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3 占い師

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「オマリ家の娘が二人になった以上は、どちらかを嫁にださなければならない。のはどちらなのか、きょうは高名な占い師を呼んである」

 お母様のお葬式からわずか10日後のことです。お父様は使用人も含めた皆の前でそう宣言したのです。

「お言葉ですが、跡取り娘はエイヴリー様に決まっているではありませんか。元はと言えば、貴方は入り婿ですよね?」

 執事のエマーソンが、憤慨した様子で反論しますが、お父様はエマーソンの方には見向きもしません。

「この世界では、占い師の言葉にそってものごとを決めるのは珍しいことではない。それと、エマーソンが前オマリ伯爵の遺言でクビにできないからといって、なんでも許されるわけではないからな!」

 鬼の形相でエマーソンを睨み付けたお父様は、激しく舌打ちをするのでした。亡くなったお祖父様はエマーソンを心から信用していましたので、自分がなくなった後でもオマリ家を切り盛りするようにと、オマリ伯爵家を引き継ぐ者にクビにしてはいけない、と遺言をしていたのです。

「クビにしてはいけないとは書いてあるが、罰してはいけないとは書いていないことを忘れるな! さっき、私が婿養子であることをあざ笑ったよな?」

 お父様はツカツカとエマーソンのところに行くと、その頬を思いっきり殴りそれでも飽き足らず蹴るのです。

「エマーソン! あぁ、なんてひどいことを・・・・・・」

 私は叫びながら止めにはいります。

「お父様! やめてください! エマーソンが死んでしまいます!」

「ふん! 口の利き方を教えてやっただけだ。いいか、エイヴリーも私に反抗するんじゃないぞ! いいことを考えた! お前らは連帯責任だ。エイヴリーが反抗したらエマーソンをぶつとしよう。エマーソンが生意気なことを意見したらエイヴリーを殴る。我ながら、とても頭がいいじゃないか? この老人がどこまで耐えられるかなぁ」

 そうおっしゃいながら、愉快そうにお笑いになるお父様は、悪魔だと思いました。その悪魔に寄り添っているのが魔女のように真っ赤な口紅をつけた継母で、楽しくてたまらないという表情でおりました。妹のヴァネッサは、これもニヤニヤと満足げな笑みを私に向けたのでした。

「さぁ、占いをはじめてもらおうか? どっちが嫁いだ方が幸せになれるんだ?」

 お父様はその占い師に尋ねますと、その方はなにやらブツブツ唱えて天を仰ぎました。

「嫁いで最高に幸せを得るのは、エイヴリー様でございます!」

 占い師は私の方を指さし、叫びました。

「そんな・・・・・・バカな・・・・・・インチキに決まっている・・・・・・」

 そのエマーソンの小さなつぶやきをヴァネッサが聞きつけて、私にほうに向かってきます。

「お姉様、私が代わりに叩いて差し上げますわ」

 そう言いながら私の頬を思いっきり叩くのでした。私は、驚きの表情でヴァネッサを見つめます。

「あら、なにをそんなに驚いているのよ? さっきのお父様の言葉忘れたの? このお爺さんが変なこと言ったらお姉様を叩けばいいってルールなんでしょ? ねぇ、お父様!」

「あぁ、そうだとも! 私の娘は飲み込みが早い。さすがだな。良い子だ、でかしたぞ!」

 そうおっしゃってヴァネッサの頭を愛おしげに撫でるのでした。お祖父様が生きていらしたら・・・・・・こんなことはなかったでしょうに・・・・・・

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