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3 (サミュエル視点)

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王様と王妃様が、病気がちになり、田舎に静養に向かうと、ジャスパー様とミシェル様が社交界の中心になりました。

時が経ち、私もそろそろ結婚適齢期けっこんてきれいきを迎えておりました。その前に婚約というものがありますが、私には婚約者がいないのです。

いつのまにか、私だけが、ミシェル様を鬼ごっこに誘ってわざと穴に落とすように仕向けたことになっていたからです。なぜ、そのようなうわさになったのでしょうか。夜会でも舞踏会でも白い目で見られました。そんな私を許して、優しく接するミシェル様は聖女様だと称えられました。

「「「ちょっと、サミュエル様よ。よく、あんなことをしておいておおやけの場に出てこれるわね?」」」

「「「ほんとよね? 美しい顔だけれど、よく見れば冷たくて意地悪そうよね? 王太子様の婚約者になりたくて、わざとつきとばしたって話もあるわよ? ひどい悪女よね?」」」
私だって、このようなところには出席したくはないのです。けれど、ミシェル様に付き添いをお願い、と呼ばれてしまうのです。

「ねぇ。サミュエル様。お願いだから、この前お貸ししたバッグを返していただけないかしら?」

 大勢の高位貴族がいるなかで、ミシェル様がことのほか、大きな声でおっしゃいました。

「なんのバッグでしょうか?」

 私は、首を傾げました。バッグなど、借りたことは一度もないのです。

「あら、この間、貸してさしあげたバッグよ。まぁ、いいわ。そんなに気に入ったのなら、さしあげるわ 」

私が何を言っても、そのような言葉をかぶせられて、ますます私の評判が落ちていくのです。

「サミュエル! あなたは、ミシェルのバッグまで、ねこばばしようとしていたのかい? あきれた人だね」

 ジャスパー様が私に冷たい声でおっしゃいます。彼はもう昔の彼ではありませんでした。

いつも、この二人に夜会や舞踏会の付き添いで呼び出され公衆の面前で、おとしめられて、私はもうどうしたらいいのかわからないのです。

第二王子様のクリス様だけが、私に優しく話しかけてくださるのでした。この方は絵のお勉強で隣国に留学なさっていて最近、帰国したばかりです。


*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚


「クリス様、そのような悪女とお話ししていると評判が落ちますわよ。こちらにいらっしゃったほうがいいです」

私を、いつもおとしめるグループのリーダー格のグレプ伯爵令嬢がクリス様を誘うのでした。

「誰が悪女なんだい? サミュエルは少しも悪女とは思わないな。それよりも、こんな大勢の前でわざわざバッグの話を持ち出す女性のほうが、よほど意地が悪いでしょう?」

クリス様はミシェル様の方をまっすぐ見つめておっしゃったのでした。

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