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7 エヴァン殿下視点 / ジャウハラ視点

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☆彡★彡☆彡 エヴァン殿下視点

「兄上! 父上に謁見の場を用意していただきたい。なんと砂漠の王女殿下がお忍びで我が国を訪問なさっていたそうです。早くを開かねばならないでしょう?」
 私は王太子の兄上にこの”けば子”を紹介した。

「えぇ? 王女殿下が・・・・・・ふーーん。・・・・・・それは、なんたる一大事だ! ちょっと待って、早速を開く準備をせねばならんなぁ」

「あらぁーー、そんな大げさなことをしていただかなくてもいいんですよぉ? おっほっほほ。ただねぇ、この無礼な家庭教師に私の夫を返してあげようとしただけでして・・・・・・」

「ほぉ? アーブリー先生に貴女の夫を? それは興味深いお話ですね。父上もぜひ聞きたいと思われるでしょうから、ちょっとお待ちいただけませんか?」
 兄上はにこやかな笑顔を浮かべて愛想良く言った。

「もちろんですわ。でも、私は喉が渇いていて気分も最悪ですわ! この女ったら私にお茶の一つもださないんですもの! 常識外れもいいところでしょう? 鞭で3回ほど打ってもらえると嬉しいわぁ。あぁ、あそこの庭園の四阿にお茶を用意してくださらない?」
 私に向かって媚びるように微笑む”けば子”に、心底気持ち悪くて思わず目をすっと細めると、なぜか頬を染めてしなをつくる。勘弁してくれ!

「お茶を? 貴女にですか? ふっ、参ったな! バカな・・・・・・いやいや・・・・・・ゴホン・・・・・・今日はバカみたいに良いお天気ですねぇ? この王女殿下にお茶をお出しするように」
 私は、この”けば子”にうんざりしながらも、侍女にお茶を用意させた。

「あ。お茶には必ずミルクとレモンをつけてちょうだい! お砂糖もたっぷりね」

やれやれ、図々しい罪人だなぁ。




*  ੈ✩‧₊˚*  ੈ✩‧₊˚*  ੈ✩‧₊ジャウハラ視点

 もしかして、この国で王女として生きていけるのじゃないかしら?
私はそんな嬉しい予感で胸がわくわくだった。

 あの少年はあと数年のうちには、美しい美青年になるし私のことをチラチラと見る眼差しは、一目惚れのそれよね?
 だって、眩しそうに目を細めるもの! あれは恋する男の目! なんて私って罪深い女なの? 傾国の美女ってどこの国に行っても、通用するものなのねぇーー。

 良い香りのお茶を優雅に飲みつつ庭園の薔薇を眺めながら寛いでいると、まるでこの宮殿に住んでいるかのように錯覚する。

 あぁ、いいことを考えたわ。私とあの泥棒猫が入れ代わればいいのよ? この私が王女という身分で、あの美少年の上級家庭教師になってあげればいい。そしてあの女はアクス侯爵家の嫁になって、姑の介護をし惨めな貧乏貴族の生活を味わえばいいわ。

 その前に鞭のひとつも打たせないと。私にじろじろと品定めするような視線を向けた罪と、人の夫にちょっかい出した罰だ!

 これが、まさに因果応報なのね!

 そう思って謁見室によばれて向かえば・・・・・・そこはどう見ても王が裁く王室法廷の部屋な気が・・・・・・だって・・・・・・裁判官みたいな役人がずらずらと全面に一列に並び、中央の最上段の奥には冠をかぶった国王陛下がいた。


 さきほどの騎士と門番の隣に立たされた私はこれからどうなるの?



「これから、裁判を始める!」

「へ?」
 私は自分でも驚くほどの間抜けな声を出したのだった。



。:.゚ஐ⋆*🍓・:*ೄ‧͙·*✨ஐ⋆*🍓・:*ೄ‧͙·*♪


以下、宣伝です。

本日の夜あたり、現代日本が舞台のざまぁショートショートを投稿予定です。クスッと笑えるオチでサクッと読めるように書いていきます。
投稿しましたら、近況報告でお知らせします。


ライト文芸
「愛を教えてくれた人」
いよいよ、礼子さんが病気になっていくというくだりですが、まだすぐ死ぬわけではなくて、これからいろいろな展開がありますので・・・・・・暗くならないように書いていきたいと思います。

是非、一読していただけると嬉しいです。

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