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4 副騎士団長補佐ローガンを狙う妹(妹視点)

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(妹視点)


 私はこの国で一番可愛い! これはなんと言っても事実よ。蜂蜜色の髪は光沢があり、黄金の瞳は長いまつげに縁取られている。だからなにをしても許されるはず。

 お母様はいつも私に「可愛く生まれたフレイヤは、平凡な子より3倍は自分の思うように振る舞っていいのよ」と言う。だからドレスもリボンもなんだって、飽きたらお姉様にあげる。私が一番良い物をとって、飽きたらお姉様にあげればいい。

 ダニエル様を見た時はとても美しくて、童話の中の王子様のような容姿に惹かれた。でも頼りないし、どこか子供っぽさが抜けていないダニエル様に、ほんの少しだけ不満を感じる。
 けれど、あの綺麗な顔を見ていてればそれも許せる気がした。



 


★*☆*★*






 ある日のこと、ダニエル様とのデートに出かける際に忘れ物をした私は、とても興味深い話を聞いた。





「ジュリアもそろそろ相手を決めなければいけないなぁ。気になる男性はいるかい?」

「私はまだいいわよ。それにこのゴーサンス伯爵家を継ぐのだから、恋愛結婚は諦めているわ」

「おいおい、何を言うんだね? ジュリアは好きな男を婿にしていいんだよ。そうだ、ローガン・トンプソン副騎士団長補佐はどうだい? トンプソン侯爵家の三男でがっしりとした体躯のキリッとした男だよ」

「あぁ、とても女性に人気があるみたいね? 考えておくわ」

「ローガン様は、騎士団長にいずれなる方だと専らの評判だよ。よく考えてみなさい。」




 
 お姉様達のこのような会話を、立ち聞きできたのは幸いだった。ローガン・トンプソン騎士団副団長は、いずれ騎士団長になる将来有望な方らしい。おまけに、がっしりした体格のキリッとした男性だという。



 会ってみたいわ! 
 ダニエル様より優良物件じゃないの!
 お姉様に取られる前に唾つけちゃいますわ!




  ローガン様は週末の夕方には、ブラッスリーにいることが多いというのは調査済み。私はブラッスリーの前で、さりげなく人待ちのふりをする。

「ローガン! さぁ、今日はとことん飲もうぜ! 失恋なんて吹き飛ばせ!」

 ローガンと呼ばれる男性が、大きな声で友人にしきりに慰められながら、通りの向こう側から歩いて来た。



 この方がローガン様ね。
 確かにお父様がおっしゃったように、がっしりした体格のキリッとした男性だ。
 顔もダニエル様なんかよりワイルドで、大人の色気がムンムン。
 運命の男性はこの人よ! 間違いないわ。



「あのぉーー、私はフレイヤ・ゴーサンスと言います。伯爵家の次女で、あなたに一目惚れしました!」

「は? え? 伯爵家? えっと、なんで俺に?」

「だって、貴方は王立騎士団のローガン・トンプソン副団長補佐でしょう?」

「え? ・・・・・・えっと・・・・・・」

「あぁ、こいつはローガン・トンプソン副団長補佐だよ。ところで君、お酒は飲める? 一緒に飲もうよ」

 隣の男性がローガン様の代わりに答えてくれた。



 ローガン様ってシャイなのかしら?



「え? えっと甘いジュースなら飲めますけれど」
と、答える私。


「なら、決まり! さぁブラッスリーに入ろう」

 そうして、どんどんとジュースを勧められて気持ちよくなってきた。


 このジュース、美味しい! 
 身体がふわふわして、まるで雲の上に乗っているみたい!





★*☆*★*






「おはよう、大丈夫? 昨日のことを覚えている?」

 眩しくて頭が痛い。細く目を開けると、隣には裸のローガン様がいた。

「いいえ! なぜ私もローガン様も裸なの? それから今、何時?」

「朝だよ。ここは俺の家で、君はずっと俺に抱かれていたのさ」


 嘘! いくらなんでも婚約もしていないのに、いきなり一緒に朝チュンなんて・・・・・・
 とにかく、帰らなきゃ・・・・・・どうしよう・・・・・・
 親友のジェシカ・ウィローの屋敷に急いで行って、泊まったことにしてもらおう。
 ジェシカの両親は領地に戻っていて、今はいないはず。


「私、帰ります! これがバレないようになんとかしなくちゃ!」

「あ、待って。話があるんだよ」

「話はまた後で! 一刻を争いますわ。お父様に叱られないように、とにかくジェシカの屋敷に急ぐわ。ジェシカ・マロン子爵令嬢は親友ですの。そういえば、明後日に騎士団の模擬試合がありましたわね? 絶対に見に行きますから話はその時に!」

 私は引き止める彼を振り切りジェシカの屋敷に行き、口裏をあわせてもらった。お父様には「友人宅に泊まるのなら、前もって連絡しなさい」と、きつく叱られる。

 女友達の屋敷に泊まるのだって前もって許可を取るのが普通なのに、まさか男性といたなんて口が裂けても言えなかった。





★*☆*★*



 
 騎士団の模擬試合の当日。私は開催場所で彼らしき男性を探す。
 
「ローガン・トンプソン騎士副団長補佐は、どこにいらっしゃいますか?」

 「私だが、なんの用かな?」

 初めて会った鋭い眼光の男性に尋ねた私に、あり得ない答えが返ってきたのだった。
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