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5 ジャウハラ視点 その2
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「ほら、入っていいぞ! それにしても、こんな美女同士がねぇ・・・・・・もったいない・・・・・・」
私は門番にそうつぶやかれながら、王宮の敷地内にやっと足を踏み入れることができた。
王家の騎士が5人も私の周りを取り囲みながら、敷地の奥へと案内してくれる。その奥にはバラ園を囲むようにして、こじんまりとした屋敷が何軒も建っていた。これは王家から大事にされている学者や使用人が住む屋敷だと思う。私の祖国でも重用されている学者一家は、敷地内に建てられた独立した居住空間に住むことを許される場合があった。
エイダンの女は子守のはずだけど・・・・・・なんで、こんなところに案内されるのだろう?
「私は子守のアーブリーって女に会いたいのよ?」
「あぁ、なるほど・・・・・・嘘をつかれたわけですねぇ・・・・・・わかります。恋人には言えなかったでしょうからねぇ。うん、うん」
門番はわかりみが深いと言い、私を同情の目で見つめた。
とりわけ見事な淡いピンクの薔薇に面した屋敷の呼び鈴を鳴らすと侍女が出てきた。そのまま門番も騎士達も一緒に中に入ると、床は大理石だし絨毯はすこぶる上等なものだった。廊下には飾り棚が設置され、かなり高価な調度品が品良く並べられている。
これは、かなりの身分を保証された者が住む建物だ・・・・・・
応接室に通されると、艶やかな金髪の美女が私の姿を上から下まで不機嫌に見ていた。その冷たいブルーの瞳は高慢で、品定めするかのようだった。
「ここは貴女の住まいなの? 子守のくせに? あぁ、もしかして王の愛妾とかなのかしら?」
「エイダンの奥方様ですわよね? いったい、この私にどのようなご要件でしょう? えぇ、私は宮殿内にも居室を与えられておりますが、この建物も自由に使ってよいと言われておりますわ。こちらのほうが落ち着いてお話しできるのでここに招きました。愛妾? この国では愛妾は公には認められていませんし、私は愛妾ではありませんよ」
きっぱりと背筋を伸ばして言う様子は生意気でムカつく。自分が明らかに上だとでもいうようにふんぞり返って憎たらしい女だわ!
「ふぇ? 恋人同士なのに固い会話ですねぇーー。いったい、どうしたっていうんですぅ?」
首を傾げる門番と騎士達に、その女は冷笑した。
「誰が同性愛者ですって? 本当に、おバカさんにも程がありますわ。勝手に勘違いして・・・・・・私達のお話が終わるまで庭園の石畳の上で、正座でもしていなさい!」
可愛らしい声がいかつい男達にそんな命令をするのを、私はイライラと聞いていた。
「は、はい」
男達は素直にその命令に従い、応接室からよく見える庭園の石畳の上に正座を始めた。
「なんて横暴な粗野な女なのよ! いったい何様なの?」
「私は第2王子殿下の上級家庭教師ですよ。そういう貴女は何様なのですか?」
「じ、上級家庭教師?・・・・・・う、嘘・・・・・・それって、学者でも簡単にはなれないはずで・・・・・・女でもなれるなんて聞いたことないんだけど・・・・・・王子殿下の教育係だと、王子殿下が成長してもご意見番になれたり、結婚してお子様ができるとそこでも雇われるって保証付きでしょう・・・・・・私の祖国では・・・・・・男しかいないわ」
「あぁ、今まではどの国もそうだったかもしれません。でも、時代は変っていくものですからね。そんなことより、要件をおっしゃってくださらない? 私もそれほど暇ではありませんのよ?」
「なによ、偉そうに! 私は王女様よ。私のほうが偉いじゃない! ソファなんかに座っていないで、その絨毯に正座なさいよ。貴女に最愛のエイダンを返しに来てあげたわ。だから、慰謝料をちょうだい。だって貴女達、ずっと不倫をしていたのでしょう? 私の祖国では王族のパートナーを誘惑したら国外追放か極刑なのよ。お金で許してあげるから感謝してよね? さぁ、そこに膝をついて、頭を床にこすりつけてお礼を言いなさい!」
私のその言葉にその女は顔を歪めた。
ふっ、私が恐ろしくて今にも泣き出しそうじゃないの!
たいしたことないわねぇーー!
と、思ったらその女は文字通りお腹を抱えて笑い出したのだった!
なんて無礼な! ただじゃぁおかないわよ!
私は門番にそうつぶやかれながら、王宮の敷地内にやっと足を踏み入れることができた。
王家の騎士が5人も私の周りを取り囲みながら、敷地の奥へと案内してくれる。その奥にはバラ園を囲むようにして、こじんまりとした屋敷が何軒も建っていた。これは王家から大事にされている学者や使用人が住む屋敷だと思う。私の祖国でも重用されている学者一家は、敷地内に建てられた独立した居住空間に住むことを許される場合があった。
エイダンの女は子守のはずだけど・・・・・・なんで、こんなところに案内されるのだろう?
「私は子守のアーブリーって女に会いたいのよ?」
「あぁ、なるほど・・・・・・嘘をつかれたわけですねぇ・・・・・・わかります。恋人には言えなかったでしょうからねぇ。うん、うん」
門番はわかりみが深いと言い、私を同情の目で見つめた。
とりわけ見事な淡いピンクの薔薇に面した屋敷の呼び鈴を鳴らすと侍女が出てきた。そのまま門番も騎士達も一緒に中に入ると、床は大理石だし絨毯はすこぶる上等なものだった。廊下には飾り棚が設置され、かなり高価な調度品が品良く並べられている。
これは、かなりの身分を保証された者が住む建物だ・・・・・・
応接室に通されると、艶やかな金髪の美女が私の姿を上から下まで不機嫌に見ていた。その冷たいブルーの瞳は高慢で、品定めするかのようだった。
「ここは貴女の住まいなの? 子守のくせに? あぁ、もしかして王の愛妾とかなのかしら?」
「エイダンの奥方様ですわよね? いったい、この私にどのようなご要件でしょう? えぇ、私は宮殿内にも居室を与えられておりますが、この建物も自由に使ってよいと言われておりますわ。こちらのほうが落ち着いてお話しできるのでここに招きました。愛妾? この国では愛妾は公には認められていませんし、私は愛妾ではありませんよ」
きっぱりと背筋を伸ばして言う様子は生意気でムカつく。自分が明らかに上だとでもいうようにふんぞり返って憎たらしい女だわ!
「ふぇ? 恋人同士なのに固い会話ですねぇーー。いったい、どうしたっていうんですぅ?」
首を傾げる門番と騎士達に、その女は冷笑した。
「誰が同性愛者ですって? 本当に、おバカさんにも程がありますわ。勝手に勘違いして・・・・・・私達のお話が終わるまで庭園の石畳の上で、正座でもしていなさい!」
可愛らしい声がいかつい男達にそんな命令をするのを、私はイライラと聞いていた。
「は、はい」
男達は素直にその命令に従い、応接室からよく見える庭園の石畳の上に正座を始めた。
「なんて横暴な粗野な女なのよ! いったい何様なの?」
「私は第2王子殿下の上級家庭教師ですよ。そういう貴女は何様なのですか?」
「じ、上級家庭教師?・・・・・・う、嘘・・・・・・それって、学者でも簡単にはなれないはずで・・・・・・女でもなれるなんて聞いたことないんだけど・・・・・・王子殿下の教育係だと、王子殿下が成長してもご意見番になれたり、結婚してお子様ができるとそこでも雇われるって保証付きでしょう・・・・・・私の祖国では・・・・・・男しかいないわ」
「あぁ、今まではどの国もそうだったかもしれません。でも、時代は変っていくものですからね。そんなことより、要件をおっしゃってくださらない? 私もそれほど暇ではありませんのよ?」
「なによ、偉そうに! 私は王女様よ。私のほうが偉いじゃない! ソファなんかに座っていないで、その絨毯に正座なさいよ。貴女に最愛のエイダンを返しに来てあげたわ。だから、慰謝料をちょうだい。だって貴女達、ずっと不倫をしていたのでしょう? 私の祖国では王族のパートナーを誘惑したら国外追放か極刑なのよ。お金で許してあげるから感謝してよね? さぁ、そこに膝をついて、頭を床にこすりつけてお礼を言いなさい!」
私のその言葉にその女は顔を歪めた。
ふっ、私が恐ろしくて今にも泣き出しそうじゃないの!
たいしたことないわねぇーー!
と、思ったらその女は文字通りお腹を抱えて笑い出したのだった!
なんて無礼な! ただじゃぁおかないわよ!
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