高い、ブラウンの髪と瞳の男が馬車のなかを覗きこんできた。
顔立ちが整った、けれど冷たさも感じるその男はかなり位が高い人物に違いない。なぜなら、他の騎士達より格段に高価そうな衣服を身につけていたから。
「おい、女。侍女の一人も連れず、荷物もトランク一個か?呆れたな。王女のふりもしないのか?」
その言葉は当然だと思ったが、その後の言葉には涙が出そうになった。『奴隷にしては美しいな』と、その男は言った。ブロンディ王国の正当な、本来であれば女王の地位を引き継ぐはずであった私は、奴隷になってしまうのだろうか?
名前を聞かれ、やっとのことで自尊心を取り戻した私はその男に先に名乗るようにと促した。彼はノーラン・カルロスと名乗った。彼なら、知っている。トリスタン王の唯一の息子だ。次期王に認定されている、王太子なのだ。
トリスタン王の正妃は、この王太子を産んでまもなく他界していた。トリスタン王は、それから正妃は迎えておらず、側妃が数人いるとお父様がおっしゃっていた。その側妃にアリッサを所望されたので、私が代わりに行けと・・・・・・
「カルロス王国のノーラン王太子なら、アリッサを嫁がせてもいいが・・・・・・いや、だめだな。どちらにしても冷酷で容赦のない性格と聞いている。アリッサに、もしものことがあったら大変だしな。アリッサのほうが、お前より女王に向いているということも幸いした。アリッサがブロンディ王国の女王になり、お前がカルロス王国に行けばよい。良いか? お前はもう、ブロンディ王国の人間ではない。どんなことになっても、戻る場所は、ないからな! しっかりと、カルロス王国で励むように! それが王族の勤めだ」
お父様の見送りの言葉を思い出す。冷酷で容赦のない性格の王太子と形容されていた。その男が、私を否定している言葉を黙って聞いていた。
「このような異例の出で立ちで来たあなたを王女と認めることはできない。王女であれば、100人を下らない随行者がつくのが当然だからだ。お前もそう思うだろう?」
この王太子の言葉には、肯定の言葉しか出てこなかった。
「おっしゃり通りだと思います。通常ならあり得ません」
私は、それしか言えないのだった。『私は王女だ』と言って、誰が信じてくれようか?私は、王女と名乗ることはもう二度とできないかもしれない。
「お前は私の愛妾になれ!」
その男の言葉とともに馬に抱き上げられて乗せられた。トランクなど置いていけと言われて我慢していた涙があふれ出した。
あのドレスだけは、絶対に持っていたい。大好きなお婆様との思い出が詰まった大事なドレスだ。
「・・・・・・あれだけは、お願い」
そのドレスを拾い上げ手渡された私は、思わずお礼を呟いた。すると、驚いたことに彼は私の髪を優しく撫でたのだった。
☆
カルロス王国に着くと、王と思われる男性が王太子に、嬉しそうな笑みを浮かべて提案してきた。
「ふむ。美しいな。ノーラン、この娘は私に譲れ。新しく建てた南の宮殿を全部やろう」
私のとっては、どちらも同じことだ。王か王太子の慰み者になって、このカルロス王国で生きていくしかないのだろうか。
「だめです。なにを交換条件にされても無駄です。この女は私のものです。誰にも譲れない」
私は、王太子のその言葉に賭けてみようと思った。『誰にも譲れない』と言ったその言葉を本物にしてみせる。恋愛経験が少ない私だし、この王太子を好きかどうかもまだわからない。
けれど、この王太子の信頼を勝ち取れば、ここに私の生きる場所ができるかもしれない。多くは望まない。愛妾などと言われても傷ついたりしない強さがほしい。私は、強くなりたい。なろう! そう決心したのだった。
護衛騎士が3人しかいないのだ。とても、私を守ることはできない。
国境には、凶悪な犯罪者達が潜んでいると聞いたことがある。もしもの時の為に、辱めを受けることがあったら自害しようとお婆様から頂いた護身用の懐刀をドレスの下に隠し持っていた。
国境に近づくにつれ、私の体は恐怖で震えてくる。すると、予想通り荒くれ者の集団が近づいてくるのが見えた。もう、おしまいだわ。きっと、私は殺される。いいえ、殺されるくらいなら、まだましかも・・・・・
けれど、その男達をよく見れば、カルロス王国の紋章の入った剣を腰に下げていた。ひときわ背の高い、ブラウンの髪と瞳の男が馬車のなかを覗きこんできた。
顔立ちが整った、けれど冷たさも感じるその男はかなり位が高い人物に違いない。なぜなら、他の騎士達より格段に高価そうな衣服を身につけていたから。
「おい、女。侍女の一人も連れず、荷物もトランク一個か?呆れたな。王女のふりもしないのか?」
その言葉は当然だと思ったが、その後の言葉には涙が出そうになった。『奴隷にしては美しいな』と、その男は言った。ブロンディ王国の正当な、本来であれば女王の地位を引き継ぐはずであった私は、奴隷になってしまうのだろうか?
名前を聞かれ、やっとのことで自尊心を取り戻した私はその男に先に名乗るようにと促した。彼はノーラン・カルロスと名乗った。彼なら、知っている。トリスタン王の唯一の息子だ。次期王に認定されている、王太子なのだ。
トリスタン王の正妃は、この王太子を産んでまもなく他界していた。トリスタン王は、それから正妃は迎えておらず、側妃が数人いるとお父様がおっしゃっていた。その側妃にアリッサを所望されたので、私が代わりに行けと・・・・・・
「カルロス王国のノーラン王太子なら、アリッサを嫁がせてもいいが・・・・・・いや、だめだな。どちらにしても冷酷で容赦のない性格と聞いている。アリッサに、もしものことがあったら大変だしな。アリッサのほうが、お前より女王に向いているということも幸いした。アリッサがブロンディ王国の女王になり、お前がカルロス王国に行けばよい。良いか? お前はもう、ブロンディ王国の人間ではない。どんなことになっても、戻る場所は、ないからな! しっかりと、カルロス王国で励むように! それが王族の勤めだ」
お父様の見送りの言葉を思い出す。冷酷で容赦のない性格の王太子と形容されていた。その男が、私を否定している言葉を黙って聞いていた。
「このような異例の出で立ちで来たあなたを王女と認めることはできない。王女であれば、100人を下らない随行者がつくのが当然だからだ。お前もそう思うだろう?」
この王太子の言葉には、肯定の言葉しか出てこなかった。
「おっしゃり通りだと思います。通常ならあり得ません」
私は、それしか言えないのだった。『私は王女だ』と言って、誰が信じてくれようか?私は、王女と名乗ることはもう二度とできないかもしれない。
「お前は私の愛妾になれ!」
その男の言葉とともに馬に抱き上げられて乗せられた。トランクなど置いていけと言われて我慢していた涙があふれ出した。
あのドレスだけは、絶対に持っていたい。大好きなお婆様との思い出が詰まった大事なドレスだ。
「・・・・・・あれだけは、お願い」
そのドレスを拾い上げ手渡された私は、思わずお礼を呟いた。すると、驚いたことに彼は私の髪を優しく撫でたのだった。
☆
カルロス王国に着くと、王と思われる男性が王太子に、嬉しそうな笑みを浮かべて提案してきた。
「ふむ。美しいな。ノーラン、この娘は私に譲れ。新しく建てた南の宮殿を全部やろう」
私のとっては、どちらも同じことだ。王か王太子の慰み者になって、このカルロス王国で生きていくしかないのだろうか。
「だめです。なにを交換条件にされても無駄です。この女は私のものです。誰にも譲れない」
私は、王太子のその言葉に賭けてみようと思った。『誰にも譲れない』と言ったその言葉を本物にしてみせる。恋愛経験が少ない私だし、この王太子を好きかどうかもまだわからない。
けれど、この王太子の信頼を勝ち取れば、ここに私の生きる場所ができるかもしれない。多くは望まない。愛妾などと言われても傷ついたりしない強さがほしい。私は、強くなりたい。なろう! そう決心したのだった。
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