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(メイドのヘレン視点)※ヘレンのざまぁ
「わっ、私になにかするつもりですか? いくらビニ公爵家だからといって、私を抹殺するなんてできないはずです! 平民だからって、簡単にやれらたりするもんですか」
私はきっと酷い目に遭わされる。貴族のお城には地下牢があると聞いたことがあるもの。きっと、閉じ込められて拷問されて殺されるのかもしれない。
に、逃げなきゃ・・・・・・。
「抹殺? あのなぁ、ビニ公爵夫人がそんな残酷なことを指示なさるわけないだろう? ただ、この甘いジュースを飲んでくれるだけで良い」
にっこり笑って手渡されたものは、鮮やかなオレンジ色のジュースだ。
「これは毒ですね? 私を暗殺するつもりなんだわ。私はなにもしてない。なにもしてないんですぅーー」
そう言いながら飲むのを拒んで暴れようとしたけれど、無理矢理鼻をつままれ口の中に流し込まれた。
無念・・・・・・きっと私は死ぬのね? くっ、くっるしく・・・・・・ない? むしろ美味しかったし、ふわふわとした良い気分だった。
口の中で果物の風味が広がって楽しい気分になったのも束の間、やがて、巨大な蛇が目前に現れ私をにらみつけ、頭を高く持ち上げながら、次のように命令してきた。
「ソフィ様の部屋でなにを見た? 自分がしたことも含めて全て白状するんだ」
まさに、私は蛇に睨まれた蛙よ。
「レースの部分がほつれていて、首の部分に軽微な裂け目のあるピンクのドレスを見つけました。おそらく、ジョディ様とアーリン様の仕業だと思いました。それから、私はさらにそのドレスを引き裂きました。マリエッタ様に罪をなすりつけ、自分がお気に入りになりたかったのです。ソフィ様の専属メイドになって、華やかな世界で生きたかったんですぅうぅうーー。大蛇様、許してくださいぃぃーー」
蛇が赤い舌をチラチラさせてこちらを睨む様子が、あまりにも怖くて震えも涙も止まらない。気づけば、私はエレガントローズ学院長室で号泣しており、目の前には憤怒に駆られたウィレミナ学院長が立っていた。
「ヘレン。あなたはクビです! ソフィ様のドレスは何年かかっても弁償しなさい」
☆彡 ★彡
私はエレガントローズ学院を追い出されて、裕福だけれどメイドが居着かないと評判のお嬢様のメイドになった。ローズ学院の正式な紹介状を持たない私は、問題を抱えるお屋敷でないと雇ってくれない。
このお嬢様の毎朝のお着替えは一大イベントだった。何度も何度も違うドレスを試して、気に入ったものを選ぶのが日課になっていた。気に入らないとすぐに着替えを命じるから、いつもクローゼットは散らかり放題だ。ドレスの整理と手入れには何時間もかかるし、そんなことばかりしていたら、ドレスが傷んでしまうのも理解してくれない。
お嬢様は食事についても完璧さを求めた。お嬢様のお気に入りのシェフが料理を振舞っても、何かしら文句をつけた。塩の加減や料理の温度、盛りつけの仕方、全部がお嬢様の不満の対象になった。何かちょっとでも気にくわないことがあると、彼女はすぐに機嫌が悪くなる。
ドレスにちょっとしわが寄っただけで、怒り狂い私たちに罰を与えた。最初は軽い叱責や平手打ちだったけれど、最近では鞭を使っての体罰も増えてきた。私たちは恐れおののき、何かを間違えないように祈る日々だ。
私は不安の念に取り囲まれ、自身を小さく縮こませるように過ごしている。少しでもお嬢様の機嫌を損なわないように祈る日々だ。
「ちょっと! ヘレンの不満そうなその目つきが気に入らないわ」
瞬時に勢いよく放たれた平手打ちに、私は打たれると同時に床に倒れ込む。
ソフィ様の専属メイドになりたいなんて思ったのが間違いだった。あんなことさえしなければ・・・・・・私は後悔の涙を何度も流すのだった。
(ニッキー視点)
俺はニッキー。ビニ公爵家の副シェフで、ソフィ様がエレガントローズ学院にいる間だけは、ここのシェフ長になっている。ソフィお嬢様にとびっきり美味しいものを召し上がっていただくことが仕事だが、実はもっと大事な仕事があるんだ。それはソフィお嬢様をお守りすること。危険人物の排除を、ビニ公爵夫人から仰せつかっていた。
さて、ジョディ・スープナ男爵令嬢とアーリン・バサム子爵令嬢にも「エリクサー "Mirror of the Soul"」を飲ませてみるか。
邪悪な心を持つ者に対しては、蛇のような姿を持つ幻覚が現れ、彼らの過去の悪事や内面の闇を映し出す。その幻覚の中で、彼らは自分の罪を直視せざるを得ず、悪事への後悔や改心が促される。
一方、優しい心を持つ者に対しては、ウサギのようなもふもふした姿の幻覚が現れ、彼らの心に秘めた願望や真実を明らかにする。この幻覚の中で、彼らは自分自身や他人への愛情や誠実さを深く感じ、良い行動への意欲が高まるのだ。
このエリクサーは、もちろん俺が作ったものだ。だって、俺の本当の名前は、「錬金術師グレイトニッキー」なのだから。
「わっ、私になにかするつもりですか? いくらビニ公爵家だからといって、私を抹殺するなんてできないはずです! 平民だからって、簡単にやれらたりするもんですか」
私はきっと酷い目に遭わされる。貴族のお城には地下牢があると聞いたことがあるもの。きっと、閉じ込められて拷問されて殺されるのかもしれない。
に、逃げなきゃ・・・・・・。
「抹殺? あのなぁ、ビニ公爵夫人がそんな残酷なことを指示なさるわけないだろう? ただ、この甘いジュースを飲んでくれるだけで良い」
にっこり笑って手渡されたものは、鮮やかなオレンジ色のジュースだ。
「これは毒ですね? 私を暗殺するつもりなんだわ。私はなにもしてない。なにもしてないんですぅーー」
そう言いながら飲むのを拒んで暴れようとしたけれど、無理矢理鼻をつままれ口の中に流し込まれた。
無念・・・・・・きっと私は死ぬのね? くっ、くっるしく・・・・・・ない? むしろ美味しかったし、ふわふわとした良い気分だった。
口の中で果物の風味が広がって楽しい気分になったのも束の間、やがて、巨大な蛇が目前に現れ私をにらみつけ、頭を高く持ち上げながら、次のように命令してきた。
「ソフィ様の部屋でなにを見た? 自分がしたことも含めて全て白状するんだ」
まさに、私は蛇に睨まれた蛙よ。
「レースの部分がほつれていて、首の部分に軽微な裂け目のあるピンクのドレスを見つけました。おそらく、ジョディ様とアーリン様の仕業だと思いました。それから、私はさらにそのドレスを引き裂きました。マリエッタ様に罪をなすりつけ、自分がお気に入りになりたかったのです。ソフィ様の専属メイドになって、華やかな世界で生きたかったんですぅうぅうーー。大蛇様、許してくださいぃぃーー」
蛇が赤い舌をチラチラさせてこちらを睨む様子が、あまりにも怖くて震えも涙も止まらない。気づけば、私はエレガントローズ学院長室で号泣しており、目の前には憤怒に駆られたウィレミナ学院長が立っていた。
「ヘレン。あなたはクビです! ソフィ様のドレスは何年かかっても弁償しなさい」
☆彡 ★彡
私はエレガントローズ学院を追い出されて、裕福だけれどメイドが居着かないと評判のお嬢様のメイドになった。ローズ学院の正式な紹介状を持たない私は、問題を抱えるお屋敷でないと雇ってくれない。
このお嬢様の毎朝のお着替えは一大イベントだった。何度も何度も違うドレスを試して、気に入ったものを選ぶのが日課になっていた。気に入らないとすぐに着替えを命じるから、いつもクローゼットは散らかり放題だ。ドレスの整理と手入れには何時間もかかるし、そんなことばかりしていたら、ドレスが傷んでしまうのも理解してくれない。
お嬢様は食事についても完璧さを求めた。お嬢様のお気に入りのシェフが料理を振舞っても、何かしら文句をつけた。塩の加減や料理の温度、盛りつけの仕方、全部がお嬢様の不満の対象になった。何かちょっとでも気にくわないことがあると、彼女はすぐに機嫌が悪くなる。
ドレスにちょっとしわが寄っただけで、怒り狂い私たちに罰を与えた。最初は軽い叱責や平手打ちだったけれど、最近では鞭を使っての体罰も増えてきた。私たちは恐れおののき、何かを間違えないように祈る日々だ。
私は不安の念に取り囲まれ、自身を小さく縮こませるように過ごしている。少しでもお嬢様の機嫌を損なわないように祈る日々だ。
「ちょっと! ヘレンの不満そうなその目つきが気に入らないわ」
瞬時に勢いよく放たれた平手打ちに、私は打たれると同時に床に倒れ込む。
ソフィ様の専属メイドになりたいなんて思ったのが間違いだった。あんなことさえしなければ・・・・・・私は後悔の涙を何度も流すのだった。
(ニッキー視点)
俺はニッキー。ビニ公爵家の副シェフで、ソフィ様がエレガントローズ学院にいる間だけは、ここのシェフ長になっている。ソフィお嬢様にとびっきり美味しいものを召し上がっていただくことが仕事だが、実はもっと大事な仕事があるんだ。それはソフィお嬢様をお守りすること。危険人物の排除を、ビニ公爵夫人から仰せつかっていた。
さて、ジョディ・スープナ男爵令嬢とアーリン・バサム子爵令嬢にも「エリクサー "Mirror of the Soul"」を飲ませてみるか。
邪悪な心を持つ者に対しては、蛇のような姿を持つ幻覚が現れ、彼らの過去の悪事や内面の闇を映し出す。その幻覚の中で、彼らは自分の罪を直視せざるを得ず、悪事への後悔や改心が促される。
一方、優しい心を持つ者に対しては、ウサギのようなもふもふした姿の幻覚が現れ、彼らの心に秘めた願望や真実を明らかにする。この幻覚の中で、彼らは自分自身や他人への愛情や誠実さを深く感じ、良い行動への意欲が高まるのだ。
このエリクサーは、もちろん俺が作ったものだ。だって、俺の本当の名前は、「錬金術師グレイトニッキー」なのだから。
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