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2 婚約破棄だ!(チャーリー王子殿下視点)
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チャーリー王子殿下視点
「夜会に出席するな」と言ったのにスワンはノコノコとやってきた。
ーーもう我慢がならない! こいつは俺の言うことを黙ってきいていればいいんだ。なのに逆らうとは、やはりこんな女は捨てるべきだな。
急にそう思い立った俺は、ここぞとばかりに婚約破棄をしてやろうと思う。俺のお気に入りの女も虐めていたのはわかっていた。
「スワン・キャラメルホイップ伯爵令嬢! 貴様の性根は腐りきっているな。その醜い嫉妬と妬みの心はこの国の王子の妃には相応しくない!」
俺は高らかに声をあげ、スワンの奴を糾弾する。
「嫉妬と妬み・・・・・・でございますか? このわたくしが誰にそのような感情を抱いているのでしょうか?」
ーーたかが伯爵令嬢のくせに公爵令嬢より高価なドレスを身にまとっているとは、なんて見栄っ張りの身の程知らずなんだ! ドレスだけは上等な生地と仕立てでも、あのうっとうしい前髪と汚れたような黒髪では台無しだがな。
「もちろんあたしですわ! スワン様はチャーリ王子殿下に大事にされているあたしに嫉妬し妬んでいるのです」
隣に寄り添う俺の愛しいピンクナが勇気を振り絞ってスワンを糾弾する。
――偉いぞ! ピンクナ。あとでたくさん褒めてやらないとな。
「そのようなことは、初めて知りました。あなたはチャーリー王子殿下から大事にされているのですか。良かったですね」
信じられないくらい拍子抜けする答えがスワンから返ってきたことで呆れかえる俺だ。
「誤魔化さないでくださいませ! スワン様はあたしを学園内の噴水に突き飛ばしたり、廊下ですれ違いざまに足をひっかけましたわよね?」
ーーなおも糾弾する手を緩めないピンクナよ。君は愛らしいうえに勇敢だ。
「そのようなことをした覚えはないのですけれど」
いつまでも往生際悪く否定する性悪女のスワンに俺はうんざりだ。
「証拠などなくてもいいのだ! ピンクナがされたと言えばそれが真実だ!」
「そうですか。それで、いったいチャーリー王子殿下はどうしたいのですか?」
ーーなんでこいつはこれほど偉そうなんだよっ?
「わかりきったことだ。婚約破棄だ! 俺様、チャーリー・ハームズワース王子はスワン・キャラメルホイップ伯爵令嬢に婚約破棄を言い渡す!」
「わかりました。では、失礼します」
冷静な口調でその場を去ろうとするスワンになおさら腹がたつ。
「ちょっと待て。そのまま帰れると思うな! レオ・エジャートン、ボトルごとワインをかけろ」
レオは騎士団長の次男で俺の取り巻きの一人だ。
スワンの足をひっかけたのは大司教の三男のジェイコブ・パーシーだ。スワンのドレスは見事な紫に染まり大理石の床に転んだその膝からは血がにじみでていた。
スワンはレースのハンカチで顔を拭うと、怪我をしたほうの足をかばいながら立ち上がった。
「痛いだろう? ずっと貴様に虐められてきたピンクナの心の痛みに比べればささやかな痛みであろうが、しかとその痛みを忘れるでないぞ! 貴様は王都から追放だ。学園からも退学させるし、二度と王宮に顔を見せるでないぞ!」
俺は自分の言葉に酔いしれながらも得意気にそう宣言してやった。
慌てて夜会のホールに小走りでやってきた父上と母上がワインまみれで怪我をしたスワンを見て叫んだ。
「こ、これは! なんとしたことだ? 誰の仕業ですか? ん? チャーリーお前の横にいる女はなんだ? なぜお前がスワン様の隣にいない?」
「たかが伯爵令嬢に様などつけるとは、気でも狂ったのですか? こいつはキャラメルホイップ伯爵令嬢で俺の大事なピンクナ・アホヤネ侯爵令嬢を虐めた身の程しらずです。ですから、俺はこいつに婚約破棄を宣言しました」
「こ、このぉーー! バカもんがぁぁあああーー。早く謝れ、土下座しろ! 今すぐだ! 一刻を争う」
父上から頬を張り飛ばされてホールの壁に吹っ飛んだ俺は意味がわからない。
「謝っていただかなくても結構ですわ。婚約破棄のお言葉! ありがたく頂戴いたしました!」
スワンがあのうっとうしい前髪を右手でかき上げると、ターコイズブルーとエメラルドグリーンが混ざり合った見たこともないような美しい瞳が現れたのだった。
ーーこんな美女、今まで生きてきて見たことないんだけどぉおおおおお~~詐欺じゃん!!
「夜会に出席するな」と言ったのにスワンはノコノコとやってきた。
ーーもう我慢がならない! こいつは俺の言うことを黙ってきいていればいいんだ。なのに逆らうとは、やはりこんな女は捨てるべきだな。
急にそう思い立った俺は、ここぞとばかりに婚約破棄をしてやろうと思う。俺のお気に入りの女も虐めていたのはわかっていた。
「スワン・キャラメルホイップ伯爵令嬢! 貴様の性根は腐りきっているな。その醜い嫉妬と妬みの心はこの国の王子の妃には相応しくない!」
俺は高らかに声をあげ、スワンの奴を糾弾する。
「嫉妬と妬み・・・・・・でございますか? このわたくしが誰にそのような感情を抱いているのでしょうか?」
ーーたかが伯爵令嬢のくせに公爵令嬢より高価なドレスを身にまとっているとは、なんて見栄っ張りの身の程知らずなんだ! ドレスだけは上等な生地と仕立てでも、あのうっとうしい前髪と汚れたような黒髪では台無しだがな。
「もちろんあたしですわ! スワン様はチャーリ王子殿下に大事にされているあたしに嫉妬し妬んでいるのです」
隣に寄り添う俺の愛しいピンクナが勇気を振り絞ってスワンを糾弾する。
――偉いぞ! ピンクナ。あとでたくさん褒めてやらないとな。
「そのようなことは、初めて知りました。あなたはチャーリー王子殿下から大事にされているのですか。良かったですね」
信じられないくらい拍子抜けする答えがスワンから返ってきたことで呆れかえる俺だ。
「誤魔化さないでくださいませ! スワン様はあたしを学園内の噴水に突き飛ばしたり、廊下ですれ違いざまに足をひっかけましたわよね?」
ーーなおも糾弾する手を緩めないピンクナよ。君は愛らしいうえに勇敢だ。
「そのようなことをした覚えはないのですけれど」
いつまでも往生際悪く否定する性悪女のスワンに俺はうんざりだ。
「証拠などなくてもいいのだ! ピンクナがされたと言えばそれが真実だ!」
「そうですか。それで、いったいチャーリー王子殿下はどうしたいのですか?」
ーーなんでこいつはこれほど偉そうなんだよっ?
「わかりきったことだ。婚約破棄だ! 俺様、チャーリー・ハームズワース王子はスワン・キャラメルホイップ伯爵令嬢に婚約破棄を言い渡す!」
「わかりました。では、失礼します」
冷静な口調でその場を去ろうとするスワンになおさら腹がたつ。
「ちょっと待て。そのまま帰れると思うな! レオ・エジャートン、ボトルごとワインをかけろ」
レオは騎士団長の次男で俺の取り巻きの一人だ。
スワンの足をひっかけたのは大司教の三男のジェイコブ・パーシーだ。スワンのドレスは見事な紫に染まり大理石の床に転んだその膝からは血がにじみでていた。
スワンはレースのハンカチで顔を拭うと、怪我をしたほうの足をかばいながら立ち上がった。
「痛いだろう? ずっと貴様に虐められてきたピンクナの心の痛みに比べればささやかな痛みであろうが、しかとその痛みを忘れるでないぞ! 貴様は王都から追放だ。学園からも退学させるし、二度と王宮に顔を見せるでないぞ!」
俺は自分の言葉に酔いしれながらも得意気にそう宣言してやった。
慌てて夜会のホールに小走りでやってきた父上と母上がワインまみれで怪我をしたスワンを見て叫んだ。
「こ、これは! なんとしたことだ? 誰の仕業ですか? ん? チャーリーお前の横にいる女はなんだ? なぜお前がスワン様の隣にいない?」
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父上から頬を張り飛ばされてホールの壁に吹っ飛んだ俺は意味がわからない。
「謝っていただかなくても結構ですわ。婚約破棄のお言葉! ありがたく頂戴いたしました!」
スワンがあのうっとうしい前髪を右手でかき上げると、ターコイズブルーとエメラルドグリーンが混ざり合った見たこともないような美しい瞳が現れたのだった。
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