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14 今度は処刑されない-2
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「まぁ、大変! ビオラのグラスのワインを調べてくださいな! ブロッサムの小型ポーチが怪しいわ!」
――なんてベタな手口。どう考えても、あんたが私のポーチに何か仕込んだんでしょ?
イザベルの稚拙な罠に、思わず笑いが込み上げそうになるのを必死にこらえて、私は涙を滲ませた。
駆け寄ってきた父に向かって、私は潤んだ瞳を向けて訴える。
「お父様……イザベルお母様が、私がビオラのワインに毒を入れたと言い出したんです。きっと心のお疲れが出てしまったのではないかと……お気の毒ですわ。最近、なにか悲しいことでも?」
「ふむ。そういえば、可愛がっていた猫が死んだな。……そのせいかもしれん」
――父よ、ナイス! 確かにイザベルの猫は老衰で死んだっけ。私にはまったく懐いていなかったし、顔を見るたびにシャーと威嚇してくる、苦手な黒猫だった。
「違います! とにかく、ビオラが飲もうとしたグラスを調べてください! 変な匂いがするんです!」
そう叫ぶと、イザベルは私のポーチを乱暴に奪い取り、中から――あるはずのない香水瓶が現れた。しかも、グラスのワインと同じ香りだと騒ぎ立てる。
――あぁ、やっぱり過去は繰り返すのね。ひねりのない手口で、ご苦労様、イザベル。
「ふむ……匂いは似ておるが、私には判断がつかん」
父は前の人生と違って、すぐに私を犯人と決めつけることはしなかった。そこは素直に評価したい。でも、きっぱり否定してくれなかったのは、やっぱりちょっと根に持っておく。
「ブロッサム! 貴様との婚約は破棄だ! 腹違いの妹を毒殺しようとするとは、この毒婦め! 国外追放を命じる!」
リック王太子は、2回目の転生でも、やっぱり見る目がないままだった。……まぁ、でも国外追放なら、前よりマシか。
今の私なら、この国を出ていくくらい、なんてことはない。そう思って「かしこまりました」と口を開こうとした、その瞬間――
「おい、お前! 本気でブロッサムに婚約破棄したのか?」
遠くから、ルシアンが駆けてきた。
「え? は、はい……?」
――え? ルシアンが毒公爵なのは知ってたけど、王太子に“おい”って呼びかけて大丈夫なの!?
「ならば、私はブロッサムに結婚を申し込む。ブロッサム、私と結婚しよう」
「えっ!? ちょ、ちょっと待って、私が無実だってことを証明してくれればそれで充分なんだけど?」
「証明など不要だ。私の妻になれば、国外追放なんてされない。……そうだろう? リック王太子殿下。叔父である私の妻を国外追放にできるほど、お前は偉くなったのか?」
――え? まさか、ルシアンって、王家の血筋だったの!? そんなこと初耳なんだけどぉ?
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イザベルの稚拙な罠に、思わず笑いが込み上げそうになるのを必死にこらえて、私は涙を滲ませた。
駆け寄ってきた父に向かって、私は潤んだ瞳を向けて訴える。
「お父様……イザベルお母様が、私がビオラのワインに毒を入れたと言い出したんです。きっと心のお疲れが出てしまったのではないかと……お気の毒ですわ。最近、なにか悲しいことでも?」
「ふむ。そういえば、可愛がっていた猫が死んだな。……そのせいかもしれん」
――父よ、ナイス! 確かにイザベルの猫は老衰で死んだっけ。私にはまったく懐いていなかったし、顔を見るたびにシャーと威嚇してくる、苦手な黒猫だった。
「違います! とにかく、ビオラが飲もうとしたグラスを調べてください! 変な匂いがするんです!」
そう叫ぶと、イザベルは私のポーチを乱暴に奪い取り、中から――あるはずのない香水瓶が現れた。しかも、グラスのワインと同じ香りだと騒ぎ立てる。
――あぁ、やっぱり過去は繰り返すのね。ひねりのない手口で、ご苦労様、イザベル。
「ふむ……匂いは似ておるが、私には判断がつかん」
父は前の人生と違って、すぐに私を犯人と決めつけることはしなかった。そこは素直に評価したい。でも、きっぱり否定してくれなかったのは、やっぱりちょっと根に持っておく。
「ブロッサム! 貴様との婚約は破棄だ! 腹違いの妹を毒殺しようとするとは、この毒婦め! 国外追放を命じる!」
リック王太子は、2回目の転生でも、やっぱり見る目がないままだった。……まぁ、でも国外追放なら、前よりマシか。
今の私なら、この国を出ていくくらい、なんてことはない。そう思って「かしこまりました」と口を開こうとした、その瞬間――
「おい、お前! 本気でブロッサムに婚約破棄したのか?」
遠くから、ルシアンが駆けてきた。
「え? は、はい……?」
――え? ルシアンが毒公爵なのは知ってたけど、王太子に“おい”って呼びかけて大丈夫なの!?
「ならば、私はブロッサムに結婚を申し込む。ブロッサム、私と結婚しよう」
「えっ!? ちょ、ちょっと待って、私が無実だってことを証明してくれればそれで充分なんだけど?」
「証明など不要だ。私の妻になれば、国外追放なんてされない。……そうだろう? リック王太子殿下。叔父である私の妻を国外追放にできるほど、お前は偉くなったのか?」
――え? まさか、ルシアンって、王家の血筋だったの!? そんなこと初耳なんだけどぉ?
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