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10 ヴィセンテ男爵家の断罪 その2 最終話
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🌷アイラ視点
「ふむ。アイラにしたことの慰謝料とすればヴィセンテ家具店をそっくりいただくことでいいのではないか? ところで、別件として私の領地の虎や豹が最近になって激減しているが、お前達なにか知っていることはないかな? 孫娘が帰ってきたお祝いだ。正直に言えば、特別に寛大な処置を考えてやってもいいがなぁ?」
「い、いいえ! ま、全く知りませんです。そのようなことが、ヴィセンテ男爵家となんの関係がありましょうか?
だいたい、証拠もなくそのようなこと言われましても……」
「そうか、お前の娘や息子の命をかけても知らないと言い切れるか?」
「い、命……? も、もちろんですとも……ヴィセンテ男爵家ほど清廉潔白に生きている貴族はいません」
「あいわかった。裁判官殿! 今の言葉を聞きましたな? これが偽りであれば、イアンは斬首刑にその妹は絞首刑に、あの妻とオーランドは火あぶりにすることを希望します。動物保護区域での狩りは重罪だし、密売もしかり。アーヴィング公爵家や法廷を愚弄した罪は大きい。こんな者は極刑で良いと思う」
お祖父様がおっしゃったあとに、裁判所の検査官が続々と法廷に現れその両腕に大量の毛皮を抱え込んでいました。
「これらはいずれもヴィセンテ家具店の倉庫の壁から発見されました」
「う、嘘だ。こんなのでっちあげだ……誰かが勝手に倉庫にいれたんだ! はめられたんだ!」
「見苦しいですよ! 私の手帖に、この毛皮を購入した貴族達の名前が書いてあります。言い逃れはできませんわ。私はこの取引の帳場をつけさせられていましたからね」
「う……こ、これは……隣国から輸入したものです……」
「この期に及んでまだ言い逃れするのなら、お祖父様のおっしゃるように極刑になるでしょうね」
私はあきれ果てて、オーランド様を見つめました。
「人でなしめ! お前を雇って仕事を与えてやったのは私だぞ! あの時は平民だったじゃないか! 平民にはなにをしたっていいんだ。この世は身分と金なんだ! それさえあれば、下の者になにをしたって許されるんだ。飯を食わせて、仕事を与え男爵家に住まわせてやったんだ! 最高のおもてなしじゃないか!」
オーランド様が私に向かって、書類を投げつけそれが私の顔に当たる寸前にエリアンが受け止めました。
「それなら、儂はお前らに仕事を与えよう。全ての者は賎民に落ちよ。鉱山で一生働き惨めな一生をおくればいい。極刑だとすぐに死んでしまう。そんなご褒美はお前らにもったいない」
お祖父様はそうおっしゃってニヤリと笑いました。
「鉱山だと! あそこは地獄だ。あんまりだ、横暴だ! なんの権利があってそんなことを……」
「お前がたった今言ったじゃないか? この世は身分と金なのだろう? 私はお前より身分も高く金がある。そして、それさえあれば下の者になにをしたって許されるのであれば、私はお前になんでも命令できるな?」
「これは民主的じゃないぞ! 平民に落ちるだけで充分だろ? それが妥当な刑のはずだ」
オーランド様は泣き崩れていました。
「お願いだ。アイラ! 私だけは助けてくれ! 私は君にはなにもしなかった」
イアンが私のドレスの裾を掴み縋ってきました。
「イアン様と同じことを私はします。つまり、傍観ですよ。貴方の為にできることはなにもありません。かつての貴方がそうだったように……」
裁判官の女性は、お祖父様のおっしゃった通りの判決を下しました。
「全ての者は鉱山送りとします」
❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ
それから私はエリアンと結婚しました。無事に新婚旅行も二人っきりで行けたし、前の結婚が酷かっただけに今は天国だ。
「今頃、イアンは炭鉱で泥まみれ?」
私は一度だけお祖父様とエリアンに訊いたことがあります。
「さぁ、炭鉱に無事に行けたのかなぁーー」
「あぁ、炭鉱に行けたならまだ生きているかなぁ。」
私はそれ以上は追求しなかった。もう私にはなんの関係もないのだから……
ヴィセンテ家具店はアーヴィング家具店に名前を変え、私がオーナーになりとても繁盛しています。アーヴィング公爵家も継ぐ私は毎日がとても忙しいです。
そう言えばカーラーの一族もどこかに蒸発したようです。社交界では、ヴィセンテ男爵家とキーガン男爵家の話は禁句になっています。ただ、これだけは後世に伝えられました。
「この世で怒らせてはいけない種類の人間を怒らせたからだ」と。
完
おまけの部分は残酷ですので、読んでも大丈夫と思われる方だけお願いします。
「ふむ。アイラにしたことの慰謝料とすればヴィセンテ家具店をそっくりいただくことでいいのではないか? ところで、別件として私の領地の虎や豹が最近になって激減しているが、お前達なにか知っていることはないかな? 孫娘が帰ってきたお祝いだ。正直に言えば、特別に寛大な処置を考えてやってもいいがなぁ?」
「い、いいえ! ま、全く知りませんです。そのようなことが、ヴィセンテ男爵家となんの関係がありましょうか?
だいたい、証拠もなくそのようなこと言われましても……」
「そうか、お前の娘や息子の命をかけても知らないと言い切れるか?」
「い、命……? も、もちろんですとも……ヴィセンテ男爵家ほど清廉潔白に生きている貴族はいません」
「あいわかった。裁判官殿! 今の言葉を聞きましたな? これが偽りであれば、イアンは斬首刑にその妹は絞首刑に、あの妻とオーランドは火あぶりにすることを希望します。動物保護区域での狩りは重罪だし、密売もしかり。アーヴィング公爵家や法廷を愚弄した罪は大きい。こんな者は極刑で良いと思う」
お祖父様がおっしゃったあとに、裁判所の検査官が続々と法廷に現れその両腕に大量の毛皮を抱え込んでいました。
「これらはいずれもヴィセンテ家具店の倉庫の壁から発見されました」
「う、嘘だ。こんなのでっちあげだ……誰かが勝手に倉庫にいれたんだ! はめられたんだ!」
「見苦しいですよ! 私の手帖に、この毛皮を購入した貴族達の名前が書いてあります。言い逃れはできませんわ。私はこの取引の帳場をつけさせられていましたからね」
「う……こ、これは……隣国から輸入したものです……」
「この期に及んでまだ言い逃れするのなら、お祖父様のおっしゃるように極刑になるでしょうね」
私はあきれ果てて、オーランド様を見つめました。
「人でなしめ! お前を雇って仕事を与えてやったのは私だぞ! あの時は平民だったじゃないか! 平民にはなにをしたっていいんだ。この世は身分と金なんだ! それさえあれば、下の者になにをしたって許されるんだ。飯を食わせて、仕事を与え男爵家に住まわせてやったんだ! 最高のおもてなしじゃないか!」
オーランド様が私に向かって、書類を投げつけそれが私の顔に当たる寸前にエリアンが受け止めました。
「それなら、儂はお前らに仕事を与えよう。全ての者は賎民に落ちよ。鉱山で一生働き惨めな一生をおくればいい。極刑だとすぐに死んでしまう。そんなご褒美はお前らにもったいない」
お祖父様はそうおっしゃってニヤリと笑いました。
「鉱山だと! あそこは地獄だ。あんまりだ、横暴だ! なんの権利があってそんなことを……」
「お前がたった今言ったじゃないか? この世は身分と金なのだろう? 私はお前より身分も高く金がある。そして、それさえあれば下の者になにをしたって許されるのであれば、私はお前になんでも命令できるな?」
「これは民主的じゃないぞ! 平民に落ちるだけで充分だろ? それが妥当な刑のはずだ」
オーランド様は泣き崩れていました。
「お願いだ。アイラ! 私だけは助けてくれ! 私は君にはなにもしなかった」
イアンが私のドレスの裾を掴み縋ってきました。
「イアン様と同じことを私はします。つまり、傍観ですよ。貴方の為にできることはなにもありません。かつての貴方がそうだったように……」
裁判官の女性は、お祖父様のおっしゃった通りの判決を下しました。
「全ての者は鉱山送りとします」
❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ❦ஐ*:.٭ ٭:.*ஐೄ
それから私はエリアンと結婚しました。無事に新婚旅行も二人っきりで行けたし、前の結婚が酷かっただけに今は天国だ。
「今頃、イアンは炭鉱で泥まみれ?」
私は一度だけお祖父様とエリアンに訊いたことがあります。
「さぁ、炭鉱に無事に行けたのかなぁーー」
「あぁ、炭鉱に行けたならまだ生きているかなぁ。」
私はそれ以上は追求しなかった。もう私にはなんの関係もないのだから……
ヴィセンテ家具店はアーヴィング家具店に名前を変え、私がオーナーになりとても繁盛しています。アーヴィング公爵家も継ぐ私は毎日がとても忙しいです。
そう言えばカーラーの一族もどこかに蒸発したようです。社交界では、ヴィセンテ男爵家とキーガン男爵家の話は禁句になっています。ただ、これだけは後世に伝えられました。
「この世で怒らせてはいけない種類の人間を怒らせたからだ」と。
完
おまけの部分は残酷ですので、読んでも大丈夫と思われる方だけお願いします。
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