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お婆さまが残してくれた純白のドレス
しおりを挟む翌日、アリッサは、私のためにお婆さまが用意してくださった婚礼用のドレスを着ていた。
「それは、私のドレスですよね? なぜ、貴女が着ているの?」
「だってえーー、このドレスがすごく気に入ってしまったのですものぉ。お母様も私の方がよく似合うって、おっしゃったのですよぉ? だから、私が着てあげることにしましたぁ」
「これは、お婆さまが私に残してくださったものですよ。これだけは、駄目です。お婆さまの形見でもあるのですから・・・・・・」
「えぇーー。お姉様ったら、すごく意地悪なのですねぇ。あぁ、私、喉がかわいたわぁ。きゃっ、こぼしちゃったぁーー。これじゃぁ、落ちないかもぉ。今年の葡萄酒って、果汁の色合いが濃くて美味しいからぁ。好きですわぁ」
アリッサがグラスの葡萄酒のほとんどを、純白のドレスの胸元にこぼした。赤紫色に染まるドレスに私の目は涙で霞む。
「なんてことを・・・・・・アリッサ、貴女はどこまでも酷い子なのね・・・・・・」
「えぇーー? 酷いのはお姉様でしょう? 私にこのドレスをくださらないのがいけないのですよぉ?それに、これはうっかりですぅ。あぁ、体がベタベタになっちゃうわぁ。あぁ、これはもういらないですぅ。お返ししますねぇ」
アリッサが、そう言いながらそのドレスを乱暴に脱ぐと私に投げてよこした。
「よく見たら、あんまり素敵じゃなかったみたいぃ。この胸元のレースの部分なんて、ずいぶん旧式だわぁ!今は、大きく胸のあいたデザインが主流ですよぉ。お母様に言って、早速仕立てていただかないと・・・・・・。あぁ、お姉様はこれが大層お気に入りでいらっしゃるから、これで充分だとお母様に言っておいてあげますねぇ。胸元の赤紫は、いいアクセントになるかも・・・・・・きっと、隣国で流行りますわぁ」
アリッサは、可愛らしく小首を傾げて、いつもの小動物のようなあどけない微笑みを浮かべた。私は思わずこのピンクブロンドの天使のように愛らしい妹の頬を思いっきりひっぱたいたのだった。
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