[完結]愛する人たちに裏切られた私は……

青空一夏

文字の大きさ
20 / 46

20 オズワルドの因果応報-4

しおりを挟む
 ※ここは、異世界恋愛ファンタジーの世界観なので、それっぽく書いてみました。


 •───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•

 路地裏に逃げ込んだ瞬間、背後から強く腕をねじ上げられた。

 「よう、ルーベルト公爵様。やっと見つけたぜ」

 声は低く怒気を含んでいた。感情のこもらない目が、こちらを見下ろしている。
 私は、もがこうとしたが、痩せ細った身体ではまともに抵抗もできない。
 
 闇金の取立て屋たちだ。

 「ちょっとばかし“踏み倒した分”が多すぎてな。俺らもただじゃ済まされねぇんでね。あんたを売ることにしたわけよ」

 「売る……だと……?」
 喉がひゅっと鳴る。まさか、と思ったが、男の目に冗談の色はなかった。

 縄で縛られ、袋をかぶせられたまま、私は馬車に押し込まれた。
 マリーも捕まって、同じように別の馬車に押し込まれる。

  どこに連れて行かれるのかも知らされないまま、暗闇の中で馬車は揺れ続けた。
 目隠しをされ、手足を縛られたまま、ただ音と揺れに身を任せる時間。
  まるで――棺にでも閉じ込められたような感覚だった。

 どれほど時間が経ったのか、袋を外された時、目の前にあったのは、見上げるほど大きな船だった。
 「乗れ」と背中を押され、そのまま荷物室の一角へ押し込まれる。
 薄暗く、風通しも悪い場所だった。わずかな食糧と水だけが与えられ、私は三日間、そこに閉じ込められていた。
 

 到着した場所は、意外にも美しかった。

  草原がどこまでも広がり、空は高く澄んでいる。
 頬を撫でる風は穏やかで、まるで旅先の風景のように美しかった。

 だが、その静けさを打ち破るように、二人の男女が姿を現す。
 どちらも一目でただ者ではないとわかる雰囲気をまとっていた。
 その無言の圧に、私は思わず背筋を伸ばしていた。

 「ここはグラナ=ヴィリーデス。未開地。……って言っても、おまえらは観光に来たんじゃねぇよ」
 そう言ったのは、逞しい体格の男。顔の左側に大きな焼痕があり、片眼は白濁していた。
 「お前らはこれから、地祓い隊ちばらいたいとして働く。子供たちの命を救う尊い仕事だ」

 ――冗談だろう?

 「地雷だ。古式のやつが、この辺一帯に埋まってる。戦時中にぶちまけられた魔道地雷だな」

 
 説明を始めたのは、ローブをまとった魔導士だった。若い女だが、その声は感情の起伏がなく、冷たさを帯びていた。
 「魔導士にしか扱えないと思わなくていいわ。非魔導士でも検知魔道具を使えば、除去できるからね」
 彼女が見せたのは、レンズ付きの手のひらサイズの箱型装置だ。
 「この視晶板で地表をスキャンすれば、地雷の輪郭が浮かぶ。反応が出たら、震針棒で魔導地雷のコアを突いて解除しなさい」
 一拍の間を置いて、女は淡々と付け加えた。
 「失敗すれば、吹き飛ぶ。身体ごと、ね」

 背後で、誰かが唾を飲み込む音がした。
 私と同じように、無理やりここへ連れてこられた連中だ。
 聞けば、借金まみれの者や、罪を犯して捕まった連中ばかりらしい。
 作業は想像を絶するほどに神経を使った。

 レンズを通して見える地雷の“影”をなぞるように歩き、反応を確認し、慎重に地中を掘る。
 うまく除去できれば、報酬は乾パン数枚と水。寝床は床に敷いた藁一束。

 それでも、地元の子供たちは時折、笑顔で「ありがとう」と声をかけてくる。
 それが救いになる、と口にする者もいたが、私はそうは思わなかった。

 ――他人の子供に礼を言われたところで、自分の命を賭ける価値なんて、あるわけがない。


 ある朝、名も知らぬ男が作業中に爆音とともに吹き飛んだ。
 これで、今週だけで3人目だった。

 けれど、誰も騒がない。もう慣れきった日常の一部だ。
 誰かが死んでも、皆、黙って作業に戻っていく。

 「この地で暮らす子供たちに、せめて野原を思いきり駆け回れる自由を与えてやりたい」

 そう言ったのは、あの女魔道士だった。

 「人の子なんて知るか。なんでそんな子どもたちのために、私が命を張らなきゃならない?」

 そう悪態をついた私を、女魔道士はじっと見つめた。

 「その性格、ちょうどいいわ。ここにぴったり。うっかり優しい人だとね、見てる側の胸が痛むのよ。死と隣り合わせの仕事だもの」



 ◆◇◆


 それから、どれだけの日が経ったのか。もう、今日が何日なのかさえわからない。

 「おじさんたち、いつもありがとうー!」

 泥だらけの子供たちが、手を振ってくる。感謝の気持ちなのだろう。
 だが、私だけは手を振り返さなかった。

 そんな気になれるはずがない。

 かつては贅を尽くした屋敷で暮らし、人々に頭を下げさせて生きてきた身だ。
 この手には、青い血が流れていた――はずだった。

 今はどうだ。爪の間には土が入り込み、肌はひび割れて荒れ放題。
 精神的な疲れからか、髪も抜け落ち、鏡を見るのも嫌になった。

 夜。藁の上に横たわり、目を閉じる。
 決まって見るのは、魔道地雷を踏み、自分の身体が吹き飛ぶ夢だった。

 そして、ぼんやりと思う。

 ――明日も、生き延びられるだろうか。

 ここは、まぎれもなく地獄だ。
 私は、死ぬまで魔導地雷を撤去し続けるのだから。


•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•

※オズワルドの末路、妥当だと思った方は❤押してくださると助かります。
 今後のざまぁの参考にさせていただきますので、どうぞよろしくお願いします(*ᴗ ᴗ)⁾⁾ペコリ
 
※こちらでオズワルドの因果応報はお終いです。次はマリーです。本日、夜に更新予定です。と、思いましたが、ルーファスのことを気にかけている方が多いので、夜にルーファス視点入れます。
しおりを挟む
感想 158

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

あなたの破滅のはじまり

nanahi
恋愛
家同士の契約で結婚した私。夫は男爵令嬢を愛人にし、私の事は放ったらかし。でも我慢も今日まで。あなたとの婚姻契約は今日で終わるのですから。 え?離縁をやめる?今更何を慌てているのです?契約条件に目を通していなかったんですか? あなたを待っているのは破滅ですよ。 ※Ep.2 追加しました。 マルグリッタの魔女の血を色濃く受け継ぐ娘ヴィヴィアン。そんなヴィヴィアンの元に隣の大陸の王ジェハスより婚姻の話が舞い込む。 子爵の五男アレクに淡い恋心を抱くも、行き違いから失恋したと思い込んでいるヴィヴィアン。アレクのことが忘れられずにいたヴィヴィアンは婚姻話を断るつもりだったが、王命により強制的に婚姻させられてしまう。 だが、ジェハス王はゴールダー家の巨万の富が目的だった。王妃として迎えられたヴィヴィアンだったが、お飾りの王妃として扱われて冷遇される。しかも、ジェハスには側妃がすでに5人もいた。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

あなたの絶望のカウントダウン

nanahi
恋愛
親同士の密約によりローラン王国の王太子に嫁いだクラウディア。 王太子は密約の内容を知らされないまま、妃のクラウディアを冷遇する。 しかも男爵令嬢ダイアナをそばに置き、面倒な公務はいつもクラウディアに押しつけていた。 ついにダイアナにそそのかされた王太子は、ある日クラウディアに離縁を突きつける。 「本当にいいのですね?」 クラウディアは暗い目で王太子に告げる。 「これからあなたの絶望のカウントダウンが始まりますわ」

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

処理中です...