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1 可愛いエマ
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私は、妹のエマが好きだった。柔らかな淡いふわふわとした巻き毛の金髪で、赤い目の子ウサギのような可愛いエマ。笑うと、右側だけにできるエクボも愛らしいのだ。
けれど、努力することは苦手なようだった。王宮に家庭教師が来ても、かくれんぼと称してどこかに行ってしまう。
「エマ王女様は、いつも、隠れてばかりで困ってしまうわ」
家庭教師の言葉にお母様(女王)も同意をしてエマを見つけると厳しく叱ろうとした。
「ごめんなさい。でも女王様にはお姉様がなるのですよね?だったら、私の努力って報われるのですか?」
キラキラしたウサギ目で問いかけられると、皆それ以上はきつく言えないのだった。
食事の際も「マナーが、間違っています」とお母様に注意されても直す気はなさそうだった。
「ごめんなさい。このお料理が、とても美味しくて、つい・・・・・・それにパンは、ほらこうやってかじって食べた方が絶対に美味しいと思いませんか?」
キラキラした瞳にピンクの頬のエマに、お母様もお父様も、いつのまにか頷いていた。
これで、本当にいいのかしら?
「いやだ。おねぇさまぁ。そんなに睨まないでください。エマはお姉様に、嫌われているのですか?
エマはね、優秀なお姉様に憧れているんですよぉ」
家族は一斉にこちらを見る。私がエマを睨んでなどいないにも拘わらず、なにか非難がましい視線だった。
「ナタリーはお姉様なのだから、意地悪はしないでね?」
お母様が言えばお父様も
「こんな子ウサギのような愛らしい妹を睨んではいけないな」等とおっしゃった。
私は、ただ、呆れて見ていただけなのに。肩をすくめて自室に戻ろうとするとエマが『お姉様、お野菜が残ってますわよ?体にいいのに。私が食べてさしあげますね』と言いながら、とても可愛く口元を動かした。
「まぁ、お姉様思いね。偉いわぁ」そんな言葉が、聞こえてくる食堂を私は、ため息をつきながら離れた。エマの前のお皿には、お肉もお魚もまだたっぷり残っていた。
翌日、私の婚約者のハミルトン様がいらっしゃった。エマはそわそわして、新しいドレスを着ていた。
「ハミルトン様、お久しぶりです!この間は、とても楽しかったですね!ほら、市井に連れて行ってくださったでしょう?」
エマが言う言葉に、私は衝撃を隠せなかった。
「そんな、話は初めて聞いたけれど・・・・・・?」
手も口調も、震えているのがわかる。顔は、多分、青ざめているにちがいない。
私が小首を傾げてハミルトン様の言葉を悲しい思いで、じっと見つめて待っているとエマが私に、こう言った。
「お姉様は、男性の気を引くのが、とても上手なのですね? その男性の同情を引くような仕草をエマにも教えてくださいませ」
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