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6 老人の婚約者?
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ーー★エイヴリー視点★ーー
私の趣味は絵画で、幼い頃から嫌なことがあっても楽しいことがあっても、描き続けていました。それに、絵画は私の婚約者だったカーク様のお兄様・クラーク様が、ご自分の画材セットを譲ってくださったことから好きになりました。
4歳年上のクラーク様は私の憧れでしたが、どちらも爵位を継ぐ者同士で婚約はできませんでした。クラーク様はとても優秀な方でしたので隣国への留学が決まっておりました。あの方はきっと異国の美しい花嫁を連れて戻ってくるのでしょうね。
私にはクラーク様がいつお戻りになるのかもわかりません。今はもう伯爵令嬢といえないような部屋に押し込められて、クラーク様が戻られても会うこともできないかもしれません。
☆彡★彡☆彡
「専属侍女のラベンダーと申します。」
専属侍女なんてどうして付けてくれたのだろうと不思議に思いながらも、その優しい笑顔に私は一瞬で気を許しておりました。ずっと、エマーソンしか味方がいなかった私は心細かったのです。優しく扱われることも、最近ではないことでしたもの。
「ここは、それにしても狭くて汚いお部屋ですねぇーーいくら・・・・・・あちらを泳がせると言っても・・・・・・」
「え? なにが泳ぐの?」
「はい? 金魚ですわ。赤い金魚と大きな出目金です。エイヴリー様はお気になさらず」
ラベンダーさんは、にっこり微笑みました。
☆彡★彡☆彡
夕食時のことです。いつものように皆が集まる食堂に行きましたが、明らかに料理が私のぶんだけないのでした。
いつも、メインのお肉やお魚がないのは当たり前になっておりましたが、なにもないのは今日が初めてでした。
「あぁ。エイブリーの食事は専属侍女のラベンダーが作るというので、これ以降一切、お前のぶんは用意しない」
お父様が意地悪くせせら笑っており、継母もヴァネッサもニヤニヤと蔑みの眼差しをむけてきました。
「お姉様、かわいそうに。このお肉の脂身の固いところをあげるわよ? あとパンの端っこも嫌いだからあげるわ」
・・・・・・私は・・・・・・わたし・・・・・・こんな目にずっとあうの?
「エイヴリーお嬢様! 遅くなりましたね。最初だから張り切りすぎましたわ! 牛フィレステーキです。付け合わせは、エビフライにホタテのバター焼き、ゆでたトウモロコシやジャガイモも召し上がれ。スープにグリーンサラダ、デザートもつきます」
「はぁ? おい、お前! オマリ家の食材を勝手に使うな! どういうことだ! コックを呼べ! これじゃぁ、私達のものより上等じゃないか! その料理の食材はオマリ伯爵家のものなら、その料理も私達のものだ! 寄越せ!」
「お言葉ですが、この食材は私の雇い主から届けられたものです。私はオマリ伯爵家に雇われてはおりませんので」
「はぁ? それじゃぁ、誰に雇われているのだ? おかしいだろう? アーソリンの親類は流行病で死んでいるはずだ」
「はい。エイヴリー様を見初めた旦那様が、ここに私を寄越しました」
「え! そんな、もの好きがいるのか? こいつは我が儘で嘘つきで、おまけに盗み癖もある! なぁ、そうだよな? エイヴリー?」
私は、このラベンダーに嫌われたくありませんけれど、アーソリンが殴られてしまいます・・・・・・涙がこぼれてきてそのしずくが手にこぼれます。
「エイヴリーお嬢様。お答えになる必要はありません。明日からは違う場所にお食事は用意しましょう。ここは空気が淀んでいるうえに臭いです!」
「なんだと!」
お父様が、ツカツカとラベンダーに寄っていき手を振り上げました。ラベンダーまで殴られるの? そんなの、やだ! 私はぎゅっと目をつぶります。
「この無礼者め!」
その言葉とともに身体が壁に叩きつけられる音がしました。ラベンダーが殺されちゃう! けれど、私が目を開けてみたのは・・・・・・お父様が壁に投げ飛ばされ苦痛のうめきをあげている光景でした。
「お前は奴隷だ。奴隷市で売ってやる」
「申し訳ありませんが、それは無理です。あなたは私の雇い主ではありませんから。私の雇い主はエイヴリーお嬢様をもらい受けたいと希望しております」
「くっそ! 確かに、こいつを早く嫁に出したくて、いろいろなところに申し込んだ。結婚斡旋所みたいなところだ。高位貴族などと結婚してもらっては困るから、市井の金持ちの年寄りに嫁がせたくてなーー。あっははは。お前の主人はいくつだ?」
「私の雇い主は大金持ちの老人です。年齢は知りませんがよぼよぼですね」
「あっははは! これはいい! 高く買ってもらおう。エイヴリーの婚約者が今、決まった」
ーー★ラベンダー視点ーー
私のご主人様はクラーク・キナン伯爵だ。この方には婚約者がいない。なぜって、弟君の婚約者のエイヴリー様に惚れていたからよ。立場場、結婚できない状況だからと諦めていたらしい。
ところが、エマーソンから使いが来て、こんな大変なことになっているってわかったわ。それで、私が急遽エイヴリー様をお守りする為に来たってわけ。
しかし、男のたてる計画ってなんでウダウダと時間をかけようとするのかねぇ?
「私が帰国するまで泳がせて。逐一、記録して報告するように」
そんな命令のもと、来てみたら・・・・・・これ、相当きつい迫害よ? 命令なんて聞いてられるかっての! とりあえず、お嬢様の身は守らせてもらうよ!
それに、エイヴリー様を売るって言ってたじゃないか? 年寄りに、正当な跡継ぎのオマリ伯爵令嬢を売って、自分の愛人が産んだ娘に跡をつがせようとする行為、これだけでも相当な罪に値する。
これは、クラーク様に年寄りの変装でもして帰国していただこうかね?
私は、ニヤリと笑った。だって、私は護衛侍女だよ? あんなかわいい子が虐められているのを黙って見ていられるかい?
私の趣味は絵画で、幼い頃から嫌なことがあっても楽しいことがあっても、描き続けていました。それに、絵画は私の婚約者だったカーク様のお兄様・クラーク様が、ご自分の画材セットを譲ってくださったことから好きになりました。
4歳年上のクラーク様は私の憧れでしたが、どちらも爵位を継ぐ者同士で婚約はできませんでした。クラーク様はとても優秀な方でしたので隣国への留学が決まっておりました。あの方はきっと異国の美しい花嫁を連れて戻ってくるのでしょうね。
私にはクラーク様がいつお戻りになるのかもわかりません。今はもう伯爵令嬢といえないような部屋に押し込められて、クラーク様が戻られても会うこともできないかもしれません。
☆彡★彡☆彡
「専属侍女のラベンダーと申します。」
専属侍女なんてどうして付けてくれたのだろうと不思議に思いながらも、その優しい笑顔に私は一瞬で気を許しておりました。ずっと、エマーソンしか味方がいなかった私は心細かったのです。優しく扱われることも、最近ではないことでしたもの。
「ここは、それにしても狭くて汚いお部屋ですねぇーーいくら・・・・・・あちらを泳がせると言っても・・・・・・」
「え? なにが泳ぐの?」
「はい? 金魚ですわ。赤い金魚と大きな出目金です。エイヴリー様はお気になさらず」
ラベンダーさんは、にっこり微笑みました。
☆彡★彡☆彡
夕食時のことです。いつものように皆が集まる食堂に行きましたが、明らかに料理が私のぶんだけないのでした。
いつも、メインのお肉やお魚がないのは当たり前になっておりましたが、なにもないのは今日が初めてでした。
「あぁ。エイブリーの食事は専属侍女のラベンダーが作るというので、これ以降一切、お前のぶんは用意しない」
お父様が意地悪くせせら笑っており、継母もヴァネッサもニヤニヤと蔑みの眼差しをむけてきました。
「お姉様、かわいそうに。このお肉の脂身の固いところをあげるわよ? あとパンの端っこも嫌いだからあげるわ」
・・・・・・私は・・・・・・わたし・・・・・・こんな目にずっとあうの?
「エイヴリーお嬢様! 遅くなりましたね。最初だから張り切りすぎましたわ! 牛フィレステーキです。付け合わせは、エビフライにホタテのバター焼き、ゆでたトウモロコシやジャガイモも召し上がれ。スープにグリーンサラダ、デザートもつきます」
「はぁ? おい、お前! オマリ家の食材を勝手に使うな! どういうことだ! コックを呼べ! これじゃぁ、私達のものより上等じゃないか! その料理の食材はオマリ伯爵家のものなら、その料理も私達のものだ! 寄越せ!」
「お言葉ですが、この食材は私の雇い主から届けられたものです。私はオマリ伯爵家に雇われてはおりませんので」
「はぁ? それじゃぁ、誰に雇われているのだ? おかしいだろう? アーソリンの親類は流行病で死んでいるはずだ」
「はい。エイヴリー様を見初めた旦那様が、ここに私を寄越しました」
「え! そんな、もの好きがいるのか? こいつは我が儘で嘘つきで、おまけに盗み癖もある! なぁ、そうだよな? エイヴリー?」
私は、このラベンダーに嫌われたくありませんけれど、アーソリンが殴られてしまいます・・・・・・涙がこぼれてきてそのしずくが手にこぼれます。
「エイヴリーお嬢様。お答えになる必要はありません。明日からは違う場所にお食事は用意しましょう。ここは空気が淀んでいるうえに臭いです!」
「なんだと!」
お父様が、ツカツカとラベンダーに寄っていき手を振り上げました。ラベンダーまで殴られるの? そんなの、やだ! 私はぎゅっと目をつぶります。
「この無礼者め!」
その言葉とともに身体が壁に叩きつけられる音がしました。ラベンダーが殺されちゃう! けれど、私が目を開けてみたのは・・・・・・お父様が壁に投げ飛ばされ苦痛のうめきをあげている光景でした。
「お前は奴隷だ。奴隷市で売ってやる」
「申し訳ありませんが、それは無理です。あなたは私の雇い主ではありませんから。私の雇い主はエイヴリーお嬢様をもらい受けたいと希望しております」
「くっそ! 確かに、こいつを早く嫁に出したくて、いろいろなところに申し込んだ。結婚斡旋所みたいなところだ。高位貴族などと結婚してもらっては困るから、市井の金持ちの年寄りに嫁がせたくてなーー。あっははは。お前の主人はいくつだ?」
「私の雇い主は大金持ちの老人です。年齢は知りませんがよぼよぼですね」
「あっははは! これはいい! 高く買ってもらおう。エイヴリーの婚約者が今、決まった」
ーー★ラベンダー視点ーー
私のご主人様はクラーク・キナン伯爵だ。この方には婚約者がいない。なぜって、弟君の婚約者のエイヴリー様に惚れていたからよ。立場場、結婚できない状況だからと諦めていたらしい。
ところが、エマーソンから使いが来て、こんな大変なことになっているってわかったわ。それで、私が急遽エイヴリー様をお守りする為に来たってわけ。
しかし、男のたてる計画ってなんでウダウダと時間をかけようとするのかねぇ?
「私が帰国するまで泳がせて。逐一、記録して報告するように」
そんな命令のもと、来てみたら・・・・・・これ、相当きつい迫害よ? 命令なんて聞いてられるかっての! とりあえず、お嬢様の身は守らせてもらうよ!
それに、エイヴリー様を売るって言ってたじゃないか? 年寄りに、正当な跡継ぎのオマリ伯爵令嬢を売って、自分の愛人が産んだ娘に跡をつがせようとする行為、これだけでも相当な罪に値する。
これは、クラーク様に年寄りの変装でもして帰国していただこうかね?
私は、ニヤリと笑った。だって、私は護衛侍女だよ? あんなかわいい子が虐められているのを黙って見ていられるかい?
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