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19 それぞれの末路
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▹◃┄▸◂┄▹◃オクタビア視点┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
私達は塔に閉じ込められた。塔のなかは清潔で家具も揃っていたから、生活には不便はなかった。食事も豪華ではないが、三食与えられ本も差し入れられた。
快適とも言える空間でただひとつ恐ろしいのは、小さいコップに入った薄いピンクの液体を朝に渡されることだ。誰が飲むかで私達3人はお互いを睨み付ける。
「お父様が全部飲むのが当然です。だって、オマリ伯爵家の人に毒を飲ませたのはお父様ですよね?」
ヴァネッサは私の前にそのコップを置いた。
「はぁ? 可愛いお前の為にそれをしたのだぞ!」
「私、お父様にそんなことを頼んだ覚えはありません! 私は飲む必要はないでしょう? 親なら子供のために飲むのが義務です」
「ちょっと、待て! その当然説には納得はできない」
「うるさい! 貴方がこれを飲むのに決まっているでしょう? 私だって贅沢はしたかったけど、殺人をしろなんてオクタビアにお願いしたことはないでしょう? 貴方が勝手にやったことじゃないの!」
毒の押しつけあいで、毎日が怒鳴りあいケンカばかりしている。
「ちょっと、あたしの分の毒が多すぎるじゃないよ? オクタビアが飲みなさいよ!」
「はぁ? 冗談じゃない! お前がもっと飲めばいいだろう?」
私は散々に小細工をして毒を妻に全部飲ませることに成功したが……どういうわけか……弱っていくのは私の方だ。
ある日、国王陛下がやって来て、
「やはり、このような結果になったか……お前は自分しか可愛くない非情な男だからな。あの液体は毒ではない。解毒剤だ。お前とお前の妻にだけ毒をすでに料理に混ぜていたのだ。あのピンクの液体はそれを中和して無毒にする薬だ。だから、『夫婦で分け合って飲むがいい』と忠告したであろう?」
そんなぁ……ばかな……私は胸が激しく痛んで……もがき苦しみ息絶えたのだった。
▹◃┄▸◂┄▹◃イヴェット視点┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
あのピンクの液体が解毒剤で私は助かることができた。どうやらオクタビアは飲むふりをして、私の食事にふりかけていたようだ。だが、私もヴァネッサもこの塔から出してもらうことはできなかった。
暇だから、毎日言い合いをしてケンカばかりしている。外に一歩も出られないことにストレスを感じて娘に怒鳴れば、同じく娘も怒鳴り返してくるのだ。
イライラと日々を過ごしているうちに、妙な気持ちに支配されてきた。私の不幸はオクタビアのせいだ。こうなったのも、この娘が生まれてオクタビアと一緒にいたせいなのだ。ということは……この娘は私の不幸の元凶なんじゃないかしら?
それからというもの娘が憎らしくてたまらなくなり争いを繰り返し、
「お母様のせいで、私がこんなところに閉じ込められる羽目になったのよ! あんなクズなお父様と一緒にいたバカなお母様が悪いのよ! このくそばばぁ!」
と、罵られた。
これには私も大いに怒り狂い、気がつけば娘の頭を壁に何度も叩きつけていた。娘はぐったりして息もしていない? 慌てて看守を呼び、ヴァネッサは治療のために連れていかれたが、息を吹き返すことはなかったようだ。
「あんたの娘は天国に行ったよ」
その言葉に私は大きな声で笑い転げた。娘が亡くなったことがバカみたいに嬉しい……
もう、私は安全だ……だれも、私を害せない……
「あっはははぁ~。うふふふぅ~。ひ~っひっひっひっっ~~」
「あぁ、娘を自分で殺してしまったと思い込み狂ってしまったようだな……ちょっとした冗談だったのに……」
看守のつぶやく声が私の耳に聞こえてきたが、おかしくてたまらない私にはもうどうでもよかった。
▹◃┄▸◂┄▹◃ヴァネッサ視点┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
お母様に激しく壁に頭を打ち付けられて、気を失った私は手当を施されて修道院に行かされた。
「いくら邪悪な夫婦達の子供とは言え、一回は情けをかけることにした。産まれ落ちてからあのような者を親として見てきたのだ。不憫と言えば不憫。修道院で5年間勤勉に励んだら、市井に戻り自由に生きて良い」
国王陛下の温情と言われたが、これのどこが温情なの? 私にはなんの罪もないはずなのに……
修道院では毎日が退屈な作業の繰り返しで、塔にいた頃より食事も粗末だった。
「世界中の人達の幸せの為に祈りましょう」
そう言われて朝早くから起こされ、働くこととお祈りだけをさせられる。農作業は自給自足の為だし、刺繍や編み物などの手仕事もさせられる。手芸作品や工芸品は売られてこの修道院の運営資金にもなるらしい。
この規則正しい生活に私は、飽き飽きしていた。なぜ、毎日他人のために祈らなければならないの?
修道院に出入りしている職人の男に目を付けて私はその男に脱走を持ちかけた。
「えぇ? こんな居心地のいい修道院にいるのに、なぜ外に出たいのさ?」
「だって、ここは刺激がなくてつまんない! もっと、楽しいことをたくさんできるところに行きたいのよ」
「はぁーーん。刺激的で楽しいところねぇ? いいよ、連れて行ってあげるよ」
夜中にこっそり抜け出して、その男に連れていかれた場所は……特殊な……娼館だった。
「ほら? ここなら刺激的でいつも楽しく過ごせるよ? あぁ、お礼はいいよ。君をここに連れてくれば、オーナーからお金がもらえるから大丈夫。俺は金がもらえてあんたは楽しい時間が過ごせるって、最高だよね?」
私達は塔に閉じ込められた。塔のなかは清潔で家具も揃っていたから、生活には不便はなかった。食事も豪華ではないが、三食与えられ本も差し入れられた。
快適とも言える空間でただひとつ恐ろしいのは、小さいコップに入った薄いピンクの液体を朝に渡されることだ。誰が飲むかで私達3人はお互いを睨み付ける。
「お父様が全部飲むのが当然です。だって、オマリ伯爵家の人に毒を飲ませたのはお父様ですよね?」
ヴァネッサは私の前にそのコップを置いた。
「はぁ? 可愛いお前の為にそれをしたのだぞ!」
「私、お父様にそんなことを頼んだ覚えはありません! 私は飲む必要はないでしょう? 親なら子供のために飲むのが義務です」
「ちょっと、待て! その当然説には納得はできない」
「うるさい! 貴方がこれを飲むのに決まっているでしょう? 私だって贅沢はしたかったけど、殺人をしろなんてオクタビアにお願いしたことはないでしょう? 貴方が勝手にやったことじゃないの!」
毒の押しつけあいで、毎日が怒鳴りあいケンカばかりしている。
「ちょっと、あたしの分の毒が多すぎるじゃないよ? オクタビアが飲みなさいよ!」
「はぁ? 冗談じゃない! お前がもっと飲めばいいだろう?」
私は散々に小細工をして毒を妻に全部飲ませることに成功したが……どういうわけか……弱っていくのは私の方だ。
ある日、国王陛下がやって来て、
「やはり、このような結果になったか……お前は自分しか可愛くない非情な男だからな。あの液体は毒ではない。解毒剤だ。お前とお前の妻にだけ毒をすでに料理に混ぜていたのだ。あのピンクの液体はそれを中和して無毒にする薬だ。だから、『夫婦で分け合って飲むがいい』と忠告したであろう?」
そんなぁ……ばかな……私は胸が激しく痛んで……もがき苦しみ息絶えたのだった。
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あのピンクの液体が解毒剤で私は助かることができた。どうやらオクタビアは飲むふりをして、私の食事にふりかけていたようだ。だが、私もヴァネッサもこの塔から出してもらうことはできなかった。
暇だから、毎日言い合いをしてケンカばかりしている。外に一歩も出られないことにストレスを感じて娘に怒鳴れば、同じく娘も怒鳴り返してくるのだ。
イライラと日々を過ごしているうちに、妙な気持ちに支配されてきた。私の不幸はオクタビアのせいだ。こうなったのも、この娘が生まれてオクタビアと一緒にいたせいなのだ。ということは……この娘は私の不幸の元凶なんじゃないかしら?
それからというもの娘が憎らしくてたまらなくなり争いを繰り返し、
「お母様のせいで、私がこんなところに閉じ込められる羽目になったのよ! あんなクズなお父様と一緒にいたバカなお母様が悪いのよ! このくそばばぁ!」
と、罵られた。
これには私も大いに怒り狂い、気がつけば娘の頭を壁に何度も叩きつけていた。娘はぐったりして息もしていない? 慌てて看守を呼び、ヴァネッサは治療のために連れていかれたが、息を吹き返すことはなかったようだ。
「あんたの娘は天国に行ったよ」
その言葉に私は大きな声で笑い転げた。娘が亡くなったことがバカみたいに嬉しい……
もう、私は安全だ……だれも、私を害せない……
「あっはははぁ~。うふふふぅ~。ひ~っひっひっひっっ~~」
「あぁ、娘を自分で殺してしまったと思い込み狂ってしまったようだな……ちょっとした冗談だったのに……」
看守のつぶやく声が私の耳に聞こえてきたが、おかしくてたまらない私にはもうどうでもよかった。
▹◃┄▸◂┄▹◃ヴァネッサ視点┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
お母様に激しく壁に頭を打ち付けられて、気を失った私は手当を施されて修道院に行かされた。
「いくら邪悪な夫婦達の子供とは言え、一回は情けをかけることにした。産まれ落ちてからあのような者を親として見てきたのだ。不憫と言えば不憫。修道院で5年間勤勉に励んだら、市井に戻り自由に生きて良い」
国王陛下の温情と言われたが、これのどこが温情なの? 私にはなんの罪もないはずなのに……
修道院では毎日が退屈な作業の繰り返しで、塔にいた頃より食事も粗末だった。
「世界中の人達の幸せの為に祈りましょう」
そう言われて朝早くから起こされ、働くこととお祈りだけをさせられる。農作業は自給自足の為だし、刺繍や編み物などの手仕事もさせられる。手芸作品や工芸品は売られてこの修道院の運営資金にもなるらしい。
この規則正しい生活に私は、飽き飽きしていた。なぜ、毎日他人のために祈らなければならないの?
修道院に出入りしている職人の男に目を付けて私はその男に脱走を持ちかけた。
「えぇ? こんな居心地のいい修道院にいるのに、なぜ外に出たいのさ?」
「だって、ここは刺激がなくてつまんない! もっと、楽しいことをたくさんできるところに行きたいのよ」
「はぁーーん。刺激的で楽しいところねぇ? いいよ、連れて行ってあげるよ」
夜中にこっそり抜け出して、その男に連れていかれた場所は……特殊な……娼館だった。
「ほら? ここなら刺激的でいつも楽しく過ごせるよ? あぁ、お礼はいいよ。君をここに連れてくれば、オーナーからお金がもらえるから大丈夫。俺は金がもらえてあんたは楽しい時間が過ごせるって、最高だよね?」
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