(完結)追放された王女は隣国の後宮で囚われの奴隷?になるー溺愛されて困っています

青空一夏

文字の大きさ
上 下
1 / 8

1 可愛いエマ

しおりを挟む
 私は、妹のエマが好きだった。柔らかな淡いふわふわとした巻き毛の金髪で、赤い目の子ウサギのような可愛いエマ。笑うと、右側だけにできるエクボも愛らしいのだ。

 けれど、努力することは苦手なようだった。王宮に家庭教師が来ても、かくれんぼと称してどこかに行ってしまう。

「エマ王女様は、いつも、隠れてばかりで困ってしまうわ」

 家庭教師の言葉にお母様(女王)も同意をしてエマを見つけると厳しく叱ろうとした。

「ごめんなさい。でも女王様にはお姉様がなるのですよね?だったら、私の努力って報われるのですか?」

キラキラしたウサギ目で問いかけられると、皆それ以上はきつく言えないのだった。
食事の際も「マナーが、間違っています」とお母様に注意されても直す気はなさそうだった。

「ごめんなさい。このお料理が、とても美味しくて、つい・・・・・・それにパンは、ほらこうやってかじって食べた方が絶対に美味しいと思いませんか?」

キラキラした瞳にピンクの頬のエマに、お母様もお父様も、いつのまにか頷いていた。

これで、本当にいいのかしら?


「いやだ。おねぇさまぁ。そんなに睨まないでください。エマはお姉様に、嫌われているのですか?
エマはね、優秀なお姉様に憧れているんですよぉ」

 家族は一斉にこちらを見る。私がエマを睨んでなどいないにも拘わらず、なにか非難がましい視線だった。

「ナタリーはお姉様なのだから、意地悪はしないでね?」

お母様が言えばお父様も

「こんな子ウサギのような愛らしい妹を睨んではいけないな」等とおっしゃった。

 私は、ただ、呆れて見ていただけなのに。肩をすくめて自室に戻ろうとするとエマが『お姉様、お野菜が残ってますわよ?体にいいのに。私が食べてさしあげますね』と言いながら、とても可愛く口元を動かした。

「まぁ、お姉様思いね。偉いわぁ」そんな言葉が、聞こえてくる食堂を私は、ため息をつきながら離れた。エマの前のお皿には、お肉もお魚もまだたっぷり残っていた。

 翌日、私の婚約者のハミルトン様がいらっしゃった。エマはそわそわして、新しいドレスを着ていた。

「ハミルトン様、お久しぶりです!この間は、とても楽しかったですね!ほら、市井に連れて行ってくださったでしょう?」
エマが言う言葉に、私は衝撃を隠せなかった。

「そんな、話は初めて聞いたけれど・・・・・・?」

 
 手も口調も、震えているのがわかる。顔は、多分、青ざめているにちがいない。

私が小首を傾げてハミルトン様の言葉を悲しい思いで、じっと見つめて待っているとエマが私に、こう言った。

「お姉様は、男性の気を引くのが、とても上手なのですね? その男性の同情を引くような仕草をエマにも教えてくださいませ」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】100日後に処刑されるイグワーナ(悪役令嬢)は抜け毛スキルで無双する

みねバイヤーン
恋愛
せっかく悪役令嬢に転生したのに、もう断罪イベント終わって、牢屋にぶち込まれてるんですけどー。これは100日後に処刑されるイグワーナが、抜け毛操りスキルを使って無双し、自分を陥れた第一王子と聖女の妹をざまぁする、そんな物語。

【完結】脇役令嬢だって死にたくない

こな
恋愛
自分はただの、ヒロインとヒーローの恋愛を発展させるために呆気なく死ぬ脇役令嬢──そんな運命、納得できるわけがない。 ※ざまぁは後半

【完結】出来損ないと罵られ続けた“無能な姫”は、姉の代わりに嫁ぐ事になりましたが幸せです ~あなた達の後悔なんて知りません~

Rohdea
恋愛
──隠されていた私の真実(ほんとう)の力はあなたに愛されて知りました。 小国の末姫、クローディアは、王族なら誰もが持つはずの特殊能力を授からなかったせいで、 誰からも愛されず“無能な姫”と罵られて来た。 そんなある日、大国の王から姉に縁談話が舞い込む。 王妃待遇だけど後妻、年齢も親子ほど離れている為、 泣いて嫌がった姉は自分の身代わりとしてクローディアを嫁がせればいいと言う。 反発するクローディア。 しかし、国としてクローディアは身代わりとして嫁ぐ事が決定してしまう。 罪悪感に苛まれたまま、大国に嫁いでいくクローディア。 しかし、何故かそんなクローディアを出迎えたのは…… (あれ? 私、後妻になるのでは??) それだけでなく、嫁ぎ先での生活は想像したものと大きく違っていた。 嫁いだ先でクローディアは愛される事を知り、 また、自分に隠された真実(ほんとう)の力を知る事になる。 一方、何も知らず“無能な姫”だと言ってクローディアを手放した祖国の者達は──……

竜皇帝陛下の寵愛~役立たずの治癒師は暗黒竜に今日も餌付けされ中!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリリアーナ・アンシーは社交界でも醜い容姿故にアザラシ姫と呼ばれていた。 そんな折、敵対する竜の国との平和条約の為に生贄を差し出すことになった。 その相手は純白の聖女と呼ばれるサンドラだったが国の聖女を差し出すわけにも行かず、リリアーナが身代わりを務めることになった。 辺境伯爵令嬢ならば国の為に働くべきだと泣く泣く苦渋の選択をした婚約者だったが体よくリリアーナを国から追い出し、始末する魂胆が丸見えだった。 王も苦渋の選択だったがリリアーナはある条件を付け了承したのだ。 そして決死の覚悟で敵国に迎えられたはずが。 「君が僕のお嫁さんかい?とりあえず僕の手料理を食べてくれないかな」 暗黒竜と恐れられた竜皇帝陛下は何故か料理を振る舞い始めた。 「なるほどコロコロ太らせて食べるのか」 頓珍漢な勘違いをしたリリアーナは殺されるまで美味しい物を食べようと誓ったのだが、何故か食べられる気配はなかった。 その頃祖国では、聖女が結界を敷くことができなくなり危機的状況になっていた。 世界樹も聖女を拒絶し、サンドラは聖女の地位を剥奪されそうになっていたのだった…

【完結】美人な姉と間違って求婚されまして ~望まれない花嫁が愛されて幸せになるまで~

Rohdea
恋愛
───私は美しい姉と間違って求婚されて花嫁となりました。 美しく華やかな姉の影となり、誰からも愛されずに生きて来た伯爵令嬢のルチア。 そんなルチアの元に、社交界でも話題の次期公爵、ユリウスから求婚の手紙が届く。 それは、これまで用意された縁談が全て流れてしまっていた“ルチア”に届いた初めての求婚の手紙だった! 更に相手は超大物! この機会を逃してなるものかと父親は結婚を即快諾し、あれよあれよとルチアは彼の元に嫁ぐ事に。 しかし…… 「……君は誰だ?」 嫁ぎ先で初めて顔を合わせたユリウスに開口一番にそう言われてしまったルチア。 旦那様となったユリウスが結婚相手に望んでいたのは、 実はルチアではなく美しくも華やかな姉……リデルだった───

人質同然だったのに何故か普通の私が一目惚れされて溺愛されてしまいました

ツヅミツヅ
恋愛
異国の王国に人質として連れて行かれた王女・レイティア。 彼女は政治的な駆け引きの道具として送り込まれたはずだったが、なぜかその国の王であるアナバスから異常なまでに執着される。 冷徹で非情な王と噂されるアナバスは、なぜレイティアに強く惹かれるのか? そして、王国間の陰謀が渦巻く中、レイティアはどのように運命を切り開いていくのか? 強き王と穏やかな王女の交錯する思いが描かれる、「策略と愛が交錯する異国ロマンス」。 18Rには※がついております

落ちぶれて捨てられた侯爵令嬢は辺境伯に求愛される~今からは俺の溺愛ターンだから覚悟して~

しましまにゃんこ
恋愛
年若い辺境伯であるアレクシスは、大嫌いな第三王子ダマスから、自分の代わりに婚約破棄したセシルと新たに婚約を結ぶように頼まれる。実はセシルはアレクシスが長年恋焦がれていた令嬢で。アレクシスは突然のことにとまどいつつも、この機会を逃してたまるかとセシルとの婚約を引き受けることに。 とんとん拍子に話はまとまり、二人はロイター辺境で甘く穏やかな日々を過ごす。少しずつ距離は縮まるものの、時折どこか悲し気な表情を見せるセシルの様子が気になるアレクシス。 「セシルは絶対に俺が幸せにしてみせる!」 だがそんなある日、ダマスからセシルに王都に戻るようにと伝令が来て。セシルは一人王都へ旅立ってしまうのだった。 追いかけるアレクシスと頑なな態度を崩さないセシル。二人の恋の行方は? すれ違いからの溺愛ハッピーエンドストーリーです。 小説家になろう、他サイトでも掲載しています。 麗しすぎるイラストは汐の音様からいただきました!

【完】嫁き遅れの伯爵令嬢は逃げられ公爵に熱愛される

えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
 リリエラは母を亡くし弟の養育や領地の執務の手伝いをしていて貴族令嬢としての適齢期をやや逃してしまっていた。ところが弟の成人と婚約を機に家を追い出されることになり、住み込みの働き口を探していたところ教会のシスターから公爵との契約婚を勧められた。  お相手は公爵家当主となったばかりで、さらに彼は婚約者に立て続けに逃げられるといういわくつきの物件だったのだ。  少し辛辣なところがあるもののお人好しでお節介なリリエラに公爵も心惹かれていて……。  22.4.7女性向けホットランキングに入っておりました。ありがとうございます 22.4.9.9位,4.10.5位,4.11.3位,4.12.2位  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

処理中です...