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婚約破棄された私
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宮殿の中庭で、私は婚約者のジェイデン・アドラー公爵様といつものようにお茶を飲んでいた。
「なぜですか?私のどこがいけないのでしょう?」
私は、『婚約破棄をしたい』とおっしゃるジェイデン様に穏やかな口調で尋ねた。気持ちの動揺を表してはいけないと、いつもお婆さまが教えてくださったからだ。
「いや、君にいけないところなどひとつもないよ。ただ、それが罪ということもあるな」
「罪ですか?」
「そう。バイオレット王女、君は妹のアリッサ王女のような可愛げがなさ過ぎる。それは、男にとっては罪だ」
「おっしゃる意味がわかりませんわ」
「つまりだ。君といるより、アリッサ王女といるほうがはるかに楽しいということだ。そこでだ、私達の婚約はなかったことにしてほしい。心配はしなくていい。君の両親も賛成してくれた。君は謝らなくてもいいよ。君がつまらない女性なのは罪だけれど、私は許してあげよう。その代わり、次期女王となるアリッサ王女との婚約を祝福してくれ」
幼い頃からの婚約者は、いつもの優しい声で私に告げると満ち足りた面持ちで去って行った。私は、ジェイデン様の姿が見えなくなるまで待ってから涙を流したのだった。
気持ちを落ち着け涙を拭いて宮殿に戻ると、お母様とお父様とアリッサがジェイデン様と笑い合ってお話をしていた。私の姿を見つけるとアリッサが飛んできて私に抱きついた。
「お姉様、聞いてぇ。私、ジェイデン様と婚約できるんですって! とても、嬉しいわぁ。お姉様もおめでとう。隣国に嫁ぐことが決まったそうよ! 良かったわねぇ。お相手は、とても大人な方ですって」
「大人?それは、どういう意味かしら?」
「あぁ、隣国のカルロス王国の王様は御年50歳だそうよ?落ち着いているバイオレットにぴったりじゃなくて?」
18歳になったばかりの私に、お母様は、おっしゃったのだった。
「本当はな、妹のアリッサにきた縁談だ。しかし、この可愛い、か弱いアリッサを隣国に嫁がすことなどできない。ゆえに、しっかり者の姉であるバイオレット、お前が隣国に嫁ぐのだ。わかったな?」
お父様は、感情のこもっていない眼差しで私を見ながら、そうおっしゃった。
「お父様ぁ。ありがとう!アリッサもお父様とお母様の側を離れたくないですぅ。お姉様も良かったですわねぇ。カルロス王国といえば大国でしてよ? きっと、贅沢三昧できますわぁ。私は、そんなお歳の方はいやですけれど、お姉様なら大丈夫そうですものぉ」
アリッサは、可愛い笑顔で小首を傾げた。すると、お父様とお母様、ジェイデン様もが一斉に顔をほころばせた。
「「「なんて、可愛いんだ!(のかしら) 天使じゃないか(だわ)」」」
私は、今は亡き女王さまであるお婆様のお気に入りだった。お婆様は、銀髪にアメジストの瞳の、冷たい印象を与える美貌の清廉潔白な方だった。常に厳しく礼儀作法にも拘った。お婆さまから次期女王になるようにと、教育を受けた私はお婆さまの美貌を継いで氷姫と呼ばれた。お婆さまが急な病で一年前に亡くなると、お父様が女王代理になった。このブロンディ王国は代々、女王が治める国なのだ。
次期女王のはずだった私は、お婆さまが亡くなると途端に両親から冷遇された。もとからお婆さまと仲が良くなかった両親はアリッサを露骨にかわいがるようになった。
今の私は、このブロンディ王国に味方は一人もいないのだ。お婆様がいた頃の侍女達は全て入れ替えられていた。
「お婆さま。なぜ、私を置いて急に亡くなってしまったのですか?」
私はお婆さまのお好きだった薔薇の庭園まで走って行き、そこでしゃがみ込んで泣いたのだった。
「なぜですか?私のどこがいけないのでしょう?」
私は、『婚約破棄をしたい』とおっしゃるジェイデン様に穏やかな口調で尋ねた。気持ちの動揺を表してはいけないと、いつもお婆さまが教えてくださったからだ。
「いや、君にいけないところなどひとつもないよ。ただ、それが罪ということもあるな」
「罪ですか?」
「そう。バイオレット王女、君は妹のアリッサ王女のような可愛げがなさ過ぎる。それは、男にとっては罪だ」
「おっしゃる意味がわかりませんわ」
「つまりだ。君といるより、アリッサ王女といるほうがはるかに楽しいということだ。そこでだ、私達の婚約はなかったことにしてほしい。心配はしなくていい。君の両親も賛成してくれた。君は謝らなくてもいいよ。君がつまらない女性なのは罪だけれど、私は許してあげよう。その代わり、次期女王となるアリッサ王女との婚約を祝福してくれ」
幼い頃からの婚約者は、いつもの優しい声で私に告げると満ち足りた面持ちで去って行った。私は、ジェイデン様の姿が見えなくなるまで待ってから涙を流したのだった。
気持ちを落ち着け涙を拭いて宮殿に戻ると、お母様とお父様とアリッサがジェイデン様と笑い合ってお話をしていた。私の姿を見つけるとアリッサが飛んできて私に抱きついた。
「お姉様、聞いてぇ。私、ジェイデン様と婚約できるんですって! とても、嬉しいわぁ。お姉様もおめでとう。隣国に嫁ぐことが決まったそうよ! 良かったわねぇ。お相手は、とても大人な方ですって」
「大人?それは、どういう意味かしら?」
「あぁ、隣国のカルロス王国の王様は御年50歳だそうよ?落ち着いているバイオレットにぴったりじゃなくて?」
18歳になったばかりの私に、お母様は、おっしゃったのだった。
「本当はな、妹のアリッサにきた縁談だ。しかし、この可愛い、か弱いアリッサを隣国に嫁がすことなどできない。ゆえに、しっかり者の姉であるバイオレット、お前が隣国に嫁ぐのだ。わかったな?」
お父様は、感情のこもっていない眼差しで私を見ながら、そうおっしゃった。
「お父様ぁ。ありがとう!アリッサもお父様とお母様の側を離れたくないですぅ。お姉様も良かったですわねぇ。カルロス王国といえば大国でしてよ? きっと、贅沢三昧できますわぁ。私は、そんなお歳の方はいやですけれど、お姉様なら大丈夫そうですものぉ」
アリッサは、可愛い笑顔で小首を傾げた。すると、お父様とお母様、ジェイデン様もが一斉に顔をほころばせた。
「「「なんて、可愛いんだ!(のかしら) 天使じゃないか(だわ)」」」
私は、今は亡き女王さまであるお婆様のお気に入りだった。お婆様は、銀髪にアメジストの瞳の、冷たい印象を与える美貌の清廉潔白な方だった。常に厳しく礼儀作法にも拘った。お婆さまから次期女王になるようにと、教育を受けた私はお婆さまの美貌を継いで氷姫と呼ばれた。お婆さまが急な病で一年前に亡くなると、お父様が女王代理になった。このブロンディ王国は代々、女王が治める国なのだ。
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今の私は、このブロンディ王国に味方は一人もいないのだ。お婆様がいた頃の侍女達は全て入れ替えられていた。
「お婆さま。なぜ、私を置いて急に亡くなってしまったのですか?」
私はお婆さまのお好きだった薔薇の庭園まで走って行き、そこでしゃがみ込んで泣いたのだった。
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