2 / 6
2
しおりを挟む
「バカな子ね。今ならまだ間に合うのに……」
バーバラの言葉にアデラインは爆笑する。
「ばっかみたい! これが魅了の魔法ならもっと、もっと使うべき力だわよ。なんでも思いのままじゃない?」
高笑いを浮かべたアデラインにバーバラは哀れむような視線を向けた。
その視線がアデラインにとってはとても鬱陶しい。
(お姉様も、もう少し静かにしてくれればいいのに……そうだわ……私が王太子妃になればお姉様の悔しがる顔が見られて、きっとあのお節介なお説教もなくなるわ)
アデラインは姉バーバラの婚約者レオン王太子に近づき……目の前で倒れて見せる。レオン王太子は慌ててアデラインに寄り添い、お姫様抱っこで優しく囁いた。
「大丈夫? そんなに頻繁に倒れるのはただの病気ではなく心臓の病なのかな? 隣国ではジギタリスが強心剤として有効だと聞いているよ。最近疲れやすかったりおかしな咳が出るかい?」
「えぇ、最近とても疲れます……私、それで困っていたのです……お姉様は私を仮病扱いして虐めるし……レオン様相談に乗っていただけますか?」
「もちろんだよ。なんでも相談に乗るからいつでも僕を頼っておくれ」
そのような言葉をもらったアデラインは毎日のように潤んだ瞳をレオンに向けて、体調の異変を訴え続けた。
「最近お散歩をするだけで疲れてしまいますの。息切れが酷くてはぁはぁしてしまったり、おかしな咳まででてしまって……そうするとお姉様はわざと私にいろいろ用事を言いつけるのですわ。侍女のようにこき使って……」
「それならきっとジギタリスの煎じ薬が効くと思うよ。隣国から手に入らないか手配してみるから待っていて。そのままにしておくと命の危険もあるから急がせるね…… それからバーバラのことは許せないなぁ。懲らしめてあげるから大丈夫だよ」
アデラインの両親もそれを信じバーバラを責め、アデラインの病気の回復だけを願うようになった。アデラインはレオン王太子と密会を重ね、両親に涙ながらに訴える。
「私がレオン殿下の婚約者になりたいです! お姉様は王太子妃に相応しくありませんわ……」
両親とレオンにいかに姉バーバラに虐められていたかを力説、そのような話を簡単に信じ込むことに笑いがとまらない。
そうして王家主催の舞踏会の日、バーバラに一方的に告げられた婚約破棄の宣言。
「バーバラ・ヒューストン公爵令嬢! レオン・ミカスキーは君との婚約破棄を宣言する。病におかされた妹アデラインを虐待してきた罪は重い。君は人でなしだよ! 病弱な妹を虐めるなど人としてあるまじき行為だ! 死刑に処すから覚悟しておけ!」
その横で途中まで得意気に微笑んだアデラインが最後の言葉に驚愕の叫びをあげた。
「え! なぜ死刑なのです? それは重すぎですわ! 謹慎ぐらいでいいですからっ!」
アデラインは心の底からバーバラを庇う。確かにアデラインは姉が嫌いだけれど、死んで欲しいほどではない。お説教をしなくなって少しだけ謙虚におとなしくなってほしい、そんなくらいにしか考えていなかったのだ。
(嘘よ! こんなことぐらいで死刑になんてなるわけないわ……どうしたらいい?)
バーバラの言葉にアデラインは爆笑する。
「ばっかみたい! これが魅了の魔法ならもっと、もっと使うべき力だわよ。なんでも思いのままじゃない?」
高笑いを浮かべたアデラインにバーバラは哀れむような視線を向けた。
その視線がアデラインにとってはとても鬱陶しい。
(お姉様も、もう少し静かにしてくれればいいのに……そうだわ……私が王太子妃になればお姉様の悔しがる顔が見られて、きっとあのお節介なお説教もなくなるわ)
アデラインは姉バーバラの婚約者レオン王太子に近づき……目の前で倒れて見せる。レオン王太子は慌ててアデラインに寄り添い、お姫様抱っこで優しく囁いた。
「大丈夫? そんなに頻繁に倒れるのはただの病気ではなく心臓の病なのかな? 隣国ではジギタリスが強心剤として有効だと聞いているよ。最近疲れやすかったりおかしな咳が出るかい?」
「えぇ、最近とても疲れます……私、それで困っていたのです……お姉様は私を仮病扱いして虐めるし……レオン様相談に乗っていただけますか?」
「もちろんだよ。なんでも相談に乗るからいつでも僕を頼っておくれ」
そのような言葉をもらったアデラインは毎日のように潤んだ瞳をレオンに向けて、体調の異変を訴え続けた。
「最近お散歩をするだけで疲れてしまいますの。息切れが酷くてはぁはぁしてしまったり、おかしな咳まででてしまって……そうするとお姉様はわざと私にいろいろ用事を言いつけるのですわ。侍女のようにこき使って……」
「それならきっとジギタリスの煎じ薬が効くと思うよ。隣国から手に入らないか手配してみるから待っていて。そのままにしておくと命の危険もあるから急がせるね…… それからバーバラのことは許せないなぁ。懲らしめてあげるから大丈夫だよ」
アデラインの両親もそれを信じバーバラを責め、アデラインの病気の回復だけを願うようになった。アデラインはレオン王太子と密会を重ね、両親に涙ながらに訴える。
「私がレオン殿下の婚約者になりたいです! お姉様は王太子妃に相応しくありませんわ……」
両親とレオンにいかに姉バーバラに虐められていたかを力説、そのような話を簡単に信じ込むことに笑いがとまらない。
そうして王家主催の舞踏会の日、バーバラに一方的に告げられた婚約破棄の宣言。
「バーバラ・ヒューストン公爵令嬢! レオン・ミカスキーは君との婚約破棄を宣言する。病におかされた妹アデラインを虐待してきた罪は重い。君は人でなしだよ! 病弱な妹を虐めるなど人としてあるまじき行為だ! 死刑に処すから覚悟しておけ!」
その横で途中まで得意気に微笑んだアデラインが最後の言葉に驚愕の叫びをあげた。
「え! なぜ死刑なのです? それは重すぎですわ! 謹慎ぐらいでいいですからっ!」
アデラインは心の底からバーバラを庇う。確かにアデラインは姉が嫌いだけれど、死んで欲しいほどではない。お説教をしなくなって少しだけ謙虚におとなしくなってほしい、そんなくらいにしか考えていなかったのだ。
(嘘よ! こんなことぐらいで死刑になんてなるわけないわ……どうしたらいい?)
0
お気に入りに追加
951
あなたにおすすめの小説
お城で愛玩動物を飼う方法
月白ヤトヒコ
恋愛
婚約を解消してほしい、ですか?
まあ! まあ! ああ、いえ、驚いただけですわ。申し訳ありません。理由をお伺いしても宜しいでしょうか?
まあ! 愛する方が? いえいえ、とても素晴らしいことだと思いますわ。
それで、わたくしへ婚約解消ですのね。
ええ。宜しいですわ。わたくしは。
ですが……少しだけ、わたくしの雑談に付き合ってくださると嬉しく思いますわ。
いいえ? 説得などするつもりはなど、ございませんわ。……もう、無駄なことですので。
では、そうですね。殿下は、『ペット』を飼ったことがお有りでしょうか?
『生き物を飼う』のですから。『命を預かる』のですよ? 適当なことは、赦されません。
設定はふわっと。
※読む人に拠っては胸くそ。
お望み通りに婚約破棄したのに嫌がらせを受けるので、ちょっと行動を起こしてみた。
夢草 蝶
恋愛
婚約破棄をしたのに、元婚約者の浮気相手から嫌がらせを受けている。
流石に疲れてきたある日。
靴箱に入っていた呼び出し状を私は──。
無実の罪で聖女を追放した、王太子と国民のその後
柚木ゆず
恋愛
※6月30日本編完結いたしました。7月1日より番外編を投稿させていただきます。
聖女の祈りによって1000年以上豊作が続き、豊穣の国と呼ばれているザネラスエアル。そんなザネラスエアルは突如不作に襲われ、王太子グスターヴや国民たちは現聖女ビアンカが祈りを怠けたせいだと憤慨します。
ビアンカは否定したものの訴えが聞き入れられることはなく、聖女の資格剥奪と国外への追放が決定。彼女はまるで見世物のように大勢の前で連行され、国民から沢山の暴言と石をぶつけられながら、隣国に追放されてしまいました。
そうしてその後ザネラスエアルでは新たな聖女が誕生し、グスターヴや国民たちは『これで豊作が戻ってくる!』と喜んでいました。
ですが、これからやって来るのはそういったものではなく――
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
身勝手な婚約破棄をされたのですが、第一王子殿下がキレて下さいました
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢であるエリーゼは、第ニ王子殿下であるジスタードに婚約破棄を言い渡された。
理由はジスタードが所帯をを持ちたくなく、まだまだ遊んでいたいからというものだ。
あまりに身勝手な婚約破棄だったが、エリーゼは身分の差から逆らうことは出来なかった。
逆らえないのはエリーゼの家系である、ラクドアリン伯爵家も同じであった。
しかし、エリーゼの交友関係の中で唯一の頼れる存在が居た。
それは兄のように慕っていた第一王子のアリューゼだ。
アリューゼの逆鱗に触れたジスタードは、それはもう大変な目に遭うのだった……。
これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。
りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。
伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。
それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。
でも知りませんよ。
私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!
冤罪により婚約破棄されて国外追放された王女は、隣国の王子に結婚を申し込まれました。
香取鞠里
恋愛
「マーガレット、お前は恥だ。この城から、いやこの王国から出ていけ!」
姉の吹き込んだ嘘により、婚約パーティーの日に婚約破棄と勘当、国外追放を受けたマーガレット。
「では、こうしましょう。マーガレット、きみを僕のものにしよう」
けれど、追放された先で隣国の王子に拾われて!?
パーティー中に婚約破棄された私ですが、実は国王陛下の娘だったようです〜理不尽に婚約破棄した伯爵令息に陛下の雷が落ちました〜
雪島 由
恋愛
生まれた時から家族も帰る場所もお金も何もかもがない環境で生まれたセラは幸運なことにメイドを務めていた伯爵家の息子と婚約を交わしていた。
だが、貴族が集まるパーティーで高らかに宣言されたのは婚約破棄。
平民ごときでは釣り合わないらしい。
笑い者にされ、生まれた環境を馬鹿にされたセラが言い返そうとした時。パーティー会場に聞こえた声は国王陛下のもの。
何故かその声からは怒りが溢れて出ていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる