7 / 12
7 私と取引しませんか(アイラ視点)
しおりを挟む
その馬車は私道に入っていき、大きな門の手前で止まります。門番がエリアンの顔を確認すると愛想良く笑って開けてくれました。
「エリアン様、アーヴィング公爵様がお待ちですよ。こちらが、アッレサンドラ様の……? ほんとに良く似ていらっしゃる……」
いきなり涙ぐむ門番に、この話の状況が全くわからない私。アッレサンドラは私の母ですが普通の平民ですけれど……
門から先に広がる世界は別世界です。両側に広がる花畑と奥に見える巨大な噴水と壮麗な白亜の豪邸。ここは……?
「ここは、アーヴィング公爵家のお屋敷だよ。僕たちのお祖父様のお屋敷で、アイラのお母様はここのご令嬢だったんだよ」
「えぇ? まさか……そんなおかしな冗談を言って、なにを企んでいるんですか? 私の母も父も平民ですよ。父が早くに亡くなって母は女手ひとつで、とても苦労したんですから……あ、でもアーヴィング公爵にはお話したいことがありましたからちょうど良かったですわ」
「ん? 話したいことってなに?」
「あら、それは言えませんわ。アーヴィング公爵と取引する材料ですもの」
「ほぇ? お祖父様と取引? あっははは。アイラって面白いなぁ。超現実主義?」
「別段、面白くありませんわ。ヴィセンテ男爵家の方にはそれなりの償いをしてもらいたいですけれど、私には味方になってくれる高位貴族が必要ですから」
また、エリアンは笑っているけれど、この人は笑い上戸なんだって初めて知ったわ。職場ではこれほど笑っているのは見たことがなかった。
☆彡★彡☆彡
白亜の豪邸に着くと厳めしい顔つきの男性が出てきた。
「アーヴィング公爵様ですか? 私は……」
その、男性は「アッレサンドラお嬢様……」と言いながら、門番と同じように涙ぐみ意味不明だった。私をお嬢様と呼ぶってことは、アーヴィング公爵様ではないわ。考えたらアーヴィング公爵様自身が、来客の応対をするはずがなかった。あんまり、立派な風貌だったから、つい間違えてしまったわ。
「あれは、昔からここに仕えている執事のエマーソンだよ」
エリアンから聞いた私は、うなづいた。高位貴族って執事まで上品で厳めしいかんじなのね。
案内されたサロンはヴィセンテ男爵家の3倍はあると思われる広さで、調度品やソファ、絨毯、その全てが高価で上品な物ばかりだった。流石は公爵家、男爵家とは違う浮世離れした贅沢な暮らしぶりに驚くばかりだ。
ソファに座っている風格のある老人が、私を見て駆け寄ってきてハグしてきたことに、ドギマギして挨拶さえ忘れてしまいそうになった。
「あ、あの、私はアイラと申します。お目にかかれて、光栄です。アーヴィング公爵閣下におかれましては、ご機嫌麗しいようでお慶び申し上げます……で、僭越ですが、私と取引をしませんか? 私、ヴィセンテ男爵家が密猟していることを知っています」
私の言葉に老貴族は片方の眉をあげて、私の顔をじっと見つめたのだった。
「エリアン様、アーヴィング公爵様がお待ちですよ。こちらが、アッレサンドラ様の……? ほんとに良く似ていらっしゃる……」
いきなり涙ぐむ門番に、この話の状況が全くわからない私。アッレサンドラは私の母ですが普通の平民ですけれど……
門から先に広がる世界は別世界です。両側に広がる花畑と奥に見える巨大な噴水と壮麗な白亜の豪邸。ここは……?
「ここは、アーヴィング公爵家のお屋敷だよ。僕たちのお祖父様のお屋敷で、アイラのお母様はここのご令嬢だったんだよ」
「えぇ? まさか……そんなおかしな冗談を言って、なにを企んでいるんですか? 私の母も父も平民ですよ。父が早くに亡くなって母は女手ひとつで、とても苦労したんですから……あ、でもアーヴィング公爵にはお話したいことがありましたからちょうど良かったですわ」
「ん? 話したいことってなに?」
「あら、それは言えませんわ。アーヴィング公爵と取引する材料ですもの」
「ほぇ? お祖父様と取引? あっははは。アイラって面白いなぁ。超現実主義?」
「別段、面白くありませんわ。ヴィセンテ男爵家の方にはそれなりの償いをしてもらいたいですけれど、私には味方になってくれる高位貴族が必要ですから」
また、エリアンは笑っているけれど、この人は笑い上戸なんだって初めて知ったわ。職場ではこれほど笑っているのは見たことがなかった。
☆彡★彡☆彡
白亜の豪邸に着くと厳めしい顔つきの男性が出てきた。
「アーヴィング公爵様ですか? 私は……」
その、男性は「アッレサンドラお嬢様……」と言いながら、門番と同じように涙ぐみ意味不明だった。私をお嬢様と呼ぶってことは、アーヴィング公爵様ではないわ。考えたらアーヴィング公爵様自身が、来客の応対をするはずがなかった。あんまり、立派な風貌だったから、つい間違えてしまったわ。
「あれは、昔からここに仕えている執事のエマーソンだよ」
エリアンから聞いた私は、うなづいた。高位貴族って執事まで上品で厳めしいかんじなのね。
案内されたサロンはヴィセンテ男爵家の3倍はあると思われる広さで、調度品やソファ、絨毯、その全てが高価で上品な物ばかりだった。流石は公爵家、男爵家とは違う浮世離れした贅沢な暮らしぶりに驚くばかりだ。
ソファに座っている風格のある老人が、私を見て駆け寄ってきてハグしてきたことに、ドギマギして挨拶さえ忘れてしまいそうになった。
「あ、あの、私はアイラと申します。お目にかかれて、光栄です。アーヴィング公爵閣下におかれましては、ご機嫌麗しいようでお慶び申し上げます……で、僭越ですが、私と取引をしませんか? 私、ヴィセンテ男爵家が密猟していることを知っています」
私の言葉に老貴族は片方の眉をあげて、私の顔をじっと見つめたのだった。
23
お気に入りに追加
1,664
あなたにおすすめの小説

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
【完結】結婚初夜。離縁されたらおしまいなのに、夫が来る前に寝落ちしてしまいました
Kei.S
恋愛
結婚で王宮から逃げ出すことに成功した第五王女のシーラ。もし離縁されたら腹違いのお姉様たちに虐げられる生活に逆戻り……な状況で、夫が来る前にうっかり寝落ちしてしまった結婚初夜のお話
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。
美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?

最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。
window
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。
幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。
一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。
ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。


虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
始まりはよくある婚約破棄のように
喜楽直人
恋愛
「ミリア・ファネス公爵令嬢! 婚約者として10年も長きに渡り傍にいたが、もう我慢ならない! 父上に何度も相談した。母上からも考え直せと言われた。しかし、僕はもう決めたんだ。ミリア、キミとの婚約は今日で終わりだ!」
学園の卒業パーティで、第二王子がその婚約者の名前を呼んで叫び、周囲は固唾を呑んでその成り行きを見守った。
ポンコツ王子から一方的な溺愛を受ける真面目令嬢が涙目になりながらも立ち向い、けれども少しずつ絆されていくお話。
第一章「婚約者編」
第二章「お見合い編(過去)」
第三章「結婚編」
第四章「出産・育児編」
第五章「ミリアの知らないオレファンの過去編」連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる