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5 (ミシェル視点)
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聖女とたたえられる私は王太子妃になった。私は、あの美しいサミュエルをけおとして、いずれ王妃になれるのだわ!
歩けないふりはもうやめてもいいわよね?
本当は最初から、たいした怪我ではなかった。でも、歩けない振りをしたらジャスパー様が手に入るとお父様に言われてえんぎをしていたのだ。
あのキラキラ光るテープも、私が取ったものだった。だって、とてもきれいだったから。あれが、立ち入り禁止区域を囲っていたなんて知らなかった。もしかして、聞かされていたのかもしれないけれど、私は人の話はあまり聞かないくせがあった。
王太子妃になったし、ライバルのサミュエルは第2王子と田舎に引っ込んだ。やっと、おおっぴらに歩けるわ!
そう思ったらうれしくて、つい自室でステップを踏んでいた。
「ミシェル? ・・・・・・足は?」
いつのまにか部屋に入ってきていたジャスパー様はおどろきの顔をなさっていた。
「え? あぁ・・・・・・これね、実はちょっと前から歩けたのよ。うふふ」
「うふふって・・・・・・サミュエルを社交界から追放するように仕向けておいて、実は車椅子生活はうそでしたぁ。ーーなんて、公になったら・・・・・・今度は私達に非難が集まるじゃないか!」
ジャスパー様は、私にどなった。喜んでくれると思っていたのに、嫌悪感いっぱいの眼差しを向けられた。
「ミシェル! だめだよ! 立ったら、だめだ!」
なぜ、そんなに怒られるのかわからない。
「あら? どうして? 歩けるのですもの、いいでしょう?」
「だめだったら! いまさら、歩けるなんてばれたら、なにを言われるか・・・・・・。さぁ、車椅子に戻って」
私は、しぶしぶ車椅子に戻った。
そこを、うわさ好きの侍女にしっかり見られて私はあわてた。
「あ、これは奇跡なのよ。今、突然動けるようになったのよ?」
私は、ごまかしたが、そこには無理があったようだ。
「えぇ、わかっていますとも」
侍女はそう言いながら、片手を差し出した。
「口止め料をください!」
*:゚+。.☆.
私が誰も見ていないと思い歩いている姿は、他の侍女にも見られていた。それが続くと、やはり外にも、そのうわさは流れた。
「なぜ、がまんができないんだ! ばれないようにしろといっただろう?」
「だって、本当は歩けるのですもの。今までは、実家の屋敷で好き勝手に、ずっと歩いていたのに、いきなり嫁いで王宮暮らしになったら歩けないなんて、あんまりだわ!」
私は、余計なことを言ってしまったようだ。
「ずっと? あなたは、かなり前から、歩けていたようだね? サミュエルが、言っていたことが正しかったんだな」
「え? 誤解ですわ。歩けるようになったのは、つい、最近ですわ」
私は、あわてて、言い訳を始めたけれどジャスパー様はもう私のことなど見てはいなかった。
「こうなったら、正式に発表した方がいいだろうな」
ジャスパー様が、苦々しい顔でおっしゃった。
ある夜会で、
「実は、ミシェルに奇跡が起こり歩けるようになったんだ!」
ジャスパー様が、そう発表したが、誰も拍手する者はいなかった。
「「「いまさら、そんなことは誰でも知っていますのにねぇーー。いつから歩けたのか時期が問題ですわ」」」
「「「実は、初めから歩けたという話もありましてよ? あの美しいサミュエル様をおとしめようとうそをついていたとか・・・・・・」
「「「まぁーー。なにが、聖女よ! とんだうそつきですわね? あんな方が王太子妃様だなんて」」」
私は、すっかり社交界から白い目で見られるようになった。あのグレプ伯爵令嬢は、あんなに私と仲が良かったはずなのに、今は、先頭きって悪口をいうのだった。
ジャスパー様は王に即位すると、すっかり評判が落ちた私には見向きもしなくなり、まもなくサミュエルによく似た側妃を迎えた。
その女は、意地が悪く、いつもかくれて私に嫌がらせをしてくるのだった。
「ジャスパー様、あの側妃はひどい女です! いつも、私に嫌がらせをします!」
そう訴えても、ジャスパー様はあざ笑って言うのだった。
「もう、ミシェルにはだまされないよ。私はサミュエルが大好きだったのに、あなたのうそを信じてこんなことになった。また、同じ手は通用しないからね」
冷たい目には、にくしみの色さえ浮かべていた。
ある日、私は、雨上がりの庭園をゆううつな気分でさんぽをしていた。うっかり庭園の湿った階段で足をすべらせた私は今度こそ本当に歩けなくなった。
けれど、ジャスパー様も周りの貴族達も、こう言うのだった。
「また、歩けないふりを始めたのかい? もう、私はだまされないよ?」
「「「また王妃様の悪いくせがはじまったわね? 歩けるくせに」」」
歩けないふりはもうやめてもいいわよね?
本当は最初から、たいした怪我ではなかった。でも、歩けない振りをしたらジャスパー様が手に入るとお父様に言われてえんぎをしていたのだ。
あのキラキラ光るテープも、私が取ったものだった。だって、とてもきれいだったから。あれが、立ち入り禁止区域を囲っていたなんて知らなかった。もしかして、聞かされていたのかもしれないけれど、私は人の話はあまり聞かないくせがあった。
王太子妃になったし、ライバルのサミュエルは第2王子と田舎に引っ込んだ。やっと、おおっぴらに歩けるわ!
そう思ったらうれしくて、つい自室でステップを踏んでいた。
「ミシェル? ・・・・・・足は?」
いつのまにか部屋に入ってきていたジャスパー様はおどろきの顔をなさっていた。
「え? あぁ・・・・・・これね、実はちょっと前から歩けたのよ。うふふ」
「うふふって・・・・・・サミュエルを社交界から追放するように仕向けておいて、実は車椅子生活はうそでしたぁ。ーーなんて、公になったら・・・・・・今度は私達に非難が集まるじゃないか!」
ジャスパー様は、私にどなった。喜んでくれると思っていたのに、嫌悪感いっぱいの眼差しを向けられた。
「ミシェル! だめだよ! 立ったら、だめだ!」
なぜ、そんなに怒られるのかわからない。
「あら? どうして? 歩けるのですもの、いいでしょう?」
「だめだったら! いまさら、歩けるなんてばれたら、なにを言われるか・・・・・・。さぁ、車椅子に戻って」
私は、しぶしぶ車椅子に戻った。
そこを、うわさ好きの侍女にしっかり見られて私はあわてた。
「あ、これは奇跡なのよ。今、突然動けるようになったのよ?」
私は、ごまかしたが、そこには無理があったようだ。
「えぇ、わかっていますとも」
侍女はそう言いながら、片手を差し出した。
「口止め料をください!」
*:゚+。.☆.
私が誰も見ていないと思い歩いている姿は、他の侍女にも見られていた。それが続くと、やはり外にも、そのうわさは流れた。
「なぜ、がまんができないんだ! ばれないようにしろといっただろう?」
「だって、本当は歩けるのですもの。今までは、実家の屋敷で好き勝手に、ずっと歩いていたのに、いきなり嫁いで王宮暮らしになったら歩けないなんて、あんまりだわ!」
私は、余計なことを言ってしまったようだ。
「ずっと? あなたは、かなり前から、歩けていたようだね? サミュエルが、言っていたことが正しかったんだな」
「え? 誤解ですわ。歩けるようになったのは、つい、最近ですわ」
私は、あわてて、言い訳を始めたけれどジャスパー様はもう私のことなど見てはいなかった。
「こうなったら、正式に発表した方がいいだろうな」
ジャスパー様が、苦々しい顔でおっしゃった。
ある夜会で、
「実は、ミシェルに奇跡が起こり歩けるようになったんだ!」
ジャスパー様が、そう発表したが、誰も拍手する者はいなかった。
「「「いまさら、そんなことは誰でも知っていますのにねぇーー。いつから歩けたのか時期が問題ですわ」」」
「「「実は、初めから歩けたという話もありましてよ? あの美しいサミュエル様をおとしめようとうそをついていたとか・・・・・・」
「「「まぁーー。なにが、聖女よ! とんだうそつきですわね? あんな方が王太子妃様だなんて」」」
私は、すっかり社交界から白い目で見られるようになった。あのグレプ伯爵令嬢は、あんなに私と仲が良かったはずなのに、今は、先頭きって悪口をいうのだった。
ジャスパー様は王に即位すると、すっかり評判が落ちた私には見向きもしなくなり、まもなくサミュエルによく似た側妃を迎えた。
その女は、意地が悪く、いつもかくれて私に嫌がらせをしてくるのだった。
「ジャスパー様、あの側妃はひどい女です! いつも、私に嫌がらせをします!」
そう訴えても、ジャスパー様はあざ笑って言うのだった。
「もう、ミシェルにはだまされないよ。私はサミュエルが大好きだったのに、あなたのうそを信じてこんなことになった。また、同じ手は通用しないからね」
冷たい目には、にくしみの色さえ浮かべていた。
ある日、私は、雨上がりの庭園をゆううつな気分でさんぽをしていた。うっかり庭園の湿った階段で足をすべらせた私は今度こそ本当に歩けなくなった。
けれど、ジャスパー様も周りの貴族達も、こう言うのだった。
「また、歩けないふりを始めたのかい? もう、私はだまされないよ?」
「「「また王妃様の悪いくせがはじまったわね? 歩けるくせに」」」
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