9 / 22
9 断罪のはじまりー1 (オクタビア視点)
しおりを挟む熱い。
重たいキスだった。
獣に喰われるというのはまさにこのことなのだろう。強引に唇をこじ開けられ、舌を絡め取られる。
逃げようと思ってもできない。彼の舌は執拗にセレスティナのそれを追い回し、捕らえ、押し付けられ、嬲られる。
貪るように腔内を弄られ、互いの唾液が混ざりあった。
結婚式の日、交わされなかった口づけが、このような形で実現するとは。
夢に見るような触れるだけの優しいものとは全然違う。激しくて、重たくて、鈍い。
セレスティナはただただ翻弄された。息継ぎすら許されず、そのままぐいっと押し倒される。
気がつけばベッドの上で組み敷かれていて、身動きが取れなくなっている。
「っ、ぁ! リカルド、様……っ」
ようやくわずかに唇が離され、彼の名を呼ぶ。しかし彼は止まることなく、再び強く唇を喰まれた。
くちゅくちゅと、あえて音を出すようにかき混ぜられ、その淫靡な響きにセレスティナの瞳が潤む。
(どうして、いきなり。リカルド様……っ)
先ほどまで、拒絶の言葉を投げかけられていたから余計に、わけが分からない。
彼の優しいところは見つけたつもりでいたけれど、好かれている自覚もなかった。なのにどうして、突然こんなキスをされるのか。
長い口づけのあと、ようやく唇が離される。
酸素が欲しくてはくはくと息をするも、まだまともに頭は働かない。
「どう、して……」
「〈糸の神〉にわざわざ囚われに来て、その言い様ですか? あなたは神話を学んだ方がいい」
「え…………」
「俺が。俺がどれほど、あなたを渇望していたかも知らずに……っ」
「あ、待って……!」
「待てるか!」
ブチブチブチッ、と胸元のボタンが引きちぎられる音がした。乱暴に襟ぐりを開かれると、日光を知らぬ白い肌が現れる。
一年かけて、ようやく一般的なサイズに戻った双丘がまろび出た。それを睨め付けながら、リカルドはほの暗い笑みを浮かべる。
「無防備にのこのこやってくるなんて、あまりにおめでたすぎませんか? 聡明だと聞いていましたが、男に関してあなたは無知すぎる。〈処女神〉セレスの加護を受けただけある」
「あ、あ……」
「俺が〈糸の神〉の加護を受けていたことを忘れていませんか?」
ぞくりとした。
渇望、と彼は言ったが、彼の瞳に宿る色彩はもっと深く、暗い。
底冷えするような黒。そして、はらりとこぼれ落ちた前髪の隙間から、隠れていた左眼が現れる。
深淵の黒の奥に、赤い閃光が灯った摩訶不思議な瞳に、セレスティナは目を奪われた。
「この血がね。呪いのような、この加護が。あなたを喰えとずっと言ってるんですよ。わかっていますか、俺の女神?」
「リカルド、様……?」
「俺は、一度捕らえたら離さない。そう言ってるんです……!」
がぶりと、今度は胸元を喰まれた。
ちくっとした痛みが走り、彼が強く胸元に吸いついたのだと理解する。
ひとつやふたつでは足りない。まるで、自身が所有者であることを刻みつけるようにいくつも印を落としていく。
さらに、圧倒的な力で彼はセレスティナのドレスを引き裂いていき、セレスティナの真っ白い肢体が露わになる。
それを見下ろしながら、リカルドはギラギラした目でセレスティナの双丘を嬲っていった。
柔らかな肉が形を変えるほどにぐにぐにと揉み拉き、その先端をつまみ上げる。
あっという間に、先端はぷくりと硬くなり、彼はあえてそれをころころと転がした。
「ぁ、ぁぁんっ! 待って、それは……っ」
「待つわけないでしょう」
強く揉み拉かれながら、乳首を甘噛みされる。ビリビリとした甘い刺激が走り、セレスティナの身体は跳ねた。
「清楚な方だと思っていたのですがね。こんなに淫らでしたか」
「ぁ、ぁ……だって」
今の刺激は何だったのだろう。
一瞬頭が真っ白になって、何も考えられなくなった。
でも、彼が淫らだというのは、あながち間違っていないのかもしれない。
身体の芯が熱い。疼くような鈍い感覚が満たされなくて、もっと、もっとと欲が膨らむこの感覚。彼に強引に嬲られ、喜んでいる自分を自覚したから。
戸惑って何も言い返せないでいると、リカルドは自嘲するように吐き出した。
「我慢したのに。あなたを不幸にしないと、決めたのに」
「え?」
「あなたのせいですよ」
ハッキリと言い切られ、セレスティナは目を見張った。
セレスティナを見下ろしながら、リカルドは己のコートを脱ぎ捨てる。
黒騎士と呼ばれる由縁の、真っ黒なコート。中のシャツの襟元も軽く緩め、やがてガチャガチャとベルトを外した。
彼がズボンの前側をくつろげると、ギンギンに反り返った怒張が顔を出す。血管がボコボコと浮いたその凶器。
禍々しいと呼べるほどのソレの姿に、セレスティナは言葉を失う。
だって、否が応でも、彼が何をしようとしているのか理解させられた。
待って、と止めようとするも、リカルドはすでにボロボロになっているセレスティナのドレスを捲り上げ、さらに下着を取り払う。
そのままセレスティナの股の間に身体を割り入れ、強引に彼女の膝を持ち上げた。
「可哀相に。〈糸の神〉に魅入られたばっかりに――」
今まで、誰にも暴かれることのなかったセレスティナの秘部が空気にさらされる。ヒヤッとしたその感覚にセレスティナは呻いた。
それを拒否だと思ったのか、リカルドは自嘲するように笑い、それでも強引に己の鋒をあてがった。
「――現実でも、こうして好きでもない男に一生囚われることになる」
「――――っ!?」
次の瞬間。
ドスン! という重い衝撃が全身を駆け抜けた。
77
お気に入りに追加
4,133
あなたにおすすめの小説

母が病気で亡くなり父と継母と義姉に虐げられる。幼馴染の王子に溺愛され結婚相手に選ばれたら家族の態度が変わった。
window
恋愛
最愛の母モニカかが病気で生涯を終える。娘の公爵令嬢アイシャは母との約束を守り、あたたかい思いやりの心を持つ子に育った。
そんな中、父ジェラールが再婚する。継母のバーバラは美しい顔をしていますが性格は悪く、娘のルージュも見た目は可愛いですが性格はひどいものでした。
バーバラと義姉は意地のわるそうな薄笑いを浮かべて、アイシャを虐げるようになる。肉親の父も助けてくれなくて実子のアイシャに冷たい視線を向け始める。
逆に継母の連れ子には甘い顔を見せて溺愛ぶりは常軌を逸していた。

「女友達と旅行に行っただけで別れると言われた」僕が何したの?理由がわからない弟が泣きながら相談してきた。
window
恋愛
「アリス姉さん助けてくれ!女友達と旅行に行っただけなのに婚約しているフローラに別れると言われたんだ!」
弟のハリーが泣きながら訪問して来た。姉のアリス王妃は突然来たハリーに驚きながら、夫の若き国王マイケルと話を聞いた。
結婚して平和な生活を送っていた新婚夫婦にハリーは涙を流して理由を話した。ハリーは侯爵家の長男で伯爵家のフローラ令嬢と婚約をしている。
それなのに婚約破棄して別れるとはどういう事なのか?詳しく話を聞いてみると、ハリーの返答に姉夫婦は呆れてしまった。
非常に頭の悪い弟が常識的な姉夫婦に相談して婚約者の彼女と話し合うが……

夫の告白に衝撃「家を出て行け!」幼馴染と再婚するから子供も置いて出ていけと言われた。
window
恋愛
伯爵家の長男レオナルド・フォックスと公爵令嬢の長女イリス・ミシュランは結婚した。
三人の子供に恵まれて平穏な生活を送っていた。
だがその日、夫のレオナルドの言葉で幸せな家庭は崩れてしまった。
レオナルドは幼馴染のエレナと再婚すると言い妻のイリスに家を出て行くように言う。
イリスは驚くべき告白に動揺したような表情になる。
子供の親権も放棄しろと言われてイリスは戸惑うことばかりでどうすればいいのか分からなくて混乱した。

溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。
妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。
しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。
父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。
レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。
その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。
だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。

婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。
黒蜜きな粉
恋愛
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。
差出人は幼馴染。
手紙には絶縁状と書かれている。
手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。
いや、幼馴染だからって何でもかんでも報告しませんよ。
そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど……?
そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。
しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。
どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
window
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

実家に帰ったら平民の子供に家を乗っ取られていた!両親も言いなりで欲しい物を何でも買い与える。
window
恋愛
リディア・ウィナードは上品で気高い公爵令嬢。現在16歳で学園で寮生活している。
そんな中、学園が夏休みに入り、久しぶりに生まれ育った故郷に帰ることに。リディアは尊敬する大好きな両親に会うのを楽しみにしていた。
しかし実家に帰ると家の様子がおかしい……?いつものように使用人達の出迎えがない。家に入ると正面に飾ってあったはずの大切な家族の肖像画がなくなっている。
不安な顔でリビングに入って行くと、知らない少女が高級なお菓子を行儀悪くガツガツ食べていた。
「私が好んで食べているスイーツをあんなに下品に……」
リディアの大好物でよく召し上がっているケーキにシュークリームにチョコレート。
幼く見えるので、おそらく年齢はリディアよりも少し年下だろう。驚いて思わず目を丸くしているとメイドに名前を呼ばれる。
平民に好き放題に家を引っかき回されて、遂にはリディアが変わり果てた姿で花と散る。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる