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6 不思議な出来事と新たな男性の登場
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「はい? それはテリーザがスタインフェルド男爵様に申し上げたのですか? それは少し違います。テリーザは自ら私の側にいてノースカット画廊を手伝いたい、と申し出てくれたのですよ」
「私の妻が嘘をついているというのか? 無礼者めっ! お前が楽して子育てをしたいだけだろう? スタインフェルド男爵家のナニーのマヤからは、まるでお前が男爵夫人かのように命令してくると報告を受けている。メイドのアンも、お前がするべき家事を代わりにやらされている、と愚痴っていたぞ。なんて浅ましい女だ」
そうか。テリーザに言い含められている使用人達から、私は悪者にすっかり仕立てあげられていたのね。私の家族もテリーザの夫も、スタインフェルド男爵家の使用人達もすべてが敵に思えた。
私の味方は一人もいない・・・・・・でもそれは違った。
「スタインフェルド男爵閣下。王家の庇護を受けているこのファーガソン画廊において、そのように声を荒げるのは不謹慎でございましょう? ここは才能豊かな画家達が集う憩いの場所です。多くの高名な芸術家達がここから誕生しましたのよ」
「それはわかっている。しかし、このマリアンは芸術家ではない。無能で強欲な私の妻を虐げる女だ!」
にゃぁーー。
子猫の一匹がスタインフェルド男爵に向かって鳴いた。その途端、スタインフェルド男爵が頭からずぶ濡れになる。外は快晴だし、ここは室内だ。なのに、まるでスタインフェルド男爵の頭の上だけ雨が降ったようだった。
「だ、大丈夫ですか? 大変、ずぶ濡れですよ。なにか拭くものを・・・・・・あ、少し大きめのハンカチをちょうど持っておりました。これでお体を拭いてください」
「触るなっ! 無礼者めっ! おまえのハンカチなど使えると思うのか? 身分をもたない低俗な女のくせに、わたしの妻やスタインフェルド男爵家の使用人を顎で使う罰当たりめっ」
にゃぁあぁあーーん!
もう一匹の子猫が鳴いた。すると今度はもっと勢い良く滝のように、水がスタインフェルド男爵の頭上から落ちてきた。
いったい、どうなっているの?
「へっ、へっくしょぉおーーん! なんだこの水は? この画廊は呪われているのか?」
「王室の紋章を飾ることを許されたこの神聖な場所が呪われているですって? スタインフェルド男爵閣下がお帰りですわ。あなた、外までお見送りをしてくださいな」
「あぁ、そうだな。では、スタインフェルド男爵閣下。お帰りいただきましょう。ここはあなた様がいらっしゃるような場所ではありませんよ」
ファーガソン画廊オーナーがスタインフェルド男爵を引きずるようにして連れて行く。ここでは男爵の威光など少しも通用しないようだ。
「なんだとぉ、無礼なっ! いくら王家の保護を受けているからといっても所詮は平民だろう? わたしは男爵家の当主なのだぞ! ちくっしょう! ここは呪われている! 見てみろよ、ずぶ濡れだ」
「なんだ、この騒がしさは? この場が呪われているだと? それは王家をも呪われていると言いたいのか?」
明らかに身分の高い男性の登場に、エバリンさんは満面の笑みを浮かべたのだった。
※スタインフェルド男爵と、この最後に登場した男性のイラストが0話に掲載してあります。よろしければ見てください。
「私の妻が嘘をついているというのか? 無礼者めっ! お前が楽して子育てをしたいだけだろう? スタインフェルド男爵家のナニーのマヤからは、まるでお前が男爵夫人かのように命令してくると報告を受けている。メイドのアンも、お前がするべき家事を代わりにやらされている、と愚痴っていたぞ。なんて浅ましい女だ」
そうか。テリーザに言い含められている使用人達から、私は悪者にすっかり仕立てあげられていたのね。私の家族もテリーザの夫も、スタインフェルド男爵家の使用人達もすべてが敵に思えた。
私の味方は一人もいない・・・・・・でもそれは違った。
「スタインフェルド男爵閣下。王家の庇護を受けているこのファーガソン画廊において、そのように声を荒げるのは不謹慎でございましょう? ここは才能豊かな画家達が集う憩いの場所です。多くの高名な芸術家達がここから誕生しましたのよ」
「それはわかっている。しかし、このマリアンは芸術家ではない。無能で強欲な私の妻を虐げる女だ!」
にゃぁーー。
子猫の一匹がスタインフェルド男爵に向かって鳴いた。その途端、スタインフェルド男爵が頭からずぶ濡れになる。外は快晴だし、ここは室内だ。なのに、まるでスタインフェルド男爵の頭の上だけ雨が降ったようだった。
「だ、大丈夫ですか? 大変、ずぶ濡れですよ。なにか拭くものを・・・・・・あ、少し大きめのハンカチをちょうど持っておりました。これでお体を拭いてください」
「触るなっ! 無礼者めっ! おまえのハンカチなど使えると思うのか? 身分をもたない低俗な女のくせに、わたしの妻やスタインフェルド男爵家の使用人を顎で使う罰当たりめっ」
にゃぁあぁあーーん!
もう一匹の子猫が鳴いた。すると今度はもっと勢い良く滝のように、水がスタインフェルド男爵の頭上から落ちてきた。
いったい、どうなっているの?
「へっ、へっくしょぉおーーん! なんだこの水は? この画廊は呪われているのか?」
「王室の紋章を飾ることを許されたこの神聖な場所が呪われているですって? スタインフェルド男爵閣下がお帰りですわ。あなた、外までお見送りをしてくださいな」
「あぁ、そうだな。では、スタインフェルド男爵閣下。お帰りいただきましょう。ここはあなた様がいらっしゃるような場所ではありませんよ」
ファーガソン画廊オーナーがスタインフェルド男爵を引きずるようにして連れて行く。ここでは男爵の威光など少しも通用しないようだ。
「なんだとぉ、無礼なっ! いくら王家の保護を受けているからといっても所詮は平民だろう? わたしは男爵家の当主なのだぞ! ちくっしょう! ここは呪われている! 見てみろよ、ずぶ濡れだ」
「なんだ、この騒がしさは? この場が呪われているだと? それは王家をも呪われていると言いたいのか?」
明らかに身分の高い男性の登場に、エバリンさんは満面の笑みを浮かべたのだった。
※スタインフェルド男爵と、この最後に登場した男性のイラストが0話に掲載してあります。よろしければ見てください。
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