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「また、一緒に楽しい時間が過ごせるといいね」
湖での楽しいひとときはあっという間に過ぎ、ライオネル殿下はそのようにおっしゃった。
「はい。ライオネル殿下の絵はとても素敵でしたわ。感性豊かで、センスもあるのですね! フルートの音色も魔法のように心に響きました。幻想的な美しい夢の世界に引き込まれるようでした」
「ありがとう。芸術や音楽、それに王国の文化や歴史について学ぶことが好きだから、自然と上達したんだ。それに比べて、剣術の訓練は正直言って苦手なんだ。父上や兄上は優れた剣士で、戦術の才能もあるけれど、私はどうもそういうことが得意じゃないみたいだ」
ライオネル殿下は少しだけ恥ずかしそうに俯いた。
皆がみんな、剣士にならなくても良いと思う。
「そうなのですね。剣術が得意でなくても、自分の興味と情熱を追求することは、とても大切なことだと思います。芸術や音楽が栄えるのは国力があり、民の生活が豊かである象徴です。とても価値のあることだと思います」
にっこり笑うと、ライオネル殿下は顔を赤らめて、嬉しそうに微笑んだ。
「フルートは最初に学んだ楽器なんだ。これを吹くと心が落ち着くから、いつも持ち歩いている」
「素敵ですね。私もハープやピアノを弾くことが好きです。ラバジェ伯爵家では音楽専門の家庭教師をつけてもらえなかったので、基礎的なものしか弾けないのですけど」
ラバジェ伯爵家は貧乏ではなかったけれど、両親は贅沢な生活を楽しみたいと考えていたし、特に女性の教育をそれほど重要視していなかった。
お母様はドレスやお化粧品にお金をかけることを当然と思っていたし、私にも同じ価値観を持たせたいと考えていたのかもしれない。
家庭教師は一人で、芸術や音楽、文学の基本的な知識を伝えてくれるだけで、高度な技術が必要なレッスンは受けられなかった。とても残念だったと思う。
エレガントローズ学院では音楽の授業があり、楽器ごとに専門の教師がいらっしゃるので、フルートやハープのレッスンも受けられる。ハープは大きくて手軽に持ち運ぶことはできないけれど、とても優雅で美しい音色を奏でるのよ。
あの優雅な楽器を、自由自在に弾きこなす自分を想像して、思わず笑みがこぼれた。
「いつか、ライオネル殿下と一緒に演奏できるように頑張りますね」
そう申し上げると、ライオネル殿下も口元に、ふんわりとした優しい笑顔を浮かべたのだった。
☆彡 ★彡
ピクニックからビニ公爵邸に戻ると、時刻はもう夕方で、周りは薄暗くなりかけていた。ボナデア伯母様はファミリールーム(家族用居間)で、ライオネル殿下について私に尋ねた。
「ソフィ。ライオネル殿下について、どう思いましたか?」
私はほんの少し迷いながらも、穏やかな表情で答えた。
「ライオネル殿下はとても礼儀正しく、魅力的な方だと感じました。彼の描く絵のすばらしさや、優しいフルートの音色に感銘を受けましたわ。それに、ライオネル殿下との会話は楽しかったです」
ボナデア伯母様は満足そうに頷いた。
「それは素晴らしいわ。ライオネル殿下は宮廷でも高く評価されているし、あなたにとって素晴らしい友達になるでしょう。ただし、あなたとライオネル殿下の友情が深まり、将来的には何かが芽生えることもあるかもしれないけれど、焦る必要はないのよ。まだ学院生活は始まったばかりだし、やることはたくさんありますからね」
ボナデア伯母様は私に『恋はゆっくり、お勉強はきっちり』という言葉を教えてくださった。私はボナデア伯母様の言葉に頷き、感謝の気持ちをこめて言った。
「ライオネル殿下との友情を大切にし、自分のやるべきことに邁進します。私はお勉強をさせていただくために、この国に来たのですから」
「違うわよ。お勉強するためだけに来たのではないわ。幸せになるために来たのよ」
ボナデア伯母様は優しく微笑んで私の頭を撫でた。
「ソフィ、あなたはまだ若いし、たくさんの可能性があるの」
私はボナデア伯母様のお陰で、日に日に自分の価値が信じられるようになっていく。また、ボナデア伯母様は私に、こうもおっしゃった。
「私達のような注目を浴びる立場の者は、常に見られているということを、忘れてはなりませんよ」
「はい、肝に銘じます」
実の母親はこのようなことを教えてはくれなかったし、いつも自分に価値がないんだと思わされていた。お母様とボナデア伯母様は姉妹だというのに、なぜこれほど違うのだろう? 不思議に思ったのと同時に、お母様にボナデア伯母様という姉がいて良かったと、心から思うのだった。
☆彡 ★彡
翌日は朝早くエレガントローズ学院へと戻った。
「ソフィがエレガントローズ女学院に戻るのはちょっと寂しいけれど、またすぐに会えるわ。この週末、一緒に過ごした時間は本当に楽しかったわ」
ボナデア伯母様が私を抱きしめた。ビニ公爵様が話を繋げる。
「次回の週末も楽しみにしているよ。学業や友情を大切にして、良い経験を積みなさい。どんなことがあっても、私たちはソフィの味方だ。君は私にとっても大事な姪だからね。それから、常に周りの者に気を配りなさい」
私は微笑みながら、ボナデア伯母様達に感謝の気持ちを伝えた。この二日間がとても充実していて楽しかったこと。いくら感謝しても足りないほど、ありがたいと思っていることなどをお伝えしたのよ。
実の両親とは長い間一緒にいたけれど、心の距離がとても遠かった。けれど、ボナデア伯母様たちと過ごした週末は短かったけれど、ぐっと距離が近づいて、実の両親よりも甘えられる存在になっていた。
次の週末もここに帰ってこられることは嬉しかったし、これから勉学に励むためにエレガントローズ学院に向かうこともワクワクしていた。
☆彡 ★彡
私は馬車に乗って学院へと向かった。エレガントローズ女学院はビニ公爵邸から馬車で半時(30分)ほどの距離よ。御者に挨拶をして馬車を降りると、そこにはジョディ様とアーリン様が直立不動で立っていた。
「おはようございます。お二人ともどうされたのですか? どなたかをお待ちなのかしら?」
まさか私を待っているとは思わなかったので、軽い気持ちで聞いてみた。
「もちろんソフィ様をお待ちしておりました。申し訳ございませんでした」
彼女達は謝罪の言葉を誠実に述べ、石畳に頭をこすりつけるようにして、後悔と反省の念を示している。その様子は、彼女達の誠実さと謝罪の誠意を感じさせた。
でも、なにに対しての謝罪なの?
「ドレスが汚れてしまいますから、お立ちになって。いったい、私になにをしたというのですか?」
「ドレスの件ですが、あれを破いたのは私達なのです!」
ジョディ様とアーリン様はあまり仲が良い印象ではなかったけれど、今ではすっかり打ち解けた友人のようになっていた。二人で同時に同じ言葉を口にする。
すぐ側にはウィレミナ学院長もいらして、ヘレンのことも報告してくださった。
「そのような訳でして、ジョディ様とアーリン様の処分は、ソフィ様にお任せしたいと思います」
「お話はわかりました。そうですね。少し考えたいと思います」
彼女たちは、神妙な表情を浮かべてその場を後にした。私は特別室で日記帳を広げて、さきほどのことを整理してみた。
最初は驚きだった。自分のお部屋に他人が無断で入るのは気持ちの良いことではない。マリエッタ様とは仲が良かったので、彼女のことは許す気持ちでいた。
けれど、ジョディ様とはほとんど会話をしたこともないし、アーリン様はマリエッタ様の側によくいる印象しかなかった。個人的にお話をしたことはないのよ。
けれども、自分に非がなかったわけではない。鍵をかけるべきだったのに、鍵をかけなかったことは、私の大きな過ちだ。私の罪も半分あると考えれば、彼らを厳しく罰するべきではない。
一晩考えて私が出した結論をウィレミナ学院長に申し上げた。
「私が特別室の鍵をかけないでいたことも原因の一つです。皆様が贅沢な部屋に興味を抱いていたことも理解できます。私達は人間ですから、時には誘惑に負け、誤った選択をすることもあります。ですから、他の令嬢たちが私の部屋に入り、ドレスを破ったことについて、厳しい処分を求めるつもりはありません。むしろ、この出来事を通じて、私たちはお互いを理解し、共感し合う機会として受け止めたいと思います」
私のダンス用のドレスは数が多すぎる。それはもしかしたら・・・・・・ボナデア伯母様が私に出した宿題なのかもしれない。
私はウィレミナ学院長に、5着ほどのダンス用ドレスを寄付することを宣言した。誰でもそれを着ることができるようにしたい。
ボナデア伯母様だったら、そうなさるはずよ。
さらに定期的に私のお部屋でお茶会を開き、順番に皆様を招待することも付け加えた。ボナデア伯母様がおっしゃった言葉を思い出していた。
「たくさんの方と分け隔てなく接しなさい」
私はこれからそれを実践していこうと思うのだった。
※ちょこっとココ視点
私はクランシー様とブリス侯爵領にある小さな湖に遊びに来ていた。5人まで乗れる赤いボードはブリス侯爵家の所有する自慢のボードだ。
ボードの横の部分には、葡萄の葉と花の彫刻が施され、座席は赤いクッションが置かれた可愛いベンチになっている。ボートの帆は絹のような素材で、風を受けてゆっくり進んでいく。
なんて優雅で贅沢なの? ソフィがいないお陰で私がクランシー様を独占できている。毎日が楽しくて笑いがこみあげてくるわ!
鼻歌を歌いながら、私は水面に手を伸ばした。その透き通った美しい水に触ろうとしたのよ。でも、私の手が水に触れた瞬間、予想外の反応が起こった。
水面に手を触れた瞬間、私はバランスを崩してボートから転げ落ち、水中へと飛び込んでしまったのよ。水しぶきが上がり、私は溺れかけて助けを求めた。
「たっ、助けてぇえぇーー! まだ死にたくなぁーーい」
けれど、湖畔にいた他の人々は呆れながらも笑っていた。
「この湖は浅いのですよぉおーー。充分立てますよーー」
私は水から顔を出し、恥ずかしさと怒りで赤くなりながら、周りの笑い声に包まれたのだった。
୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧
※二人の令嬢の具体的な処分は次回に続きます。
湖での楽しいひとときはあっという間に過ぎ、ライオネル殿下はそのようにおっしゃった。
「はい。ライオネル殿下の絵はとても素敵でしたわ。感性豊かで、センスもあるのですね! フルートの音色も魔法のように心に響きました。幻想的な美しい夢の世界に引き込まれるようでした」
「ありがとう。芸術や音楽、それに王国の文化や歴史について学ぶことが好きだから、自然と上達したんだ。それに比べて、剣術の訓練は正直言って苦手なんだ。父上や兄上は優れた剣士で、戦術の才能もあるけれど、私はどうもそういうことが得意じゃないみたいだ」
ライオネル殿下は少しだけ恥ずかしそうに俯いた。
皆がみんな、剣士にならなくても良いと思う。
「そうなのですね。剣術が得意でなくても、自分の興味と情熱を追求することは、とても大切なことだと思います。芸術や音楽が栄えるのは国力があり、民の生活が豊かである象徴です。とても価値のあることだと思います」
にっこり笑うと、ライオネル殿下は顔を赤らめて、嬉しそうに微笑んだ。
「フルートは最初に学んだ楽器なんだ。これを吹くと心が落ち着くから、いつも持ち歩いている」
「素敵ですね。私もハープやピアノを弾くことが好きです。ラバジェ伯爵家では音楽専門の家庭教師をつけてもらえなかったので、基礎的なものしか弾けないのですけど」
ラバジェ伯爵家は貧乏ではなかったけれど、両親は贅沢な生活を楽しみたいと考えていたし、特に女性の教育をそれほど重要視していなかった。
お母様はドレスやお化粧品にお金をかけることを当然と思っていたし、私にも同じ価値観を持たせたいと考えていたのかもしれない。
家庭教師は一人で、芸術や音楽、文学の基本的な知識を伝えてくれるだけで、高度な技術が必要なレッスンは受けられなかった。とても残念だったと思う。
エレガントローズ学院では音楽の授業があり、楽器ごとに専門の教師がいらっしゃるので、フルートやハープのレッスンも受けられる。ハープは大きくて手軽に持ち運ぶことはできないけれど、とても優雅で美しい音色を奏でるのよ。
あの優雅な楽器を、自由自在に弾きこなす自分を想像して、思わず笑みがこぼれた。
「いつか、ライオネル殿下と一緒に演奏できるように頑張りますね」
そう申し上げると、ライオネル殿下も口元に、ふんわりとした優しい笑顔を浮かべたのだった。
☆彡 ★彡
ピクニックからビニ公爵邸に戻ると、時刻はもう夕方で、周りは薄暗くなりかけていた。ボナデア伯母様はファミリールーム(家族用居間)で、ライオネル殿下について私に尋ねた。
「ソフィ。ライオネル殿下について、どう思いましたか?」
私はほんの少し迷いながらも、穏やかな表情で答えた。
「ライオネル殿下はとても礼儀正しく、魅力的な方だと感じました。彼の描く絵のすばらしさや、優しいフルートの音色に感銘を受けましたわ。それに、ライオネル殿下との会話は楽しかったです」
ボナデア伯母様は満足そうに頷いた。
「それは素晴らしいわ。ライオネル殿下は宮廷でも高く評価されているし、あなたにとって素晴らしい友達になるでしょう。ただし、あなたとライオネル殿下の友情が深まり、将来的には何かが芽生えることもあるかもしれないけれど、焦る必要はないのよ。まだ学院生活は始まったばかりだし、やることはたくさんありますからね」
ボナデア伯母様は私に『恋はゆっくり、お勉強はきっちり』という言葉を教えてくださった。私はボナデア伯母様の言葉に頷き、感謝の気持ちをこめて言った。
「ライオネル殿下との友情を大切にし、自分のやるべきことに邁進します。私はお勉強をさせていただくために、この国に来たのですから」
「違うわよ。お勉強するためだけに来たのではないわ。幸せになるために来たのよ」
ボナデア伯母様は優しく微笑んで私の頭を撫でた。
「ソフィ、あなたはまだ若いし、たくさんの可能性があるの」
私はボナデア伯母様のお陰で、日に日に自分の価値が信じられるようになっていく。また、ボナデア伯母様は私に、こうもおっしゃった。
「私達のような注目を浴びる立場の者は、常に見られているということを、忘れてはなりませんよ」
「はい、肝に銘じます」
実の母親はこのようなことを教えてはくれなかったし、いつも自分に価値がないんだと思わされていた。お母様とボナデア伯母様は姉妹だというのに、なぜこれほど違うのだろう? 不思議に思ったのと同時に、お母様にボナデア伯母様という姉がいて良かったと、心から思うのだった。
☆彡 ★彡
翌日は朝早くエレガントローズ学院へと戻った。
「ソフィがエレガントローズ女学院に戻るのはちょっと寂しいけれど、またすぐに会えるわ。この週末、一緒に過ごした時間は本当に楽しかったわ」
ボナデア伯母様が私を抱きしめた。ビニ公爵様が話を繋げる。
「次回の週末も楽しみにしているよ。学業や友情を大切にして、良い経験を積みなさい。どんなことがあっても、私たちはソフィの味方だ。君は私にとっても大事な姪だからね。それから、常に周りの者に気を配りなさい」
私は微笑みながら、ボナデア伯母様達に感謝の気持ちを伝えた。この二日間がとても充実していて楽しかったこと。いくら感謝しても足りないほど、ありがたいと思っていることなどをお伝えしたのよ。
実の両親とは長い間一緒にいたけれど、心の距離がとても遠かった。けれど、ボナデア伯母様たちと過ごした週末は短かったけれど、ぐっと距離が近づいて、実の両親よりも甘えられる存在になっていた。
次の週末もここに帰ってこられることは嬉しかったし、これから勉学に励むためにエレガントローズ学院に向かうこともワクワクしていた。
☆彡 ★彡
私は馬車に乗って学院へと向かった。エレガントローズ女学院はビニ公爵邸から馬車で半時(30分)ほどの距離よ。御者に挨拶をして馬車を降りると、そこにはジョディ様とアーリン様が直立不動で立っていた。
「おはようございます。お二人ともどうされたのですか? どなたかをお待ちなのかしら?」
まさか私を待っているとは思わなかったので、軽い気持ちで聞いてみた。
「もちろんソフィ様をお待ちしておりました。申し訳ございませんでした」
彼女達は謝罪の言葉を誠実に述べ、石畳に頭をこすりつけるようにして、後悔と反省の念を示している。その様子は、彼女達の誠実さと謝罪の誠意を感じさせた。
でも、なにに対しての謝罪なの?
「ドレスが汚れてしまいますから、お立ちになって。いったい、私になにをしたというのですか?」
「ドレスの件ですが、あれを破いたのは私達なのです!」
ジョディ様とアーリン様はあまり仲が良い印象ではなかったけれど、今ではすっかり打ち解けた友人のようになっていた。二人で同時に同じ言葉を口にする。
すぐ側にはウィレミナ学院長もいらして、ヘレンのことも報告してくださった。
「そのような訳でして、ジョディ様とアーリン様の処分は、ソフィ様にお任せしたいと思います」
「お話はわかりました。そうですね。少し考えたいと思います」
彼女たちは、神妙な表情を浮かべてその場を後にした。私は特別室で日記帳を広げて、さきほどのことを整理してみた。
最初は驚きだった。自分のお部屋に他人が無断で入るのは気持ちの良いことではない。マリエッタ様とは仲が良かったので、彼女のことは許す気持ちでいた。
けれど、ジョディ様とはほとんど会話をしたこともないし、アーリン様はマリエッタ様の側によくいる印象しかなかった。個人的にお話をしたことはないのよ。
けれども、自分に非がなかったわけではない。鍵をかけるべきだったのに、鍵をかけなかったことは、私の大きな過ちだ。私の罪も半分あると考えれば、彼らを厳しく罰するべきではない。
一晩考えて私が出した結論をウィレミナ学院長に申し上げた。
「私が特別室の鍵をかけないでいたことも原因の一つです。皆様が贅沢な部屋に興味を抱いていたことも理解できます。私達は人間ですから、時には誘惑に負け、誤った選択をすることもあります。ですから、他の令嬢たちが私の部屋に入り、ドレスを破ったことについて、厳しい処分を求めるつもりはありません。むしろ、この出来事を通じて、私たちはお互いを理解し、共感し合う機会として受け止めたいと思います」
私のダンス用のドレスは数が多すぎる。それはもしかしたら・・・・・・ボナデア伯母様が私に出した宿題なのかもしれない。
私はウィレミナ学院長に、5着ほどのダンス用ドレスを寄付することを宣言した。誰でもそれを着ることができるようにしたい。
ボナデア伯母様だったら、そうなさるはずよ。
さらに定期的に私のお部屋でお茶会を開き、順番に皆様を招待することも付け加えた。ボナデア伯母様がおっしゃった言葉を思い出していた。
「たくさんの方と分け隔てなく接しなさい」
私はこれからそれを実践していこうと思うのだった。
※ちょこっとココ視点
私はクランシー様とブリス侯爵領にある小さな湖に遊びに来ていた。5人まで乗れる赤いボードはブリス侯爵家の所有する自慢のボードだ。
ボードの横の部分には、葡萄の葉と花の彫刻が施され、座席は赤いクッションが置かれた可愛いベンチになっている。ボートの帆は絹のような素材で、風を受けてゆっくり進んでいく。
なんて優雅で贅沢なの? ソフィがいないお陰で私がクランシー様を独占できている。毎日が楽しくて笑いがこみあげてくるわ!
鼻歌を歌いながら、私は水面に手を伸ばした。その透き通った美しい水に触ろうとしたのよ。でも、私の手が水に触れた瞬間、予想外の反応が起こった。
水面に手を触れた瞬間、私はバランスを崩してボートから転げ落ち、水中へと飛び込んでしまったのよ。水しぶきが上がり、私は溺れかけて助けを求めた。
「たっ、助けてぇえぇーー! まだ死にたくなぁーーい」
けれど、湖畔にいた他の人々は呆れながらも笑っていた。
「この湖は浅いのですよぉおーー。充分立てますよーー」
私は水から顔を出し、恥ずかしさと怒りで赤くなりながら、周りの笑い声に包まれたのだった。
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※二人の令嬢の具体的な処分は次回に続きます。
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