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3 お兄様が当主になる!
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(お兄様が生きていた! 嘘みたい・・・・・・嬉しい)
私は顔を輝かせお父様に微笑みかけたけれど、お父様はにこりともしないで青ざめていらっしゃった。
(嬉しくないのかしら? お兄様が無事だったのに・・・・・・)
「ローラ! お前のドレスはずいぶんくたびれている。早く着替えてきなさい。マーガレット! ローラにちゃんとしたドレスを着せるんだ! 早く!」
お父様は慌ててマーガレットを呼びつけ、私を着替えさせようとする。
「はぁ? なんでですか? このローラはまだ当分、メイドのままで働かせればいいでしょう?」
マーガレットはお父様の命令には納得できずに、不満げに口をとがらせた。
「ばかもん! そんなことで揉めている暇はない・・・・・・早く・・・・・・」
お父様がひたすら焦っている様子が不思議だった。
「旦那様。アレキサンダー様がこちらにお着きです。お早いお着きでびっくりしました」
それから本当にお兄様が、この執務室に入っていらっしゃった。私は駆け寄って抱きつきたかったが、自分の匂いが気になってできない。入浴を毎日させてもらっていない私は、きっと汗くさい。
ミリー達の着ているメイド服の方がよほどマシに見えて・・・・・・私のすり切れたドレスが恥ずかしかった。
「どうしたんだい? そのみすぼらしいドレスは? しかもなんでこんなに痩せているんだい?」
お兄様はすぐに私に気がつき、心配そうに顔を寄せた。
私は答えることができずに黙ってしまう。
「父上、ただいま、戻りました。ローラはなぜこんなに痩せていて、すり切れたドレスを着ているのですか? ところでその女性達は誰ですか? 母上はどうされたのですか?」
「あ? えぇっと、続いていくつも質問されても一度には答えられんよ。まずローラーのことだが、困った娘でね。偏食でろくに食べようとしないから痩せているのだ。それから気に入らないドレスは捨ててしまうから、いつも同じドレスだ。・・・・・・ローズは病で亡くなった」
「え? あの健康そのものだった母上がですか? それはおかしいな。それにローラは好き嫌いのない子だったはずですがね。で、その女性達は?」
「えぇと、そのワシは再婚してなぁ。これはマーガレット・スエンソン伯爵夫人だ」
「マーガレット? もしかして母上の専属侍女だった?」
「えぇ、そうです。私をお母様と呼んでいただいてよろしいのですよ」
マーガレットはお兄様に艶やかに微笑みかける。
「は? 私の母上はローズ・スエンソンただ一人でいい。とても私を慈しんで育ててくれたからね」
お兄様はマーガレットを一瞥すると、苦笑しながらその申し出を一蹴した。
「アレキサンダー! 当主夫人に失礼だぞ! ワシがこの家の当主なのだから、夫人のマーガレットにも敬意を払え!」
「あぁ、父上。あなたはもう当主ではありません。王命です。私がこの瞬間からこの家督を継ぎます。勲章を新たに頂いたのと、スエンソン伯爵家は侯爵家に爵位があがります。父上には引退していただきましょう」
「何を言う。ワシはまだまだ元気だ! 引退など断じてしない」
「これは王命だ! 田舎にでも引っ込んで余生をお過ごしになれば良い。そのマーガレットとともに」
お兄様が冷たい口調でお父様に言い放ったところ、マリアの間延びした声が被さってきた。
「アレキサンダー様がこの家の当主様になるのですか? しかも侯爵に爵位があがるのですね? 素敵! 」
「君は誰だ? おや? なぜ私がローラにプレゼントしたネックレスをつけているんだい?」
お兄様は戸惑ったように私を見つめる。
「アレキサンダー様。この娘は私の娘マリアです。なかなかの器量よしでしょう? そのネックレスはローラ様が飽きてしまい、娘にくださったものですわ。そう言えば、アレキサンダー様は婚約者がおりませんでしたわね? このマリアなど、いかがでしょう?」
マーガレットは、媚びるようにお兄様を上目使いに見て、猫撫で声を出した。
私は顔を輝かせお父様に微笑みかけたけれど、お父様はにこりともしないで青ざめていらっしゃった。
(嬉しくないのかしら? お兄様が無事だったのに・・・・・・)
「ローラ! お前のドレスはずいぶんくたびれている。早く着替えてきなさい。マーガレット! ローラにちゃんとしたドレスを着せるんだ! 早く!」
お父様は慌ててマーガレットを呼びつけ、私を着替えさせようとする。
「はぁ? なんでですか? このローラはまだ当分、メイドのままで働かせればいいでしょう?」
マーガレットはお父様の命令には納得できずに、不満げに口をとがらせた。
「ばかもん! そんなことで揉めている暇はない・・・・・・早く・・・・・・」
お父様がひたすら焦っている様子が不思議だった。
「旦那様。アレキサンダー様がこちらにお着きです。お早いお着きでびっくりしました」
それから本当にお兄様が、この執務室に入っていらっしゃった。私は駆け寄って抱きつきたかったが、自分の匂いが気になってできない。入浴を毎日させてもらっていない私は、きっと汗くさい。
ミリー達の着ているメイド服の方がよほどマシに見えて・・・・・・私のすり切れたドレスが恥ずかしかった。
「どうしたんだい? そのみすぼらしいドレスは? しかもなんでこんなに痩せているんだい?」
お兄様はすぐに私に気がつき、心配そうに顔を寄せた。
私は答えることができずに黙ってしまう。
「父上、ただいま、戻りました。ローラはなぜこんなに痩せていて、すり切れたドレスを着ているのですか? ところでその女性達は誰ですか? 母上はどうされたのですか?」
「あ? えぇっと、続いていくつも質問されても一度には答えられんよ。まずローラーのことだが、困った娘でね。偏食でろくに食べようとしないから痩せているのだ。それから気に入らないドレスは捨ててしまうから、いつも同じドレスだ。・・・・・・ローズは病で亡くなった」
「え? あの健康そのものだった母上がですか? それはおかしいな。それにローラは好き嫌いのない子だったはずですがね。で、その女性達は?」
「えぇと、そのワシは再婚してなぁ。これはマーガレット・スエンソン伯爵夫人だ」
「マーガレット? もしかして母上の専属侍女だった?」
「えぇ、そうです。私をお母様と呼んでいただいてよろしいのですよ」
マーガレットはお兄様に艶やかに微笑みかける。
「は? 私の母上はローズ・スエンソンただ一人でいい。とても私を慈しんで育ててくれたからね」
お兄様はマーガレットを一瞥すると、苦笑しながらその申し出を一蹴した。
「アレキサンダー! 当主夫人に失礼だぞ! ワシがこの家の当主なのだから、夫人のマーガレットにも敬意を払え!」
「あぁ、父上。あなたはもう当主ではありません。王命です。私がこの瞬間からこの家督を継ぎます。勲章を新たに頂いたのと、スエンソン伯爵家は侯爵家に爵位があがります。父上には引退していただきましょう」
「何を言う。ワシはまだまだ元気だ! 引退など断じてしない」
「これは王命だ! 田舎にでも引っ込んで余生をお過ごしになれば良い。そのマーガレットとともに」
お兄様が冷たい口調でお父様に言い放ったところ、マリアの間延びした声が被さってきた。
「アレキサンダー様がこの家の当主様になるのですか? しかも侯爵に爵位があがるのですね? 素敵! 」
「君は誰だ? おや? なぜ私がローラにプレゼントしたネックレスをつけているんだい?」
お兄様は戸惑ったように私を見つめる。
「アレキサンダー様。この娘は私の娘マリアです。なかなかの器量よしでしょう? そのネックレスはローラ様が飽きてしまい、娘にくださったものですわ。そう言えば、アレキサンダー様は婚約者がおりませんでしたわね? このマリアなど、いかがでしょう?」
マーガレットは、媚びるようにお兄様を上目使いに見て、猫撫で声を出した。
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