上 下
33 / 67

32 思いがけないライバル出現

しおりを挟む
「ビニ公爵家は王国において非常に影響力がある家柄です。そのため、跡継ぎがいないことは王家にとっても懸念事項です。しかし、幸いにもライオネルはビニ公爵夫妻を尊敬し、その養子となり、その爵位を継ぐことを望んでいます」               

 カサンドラ王妃殿下はボナデアお母様を真剣な表情で見つめ、この提案の重要性を伝えた。

「もちろん、以前からそのようなことになるだろうと予感はしておりました。ですから、ソフィを私個人の養子に迎えたのです。ライオネル殿下とソフィの恋物語が実を結ぶ未来予想図はもう手に入れました。なんの問題もありませんわ」

「ふふっ。私もその未来予想図を期待していた一人ですわ。やはり年頃の男女は親がレールを決めてお見合いさせるよりは、自然に交流させて機が熟するのを待たないとね」

 どうやら、このお二人は私がビニ公爵家にお手紙を送った時から、このような展開を目論んでいたようだった。このような展開とは、もちろん私とライオネル殿下が好意を持ち合うということだ。

 次の試練は、私がライオネル殿下に相応しいかどうかを証明するということだったのよ。

「今回のようにビニ公爵夫人個人の養子になるのとは意味合いが全く違うのですよ」
 カサンドラ王妃殿下はそう切り出して、さらに説明を続けてくださった。

 第二王子がビニ公爵家を継ぐ場合、その妻の選定には王国内の主要な貴族や政治的な利害関係者が、より深く介入することが考えられること。ビニ公爵家の影響力はとりわけ高いので、その継承には政治的な意味合いが強く、適切な妻の選定は王国全体に影響を及ぼす可能性があるということ。そのため、王家は慎重に検討し、様々な要因を考慮して妻を選び、政治的な安定や関係の維持に努力しなければならないということ。

 このようなわけで、これからいくつかの試験を王宮で行い、私がその地位に値するかどうかを判断されるということだった。決して気を抜かずに、絶え間ない努力を続けることが、今の私には必要なのだった。でも、それは嬉しい試練で、やり甲斐のあることだと確信できた。

 私はますます学業に力を入れ、未来のビニ公爵夫人になるべく努力を重ねていたある日、メドフォード国の北に位置するカロライナ王国から王妹カメーリア殿下が文化交流と友好関係の促進を目的として、メドフォード国を訪れた。

 彼女はメドフォード国の豊かな歴史や芸術、音楽、政治に興味を持っており、それに触れる機会を求めていた。この視察の一環として、メドフォード国の宮廷で行われる公式なイベントや文化プログラムに参加し、国同士の友好関係を深めるための交流を積極的に行った。

 文化プログラムでは、美術展示、音楽コンサート、伝統的な舞踏、料理の試食、ワークショップなどが催された。その際、ライオネル殿下は絵画を出展し、大ホールでヴァイオリンを演奏することになった。

 大ホールの中にはたくさんの貴族と招待客が座り、彼の演奏を待ちわびていた。大ホールの中央に立つライオネル殿下は、堂々とした姿勢でヴァイオリンを抱え、その楽器を繊細に奏でた。

 最初の音が響き渡ると、ヴァイオリンの音色が大ホールを満たし、ライオネル殿下の指は弦を巧みに操っていく。演奏は情熱的で感情豊かであり、聴衆を引き込む力にあふれていた。

 ホールに響く心を揺さぶるような芸術的音色に、すっかり私の心は魅了された。けれどその麗しい容姿と、奏でる美しい旋律は、王妹カメーリア殿下の心をも鷲づかみにしてしまったのだった。


୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧
「Ⅱ小説登場人物の為のイラストギャラリー」の19話にヴァイオリンを弾くライオネル殿下が投稿されております。よろしければ見てくださいね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

婚約破棄されたので、論破して旅に出させて頂きます!

桜アリス
ファンタジー
婚約破棄された公爵令嬢。 令嬢の名はローザリン・ダリア・フォールトア。 婚約破棄をした男は、この国の第一王子である、アレクサンドル・ピアニー・サラティア。 なんでも好きな人ができ、その人を私がいじめたのだという。 はぁ?何をふざけたことをおっしゃられますの? たたき潰してさしあげますわ! そして、その後は冒険者になっていろんな国へ旅に出させて頂きます! ※恋愛要素、ざまぁ?、冒険要素あります。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 文章力が、無いのでくどくて、おかしいところが多いかもしれません( ̄▽ ̄;) ご注意ください。m(_ _)m

婚約破棄?とっくにしてますけど笑

蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。  さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。

【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係

つくも茄子
ファンタジー
留学から戻られた王太子からの突然の婚約破棄宣言をされた公爵令嬢。王太子は婚約者の悪事を告発する始末。賄賂?不正?一体何のことなのか周囲も理解できずに途方にくれる。冤罪だと静かに諭す公爵令嬢と激昂する王太子。相反する二人の仲は実は出会った当初からのものだった。王弟を父に帝国皇女を母に持つ血統書付きの公爵令嬢と成り上がりの側妃を母に持つ王太子。貴族然とした計算高く浪費家の婚約者と嫌悪する王太子は公爵令嬢の価値を理解できなかった。それは八年前も今も同じ。二人は互いに理解できない。何故そうなってしまったのか。婚約が白紙となった時、どのような結末がまっているのかは誰にも分からない。

不貞の末路《完結》

アーエル
恋愛
不思議です 公爵家で婚約者がいる男に侍る女たち 公爵家だったら不貞にならないとお思いですか?

処理中です...