(完結)悪女と聖女様

青空一夏

文字の大きさ
上 下
1 / 5

1 (サミュエル視点)

しおりを挟む
 私(サミュエル・レオンジ公爵令嬢・当時7歳)と、王太子のジャスパー様(当時7歳)は、幼い頃から両思いで、婚約するはずでした。

「大人になったら、僕の妃になってほしいな」

「うん、喜んで、なるわ」
 こんな会話を、会う度にしていました。

 ある日、いつものように王妃様のお茶会に呼ばれたのです。3人で楽しくおしゃべりをした後に、王宮の庭園をジャスパー様と散歩をしていました。

私達が笑って、おしゃべりをしながら歩いていると、呼ばれていないはずのミシェル様が庭園にぽつんと立っていらっしゃいました。

私達を見ると、ミシェル様は不機嫌ふきげんになり『なんで、いつも私を仲間はずれにするの?』とお聞きになります。
こちらは、全く仲間はずれにしているつもりはないのでした。

その気まずさをなごませようと、ジャスパー様が鬼ごっこでもしようと提案なさいました。
私達は、笑いながら鬼ごっこをしました。まだ、皆、幼かったのです。

けれど、その最中さなか、ミシェル様は大きな穴に落ちました。こんなところに穴があるはずはないのです。王妃様も侍女達も来て、大騒ぎになりました。

「あら? ここの一画は、赤いキラキラ光るリボンで囲ってあったはずですよ。木や花を植え替えるために穴が掘られていて危ないから目印になるようにしていたのに。なぜ、ないのかしら?」

王妃様は、不思議そうに首を傾げましたが、ミシェル様が大怪我おおけがを負ったことで王家はとても責められました。

「王家の管理がなっていないから、このようなことになるのです!しかも、鬼ごっこを誘ったのは王太子でしょう? ミシェルは、足を大怪我して歩けなくなったのですよ? どう責任を取るおつもりですか? 娘の嫁ぎ先がなくなってしまった」

ミシェル様のお父様は王様のすぐ下の弟で、私のお父様も王様の2番目の弟です。口が達者で高圧的な方なので、人のいいおっとりした性格の王様も王妃様も何も反論はできなかったそうです。

そのひと月後に、ジャスパー様はミシェル様と婚約したのでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】処刑された王太子妃はなぜか王太子と出会う前に戻っていた

hikari
恋愛
マドレーヌは無実の罪を着せられ、処刑された。王太子は浮気をしていたのだ。 そして、目が覚めると王太子と出会う前に戻っていた……。 王太子と出会ったのはある日の舞踏会。その日からマドレーヌは他の男性と踊る事を決める。 舞踏会にはたまたま隣国のジェーム王子もいた。 そして、隣国の王子ジェームスはマドレーヌに惹かれていく……。 ※ざまぁの回には★印があります。 令和4年4月9日19時22分完結

【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く

とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。 まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。 しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。 なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう! そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。 しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。 すると彼に 「こんな遺書じゃダメだね」 「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」 と思いっきりダメ出しをされてしまった。 それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。 「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」 これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。 そんなお話。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

ざまぁを回避したい王子は婚約者を溺愛しています

宇水涼麻
恋愛
春の学生食堂で、可愛らしい女の子とその取り巻きたちは、一つのテーブルに向かった。 そこには、ファリアリス公爵令嬢がいた。 「ファリアリス様、ディック様との婚約を破棄してください!」 いきなりの横暴な要求に、ファリアリスは訝しみながらも、淑女として、可憐に凛々しく対応していく。

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

人生の全てを捨てた王太子妃

八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。 傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。 だけど本当は・・・ 受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。 ※※※幸せな話とは言い難いです※※※ タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。 ※本編六話+番外編六話の全十二話。 ※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

【完結】どうぞお気遣いなく。婚約破棄はこちらから致しますので。婚約者の従姉妹がポンコツすぎて泣けてきます

との
恋愛
「一体何があったのかしら」  あったかって? ええ、ありましたとも。 婚約者のギルバートは従姉妹のサンドラと大の仲良し。 サンドラは乙女ゲームのヒロインとして、悪役令嬢の私にせっせと罪を着せようと日夜努力を重ねてる。 (えーっ、あれが噂の階段落ち?) (マジか・・超期待してたのに) 想像以上のポンコツぶりに、なんだか気分が盛り下がってきそうですわ。 最後のお楽しみは、卒業パーティーの断罪&婚約破棄。 思いっきりやらせて頂きます。 ーーーーーー

屋敷のバルコニーから突き落とされて死んだはずの私、実は生きていました。犯人は伯爵。人生のドン底に突き落として社会的に抹殺します。

夜桜
恋愛
【正式タイトル】  屋敷のバルコニーから突き落とされて死んだはずの私、実は生きていました。犯人は伯爵。人生のドン底に突き落として社会的に抹殺します。  ~婚約破棄ですか? 構いません!  田舎令嬢は後に憧れの公爵様に拾われ、幸せに生きるようです~

処理中です...