(完)私を捨てるですって? ウィンザー候爵家を立て直したのは私ですよ?

青空一夏

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7 最終話 私の再婚は鰻がキューピッド

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このチャムリー侯爵家の3人の男性は、父親のチャムリー侯爵から私を嫁に迎えた者が跡継ぎになると宣言されたそうだ。

なるほど私はチャムリー侯爵の爵位を得るのにどうしてもゲットしなければいけない付属品というわけだ。まぁ、急にモテるわけもないものねぇ。

私のように堅実でバイタリティーのある女が当主夫人になることによって公爵家も凌ぐほどの勢力が伸ばせると考えたあのオヤジは頭がいいとは思う。こちらも一生独り身でいる気もなかったからちょうど良いわ。ならば少しでも愛していける男性を見極めないとね。

私はデートの代わりに10日づつ一緒に厨房で働くことを提案してみたわ。私と一緒になるってことは鰻ちゃんとも仲良くしなければならない。もちろん、さばけるようになれ等と言うつもりはない。ただ、私の仕事を見て理解をしてほしかった。

まずは長男のヒューゴ様。この方はお洒落が好きなようで厨房にシルクのドレスシャツで現れた。
「そんな綺麗なお召し物で来られては困りますわ!」
注意をしても『大丈夫』と言い張って、案の定その服が汚れることを嫌って厨房の様子をただぼーっと見ているだけだった。

「うわぁ~。鰻ってこんなに変な生き物なんですね! 気持ち悪いなぁ~~」
顔をしかめて言うヒューゴ様は、明らかにハズレ男だ。私には到底あわないと判断したわ。



次は次男のローマン様。この方は普段着のシャツで来て、鰻をテキパキと客席に運んでくれた。社交的な性格のようでお客様との会話も弾む。しかし、若くて可愛い女性客に親しげに振る舞いすぎる。この方と結婚したら女性問題で苦しみそう。


三男のジュード様は汚れても目立たないプレスのきいたグレーのシャツに、黒い布をエプロンのように巻いてやって来た。しばらく厨房を眺めていたが、私に洗い物を手伝うと申し出て、せっせと食器洗いを始めたのだった。翌日には野菜を洗っていたし、その次の日には鰻のタレの作り方を私に聞き指示通りに作ることを覚えた。

店先を掃除したりテーブル拭きも率先してやるのには感心したし、なにより鰻をさばく私を見る瞳がキラキラしていた。
「すごいなぁ。僕もそんなふうにさばけるようになれますかね? でも数年はかかりそうだ。エリザベート様が鰻をさばいているあいだに僕のできることをするのが一番ですねよ。鰻をさばいている職人の顔、とても綺麗ですよ」

ズキューーン!! やられたわ・・・・・・鰻様との神聖な時間、つまりさばいている時は私が勝負をかけている時間なのよ!!

いざ出陣!!ってな時の大勝負に挑む私を綺麗だなんて・・・・・・なんて素敵! これこそミラクル! エクセレント! インプレッシブな褒め言葉に心を打ち抜かれた私。(チョロい)

そうして、私はこのジュード様を選んだわ。だって、彼は周りを良く見て状況判断ができるしTPOをとてもわきまえているのですもの。このような男性こそ侯爵に相応しい人物よ。

「ほぉ~~、三男を選びましたか? 長男の方が美男子ですし、次男の方が話がうまくどちらも女性には人気ですよ? 本当に三男で良いのですか?」
チャムリー侯爵は楽しげに私に質問した。

「もちろんですわ! 中身のない美し過ぎる顔は3日で飽きてしまいますし、話がうまくて女性に人気があるのは夫とするには不安しかありませんもの。堅実で状況判断ができて地に足ついたジュード様が跡継ぎには相応しいでしょうね。そして私の夫にもぴったりですわ」


☆彡★彡☆彡


「ほんとに私と結婚して後悔しない?」
私は侯爵様にジュード様を選んだと伝えた翌日に、ジュード様に尋ねてみたの。
「もちろんだよ。だって、鰻をさばくあなたがとってもかっこよく見えたからね! 爵位がほしいだけじゃなくて、エリザベート様の愛も欲しいんだ。鰻への愛を少し削って僕に回してほしいなぁ。鰻職人のあなただから好きになったんだよ」

なんてこと! 鰻は私の新しい夫も連れてきたってわけ!

鰻屋の娘で良かった! もちろん、後から開店したタコ焼き屋も大繁盛! チャムリー侯爵家はますます繁栄し私達の子供達も、もちろん鰻と蛸が大好きになった!(不妊症ではなかったのよね、私)

ウィンザー侯爵家? すっかり没落して今じゃぁボロボロの屋敷に住んでいるらしいわ。その屋敷もそろそろ手放すって聞いたし、若い奥さんは男を作って子供をおいて出て行ったらしい。



ほらね? これは、鰻屋の一人娘の転生者を舐めんなよ! ってお話でした。😤
さぁ、今夜の夕食は鰻で決まりよね?




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