上 下
18 / 22

18 家族で助け合いなさい(国王陛下視点) 

しおりを挟む
「証拠か? 証人がいるのだよ。あの場にベールを被っていたご婦人がいたろう? それは王妃だ」

「はっ! ベールを被っていたなら、あののどっちかが王妃様だとわかるはずもない! いい加減なことを言わないでください」

 オクタビアは図々しくも儂に反論するが、愚かな男よ……すでに白状しているようなものだ。

「なぜ、お前に二人とわかったのだ? 王太后と王妃がベールを被っていたことは、その場にいなければわからないはず」

 儂は、ニヤリと笑いながら問いかけた。

「は? いいえ、ただ……なんとなくです……だいたい、証人がいないのなら話になりません」

 まだ言い訳をして誤魔化そうとする男に、私は呆れるしかない。

「証拠の記録ノートを王妃に持ってきてくれ! 儂は着替えてくるので、ワインでも飲んで待っているがいい」

 私はこの悪党から買った記録日記を、侍女から王妃に渡させると変装をしにその場を後にした。

 オクタビアは侍女に渡された赤ワインのグラスをすっかり飲み干した。

 ふっ、警戒心のまるでない男なのだな。

 王妃が記録日記を開き、朗読をはじめたようだ。


☆彡★彡☆彡



 儂が戻ってきてもまだ観察日記は朗読されていた。王妃ではなく侍女達が順番に朗読していたようだった。


「○月×日 晴天 オマリ伯爵夫妻に植物から抽出した毒を50倍に薄めて飲み水にいれ10日目に、嘔吐・目眩を……」

「○月×日 曇り オマリ伯爵夫人がついに倒れて…………」

 侍女達が読み進める内容は、正確な毒の観察日記だ。

「うわっ! やめてくれ! そんなものは知らん。オマリ伯爵夫妻にスズランの毒など誰がやるか!」

 オクタビアのワインには夜会の初めから、自白剤を薄めたものを用意していた。少しづつ、こうして本音がでるように仕組めば、より見物している貴族達にオクタビアの愚かさと邪悪さを印象づけられる。

「さてと、オクタビアよ。儂をよく見よ? 久しぶりだな」

 オクタビアは驚愕の表情で冷や汗を垂らしていた。

「まさか……おい! コクオ! 私を国王陛下に売ったのか? 友人だと思っていたのに! お前は毒が大好きな変態じじぃなはずじゃないか……エイヴリーはもう殺したのか?」

 勝手に自白していくその様子に、貴族達も唖然として『死刑』を叫んでいた。儂はオクタビアの目の前で特殊メイクを剥がすと、オクタビアはペタンと座り込み放心状態になった。


「3人は斬首刑にすればよろしいかと思いますわ」

 王妃は、綺麗な眉をひそめて言うが、それでは毒でじわじわと殺された者達がうかばれん。

「古来の刑を復活させよ! 生きたまま熱湯で……」

 母上の王太后様は、過激なことをおっしゃっているが……残虐なだけではいけない……。

 すると聡明なクラーク・キナン伯爵から妙案が提案された。

「オクタビアの犯罪は愛するヴァネッサの為にしたものでしょう? この3人はとても仲睦まじい親子ですから、連帯責任をとらせたらいかがですか? 毎日、決まった量の毒を3人分与えます。連帯責任なので、3人で協力しあってそれを飲みます。等分に分けてもいいし、一人だけで飲んでもいい。家族の愛が試せて絆が深まり、仲良くあの世にいけます」

 これは、精神的にも身体的にも辛い刑かもしれない……

「3人を塔に閉じ込め、監視をつけよ。毒はごく薄いものとし、必ず3人のうちの誰かが飲むようにせよ。勝手に捨てればむち打ちとし、連帯責任で皆に拷問を与える……」

「ひっ」

 三人は、ガクンと膝から崩れ落ちて、頭を抱え込んだ。

「お前達が娘を助けたければ、毒を夫婦で分け合って飲みなさい。娘が無事生き残ったのなら、更生させるために儂も全力を尽くそう」



しおりを挟む
感想 136

あなたにおすすめの小説

夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。

window
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。 三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。 だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。 レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。 イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。 子供の親権も放棄しろと言われてイリスは戸惑うことばかりでどうすればいいのか分からなくて混乱した。

「女友達と旅行に行っただけで別れると言われた」僕が何したの?理由がわからない弟が泣きながら相談してきた。

window
恋愛
「アリス姉さん助けてくれ!女友達と旅行に行っただけなのに婚約しているフローラに別れると言われたんだ!」 弟のハリーが泣きながら訪問して来た。姉のアリス王妃は突然来たハリーに驚きながら、夫の若き国王マイケルと話を聞いた。 結婚して平和な生活を送っていた新婚夫婦にハリーは涙を流して理由を話した。ハリーは侯爵家の長男で伯爵家のフローラ令嬢と婚約をしている。 それなのに婚約破棄して別れるとはどういう事なのか?詳しく話を聞いてみると、ハリーの返答に姉夫婦は呆れてしまった。 非常に頭の悪い弟が常識的な姉夫婦に相談して婚約者の彼女と話し合うが……

実家に帰ったら平民の子供に家を乗っ取られていた!両親も言いなりで欲しい物を何でも買い与える。

window
恋愛
リディア・ウィナードは上品で気高い公爵令嬢。現在16歳で学園で寮生活している。 そんな中、学園が夏休みに入り、久しぶりに生まれ育った故郷に帰ることに。リディアは尊敬する大好きな両親に会うのを楽しみにしていた。 しかし実家に帰ると家の様子がおかしい……?いつものように使用人達の出迎えがない。家に入ると正面に飾ってあったはずの大切な家族の肖像画がなくなっている。 不安な顔でリビングに入って行くと、知らない少女が高級なお菓子を行儀悪くガツガツ食べていた。 「私が好んで食べているスイーツをあんなに下品に……」 リディアの大好物でよく召し上がっているケーキにシュークリームにチョコレート。 幼く見えるので、おそらく年齢はリディアよりも少し年下だろう。驚いて思わず目を丸くしているとメイドに名前を呼ばれる。 平民に好き放題に家を引っかき回されて、遂にはリディアが変わり果てた姿で花と散る。

お姉様、今度は貴方の恋人をもらいますわ。何でも奪っていく妹はそう言っていますが、その方は私の恋人ではありませんよ?

柚木ゆず
恋愛
「すでに気付いているんですのよ。わたくしやお父様やお母様に隠れて、交際を行っていることに」 「ダーファルズ伯爵家のエドモン様は、雄々しく素敵な御方。お顔も財力も最上級な方で、興味を持ちましたの。好きに、なってしまいましたの」  私のものを何でも欲しがる、妹のニネット。今度は物ではなく人を欲しがり始め、エドモン様をもらうと言い出しました。  確かに私は、家族に隠れて交際を行っているのですが――。その方は、私にしつこく言い寄ってきていた人。恋人はエドモン様ではなく、エズラル侯爵家のフレデリク様なのです。  どうやらニネットは大きな勘違いをしているらしく、自身を溺愛するお父様とお母様の力を借りて、そんなエドモン様にアプローチをしてゆくみたいです。

私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。

百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」 妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。 でも、父はそれでいいと思っていた。 母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。 同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。 この日までは。 「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」 婚約者ジェフリーに棄てられた。 父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。 「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」 「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」 「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」 2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。 王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。 「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」 運命の恋だった。 ================================= (他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)

王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。 これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。 しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。 それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。 事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。 妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。 故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。

形だけの妻ですので

hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。 相手は伯爵令嬢のアリアナ。 栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。 形だけの妻である私は黙認を強制されるが……

一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」 結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。 彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。 身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。 こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。 マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。 「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」 一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。 それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。 それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。 夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。

処理中です...