(完結)妹に虐げられた私は・・・・・・

青空一夏

文字の大きさ
上 下
7 / 11

5 女狐の尻尾を掴んでやる(アレキサンダー視点)

しおりを挟む
(アレキサンダー視点)



「アレキサンダー、よう無事に戻ってきたな! 余は嬉しいぞ! ところでなぁ、ジョセフ(ローラの父親)にはある疑いがかかっておる。これはコスタ伯爵家からも意見があったのだが、ローズ・スエソン伯爵夫人の死に不審な点がある。健康だった夫人が病に伏してからあまりに早い死。おかしな点が多数あるが、証拠がないので罰することができぬ。だが当主から退けさせることはできる。王命によりこの瞬間から爵位を上げて、スエンソン侯爵家の当主はアレキサンダーだとする。後日、正式に陞爵式は行う」

「ありがたき幸せ!・・・・・・母上をあの父上が・・・・・・なんとしても証拠は手に入れます」
  
 私は国王陛下に思いがけぬ話をされて、陞爵の喜びよりも怒りが湧き上がっていた。







 屋敷に着き執務室にずかずかと歩を進めながら、使用人達の顔ぶれを見れば、皆見たこともない新しい者ばかりだ。執事でさえも変わっており、ローラは痩せ細り傍らにはふてぶてしい女が二人。
 かつての父上はすっかり太り、怠慢さがにじみ出ていた。この男は本当にかつて私が父と呼んだ男なのか? あまりにも変わリ果てた姿だった。


 母上が亡くなったことも、この女達が誰なのかも知っていたが、わざととぼけて父上を質問攻めにする。この女達の表情は醜悪で性格の悪さが滲みでている。
 ローラのすり切れたドレスや痛々しいほど痩せた身体を、思わず抱きしめたい衝動にかられたが、今はその時ではない。全てのことが済んだなら、ローラにプロポーズをするつもりだ。


 ローラと私は血が繋がっていないのだ。ここに養子に来たのは私が5歳、ローラがまだ生まれてまもなくの頃だった。母上(ローズのこと)は、ローラを産んだ時、大変な難産だったと聞いている。

 二度目の出産は命取りだと宣告され、モーガン侯爵家の三男の私が養子に迎えられた。モーガン侯爵家はコスタ伯爵家の縁戚。コスタ伯爵家はあらゆる事業を多角経営する大金持ちで母上の実家でもある。傾きかけていたスエソン伯爵家を援助したのはコスタ伯爵家だ。つまり、スエンソン家はローズ母上の持参金で立て直したようなものなのだ。

 

 専属侍女だったマーガレットが母上の宝石を付け、私がローラにプレゼントした宝石をマーガレットの娘マリアが身につけていた。

 怒りがこみ上げて怒鳴り散らしたい思いを飲み込む。母上の仇を討たなければ! こいつらの尻尾を掴むために、このマリアの言葉に不本意にも乗ることにした。

 ローラにはもとの部屋に戻させ、温かい食事と快適な環境に戻してやった。

(ローラ! ちょっとだけ我慢しておくれ! このマリアという女を手名付けて真相を吐かせてやる!)




 ある夜、マリアに迫られて抱きしめるふりをして、自白作用のある香りを鼻元でかがせた。

「・・・・・・あっははは! うふふふ。私がこれからスエソン侯爵夫人になるのよ。お母様の作戦は大成功よ」

「ふーーん、作戦かい? きっと素敵な作戦だよね?」

「ええ! ローズ様の食事にね、お母様が毎日毒を混ぜたのよ。それからあのお父様にもね、お母様が媚薬を飲ませ続けて・・・・・・ほとんどお母様の言いなりになっておもしろかったわ・・・・・・あっははは! お母様は言ったわ。私達はこんなに美しく生まれたのだから高位貴族の夫人になるべきなんだって。侍女なんて似合わないのよ」

「そうか、ありがとう。今のを聞いたな?」
 王家の影が闇の中から答えた。

「はい、はっきりと。陛下にお伝えします」

「頼む。極刑にしてほしい!」

 低く笑う声とともに男達の声は消えた。

 そして・・・・・・ローラの姿も消えてしまった。

(どこに行ったんだ? なぜ、この屋敷を出て行ったんだ?)

しおりを挟む
感想 58

あなたにおすすめの小説

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。 追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。 優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。 誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、 リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。 全てを知り、死を考えた彼女であったが、 とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。 後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

エメラインの結婚紋

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢エメラインと侯爵ブッチャーの婚儀にて結婚紋が光った。この国では結婚をすると重婚などを防ぐために結婚紋が刻まれるのだ。それが婚儀で光るということは重婚の証だと人々は騒ぐ。ブッチャーに夫は誰だと問われたエメラインは「夫は三十分後に来る」と言う。さら問い詰められて結婚の経緯を語るエメラインだったが、手を上げられそうになる。その時、駆けつけたのは一団を率いたこの国の第一王子ライオネスだった――

あらまあ夫人の優しい復讐

藍田ひびき
恋愛
温厚で心優しい女性と評判のカタリナ・ハイムゼート男爵令嬢。彼女はいつもにこやかに微笑み、口癖は「あらまあ」である。 そんなカタリナは結婚したその夜に、夫マリウスから「君を愛する事は無い。俺にはアメリアという愛する女性がいるんだ」と告げられる。 一方的に結ばされた契約結婚は二年間。いつも通り「あらまあ」と口にしながらも、カタリナには思惑があるようで――? ※ なろうにも投稿しています。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

貴方に私は相応しくない【完結】

迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。 彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。 天使のような無邪気な笑みで愛を語り。 彼は私の心を踏みにじる。 私は貴方の都合の良い子にはなれません。 私は貴方に相応しい女にはなれません。

【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後

綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、 「真実の愛に目覚めた」 と衝撃の告白をされる。 王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。 婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。 一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。 文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。 そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。 周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?

不実なあなたに感謝を

黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。 ※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。 ※曖昧設定。 ※一旦完結。 ※性描写は匂わせ程度。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。

処理中です...