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20 オズワルドの因果応報-4
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※ここは、異世界恋愛ファンタジーの世界観なので、それっぽく書いてみました。
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
路地裏に逃げ込んだ瞬間、背後から強く腕をねじ上げられた。
「よう、ルーベルト元公爵様。やっと見つけたぜ」
声は低く怒気を含んでいた。感情のこもらない目が、こちらを見下ろしている。
私は、もがこうとしたが、痩せ細った身体ではまともに抵抗もできない。
闇金の取立て屋たちだ。
「ちょっとばかし“踏み倒した分”が多すぎてな。俺らもただじゃ済まされねぇんでね。あんたを売ることにしたわけよ」
「売る……だと……?」
喉がひゅっと鳴る。まさか、と思ったが、男の目に冗談の色はなかった。
縄で縛られ、袋をかぶせられたまま、私は馬車に押し込まれた。
マリーも捕まって、同じように別の馬車に押し込まれる。
どこに連れて行かれるのかも知らされないまま、暗闇の中で馬車は揺れ続けた。
目隠しをされ、手足を縛られたまま、ただ音と揺れに身を任せる時間。
まるで――棺にでも閉じ込められたような感覚だった。
どれほど時間が経ったのか、袋を外された時、目の前にあったのは、見上げるほど大きな船だった。
「乗れ」と背中を押され、そのまま荷物室の一角へ押し込まれる。
薄暗く、風通しも悪い場所だった。わずかな食糧と水だけが与えられ、私は三日間、そこに閉じ込められていた。
到着した場所は、意外にも美しかった。
草原がどこまでも広がり、空は高く澄んでいる。
頬を撫でる風は穏やかで、まるで旅先の風景のように美しかった。
だが、その静けさを打ち破るように、二人の男女が姿を現す。
どちらも一目でただ者ではないとわかる雰囲気をまとっていた。
その無言の圧に、私は思わず背筋を伸ばしていた。
「ここはグラナ=ヴィリーデス。未開地。……って言っても、おまえらは観光に来たんじゃねぇよ」
そう言ったのは、逞しい体格の男。顔の左側に大きな焼痕があり、片眼は白濁していた。
「お前らはこれから、地祓い隊として働く。子供たちの命を救う尊い仕事だ」
――冗談だろう?
「地雷だ。古式のやつが、この辺一帯に埋まってる。戦時中にぶちまけられた魔道地雷だな」
説明を始めたのは、ローブをまとった魔導士だった。若い女だが、その声は感情の起伏がなく、冷たさを帯びていた。
「魔導士にしか扱えないと思わなくていいわ。非魔導士でも検知魔道具を使えば、除去できるからね」
彼女が見せたのは、レンズ付きの手のひらサイズの箱型装置だ。
「この視晶板で地表をスキャンすれば、地雷の輪郭が浮かぶ。反応が出たら、震針棒で魔導地雷のコアを突いて解除しなさい」
一拍の間を置いて、女は淡々と付け加えた。
「失敗すれば、吹き飛ぶ。身体ごと、ね」
背後で、誰かが唾を飲み込む音がした。
私と同じように、無理やりここへ連れてこられた連中だ。
聞けば、借金まみれの者や、罪を犯して捕まった連中ばかりらしい。
作業は想像を絶するほどに神経を使った。
レンズを通して見える地雷の“影”をなぞるように歩き、反応を確認し、慎重に地中を掘る。
うまく除去できれば、報酬は乾パン数枚と水。寝床は床に敷いた藁一束。
それでも、地元の子供たちは時折、笑顔で「ありがとう」と声をかけてくる。
それが救いになる、と口にする者もいたが、私はそうは思わなかった。
――他人の子供に礼を言われたところで、自分の命を賭ける価値なんて、あるわけがない。
ある朝、名も知らぬ男が作業中に爆音とともに吹き飛んだ。
これで、今週だけで3人目だった。
けれど、誰も騒がない。もう慣れきった日常の一部だ。
誰かが死んでも、皆、黙って作業に戻っていく。
「この地で暮らす子供たちに、せめて野原を思いきり駆け回れる自由を与えてやりたい」
そう言ったのは、あの女魔道士だった。
「人の子なんて知るか。なんでそんな子どもたちのために、私が命を張らなきゃならない?」
そう悪態をついた私を、女魔道士はじっと見つめた。
「その性格、ちょうどいいわ。ここにぴったり。うっかり優しい人だとね、見てる側の胸が痛むのよ。死と隣り合わせの仕事だもの」
◆◇◆
それから、どれだけの日が経ったのか。もう、今日が何日なのかさえわからない。
「おじさんたち、いつもありがとうー!」
泥だらけの子供たちが、手を振ってくる。感謝の気持ちなのだろう。
だが、私だけは手を振り返さなかった。
そんな気になれるはずがない。
かつては贅を尽くした屋敷で暮らし、人々に頭を下げさせて生きてきた身だ。
この手には、青い血が流れていた――はずだった。
今はどうだ。爪の間には土が入り込み、肌はひび割れて荒れ放題。
精神的な疲れからか、髪も抜け落ち、鏡を見るのも嫌になった。
夜。藁の上に横たわり、目を閉じる。
決まって見るのは、魔道地雷を踏み、自分の身体が吹き飛ぶ夢だった。
そして、ぼんやりと思う。
――明日も、生き延びられるだろうか。
ここは、まぎれもなく地獄だ。
私は、死ぬまで魔導地雷を撤去し続けるのだから。
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
※オズワルドの末路、妥当だと思った方は❤押してくださると助かります。
今後のざまぁの参考にさせていただきますので、どうぞよろしくお願いします(*ᴗ ᴗ)⁾⁾ペコリ
※こちらでオズワルドの因果応報はお終いです。次はマリーです。本日、夜に更新予定です。と、思いましたが、ルーファスのことを気にかけている方が多いので、夜にルーファス視点入れます。
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路地裏に逃げ込んだ瞬間、背後から強く腕をねじ上げられた。
「よう、ルーベルト元公爵様。やっと見つけたぜ」
声は低く怒気を含んでいた。感情のこもらない目が、こちらを見下ろしている。
私は、もがこうとしたが、痩せ細った身体ではまともに抵抗もできない。
闇金の取立て屋たちだ。
「ちょっとばかし“踏み倒した分”が多すぎてな。俺らもただじゃ済まされねぇんでね。あんたを売ることにしたわけよ」
「売る……だと……?」
喉がひゅっと鳴る。まさか、と思ったが、男の目に冗談の色はなかった。
縄で縛られ、袋をかぶせられたまま、私は馬車に押し込まれた。
マリーも捕まって、同じように別の馬車に押し込まれる。
どこに連れて行かれるのかも知らされないまま、暗闇の中で馬車は揺れ続けた。
目隠しをされ、手足を縛られたまま、ただ音と揺れに身を任せる時間。
まるで――棺にでも閉じ込められたような感覚だった。
どれほど時間が経ったのか、袋を外された時、目の前にあったのは、見上げるほど大きな船だった。
「乗れ」と背中を押され、そのまま荷物室の一角へ押し込まれる。
薄暗く、風通しも悪い場所だった。わずかな食糧と水だけが与えられ、私は三日間、そこに閉じ込められていた。
到着した場所は、意外にも美しかった。
草原がどこまでも広がり、空は高く澄んでいる。
頬を撫でる風は穏やかで、まるで旅先の風景のように美しかった。
だが、その静けさを打ち破るように、二人の男女が姿を現す。
どちらも一目でただ者ではないとわかる雰囲気をまとっていた。
その無言の圧に、私は思わず背筋を伸ばしていた。
「ここはグラナ=ヴィリーデス。未開地。……って言っても、おまえらは観光に来たんじゃねぇよ」
そう言ったのは、逞しい体格の男。顔の左側に大きな焼痕があり、片眼は白濁していた。
「お前らはこれから、地祓い隊として働く。子供たちの命を救う尊い仕事だ」
――冗談だろう?
「地雷だ。古式のやつが、この辺一帯に埋まってる。戦時中にぶちまけられた魔道地雷だな」
説明を始めたのは、ローブをまとった魔導士だった。若い女だが、その声は感情の起伏がなく、冷たさを帯びていた。
「魔導士にしか扱えないと思わなくていいわ。非魔導士でも検知魔道具を使えば、除去できるからね」
彼女が見せたのは、レンズ付きの手のひらサイズの箱型装置だ。
「この視晶板で地表をスキャンすれば、地雷の輪郭が浮かぶ。反応が出たら、震針棒で魔導地雷のコアを突いて解除しなさい」
一拍の間を置いて、女は淡々と付け加えた。
「失敗すれば、吹き飛ぶ。身体ごと、ね」
背後で、誰かが唾を飲み込む音がした。
私と同じように、無理やりここへ連れてこられた連中だ。
聞けば、借金まみれの者や、罪を犯して捕まった連中ばかりらしい。
作業は想像を絶するほどに神経を使った。
レンズを通して見える地雷の“影”をなぞるように歩き、反応を確認し、慎重に地中を掘る。
うまく除去できれば、報酬は乾パン数枚と水。寝床は床に敷いた藁一束。
それでも、地元の子供たちは時折、笑顔で「ありがとう」と声をかけてくる。
それが救いになる、と口にする者もいたが、私はそうは思わなかった。
――他人の子供に礼を言われたところで、自分の命を賭ける価値なんて、あるわけがない。
ある朝、名も知らぬ男が作業中に爆音とともに吹き飛んだ。
これで、今週だけで3人目だった。
けれど、誰も騒がない。もう慣れきった日常の一部だ。
誰かが死んでも、皆、黙って作業に戻っていく。
「この地で暮らす子供たちに、せめて野原を思いきり駆け回れる自由を与えてやりたい」
そう言ったのは、あの女魔道士だった。
「人の子なんて知るか。なんでそんな子どもたちのために、私が命を張らなきゃならない?」
そう悪態をついた私を、女魔道士はじっと見つめた。
「その性格、ちょうどいいわ。ここにぴったり。うっかり優しい人だとね、見てる側の胸が痛むのよ。死と隣り合わせの仕事だもの」
◆◇◆
それから、どれだけの日が経ったのか。もう、今日が何日なのかさえわからない。
「おじさんたち、いつもありがとうー!」
泥だらけの子供たちが、手を振ってくる。感謝の気持ちなのだろう。
だが、私だけは手を振り返さなかった。
そんな気になれるはずがない。
かつては贅を尽くした屋敷で暮らし、人々に頭を下げさせて生きてきた身だ。
この手には、青い血が流れていた――はずだった。
今はどうだ。爪の間には土が入り込み、肌はひび割れて荒れ放題。
精神的な疲れからか、髪も抜け落ち、鏡を見るのも嫌になった。
夜。藁の上に横たわり、目を閉じる。
決まって見るのは、魔道地雷を踏み、自分の身体が吹き飛ぶ夢だった。
そして、ぼんやりと思う。
――明日も、生き延びられるだろうか。
ここは、まぎれもなく地獄だ。
私は、死ぬまで魔導地雷を撤去し続けるのだから。
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