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5 テリーザに騙されているスタインフェルド男爵

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 王都でも長い歴史と伝統を誇るファーガソン画廊。ここに展示されるのは一流の画家の絵画だけだ。そのようなところに自分の作品を持ち込むなんて無謀だと思った。

 けれど、実家から戻った翌日になにもかも嫌になり、気づいたらこのような大胆なことをしていた。ダメで元々なのだから、どんなに笑われても蔑まれても耐える気でいた。ところが私にかけられた言葉は、もっと作品を描いて欲しいという信じられない提案だった。

 画廊オーナーの奥様に奥の応接室に案内されると、三匹の子猫がちょこんとソファに座りこちらを見ていた。

「この子達はラグドールの子猫ですよ。このファーガソン画廊のアイドルですわね。人間が大好きですぐに遊んでほしいとねだってきますから気をつけて。わたしのことはエバと呼んでくださいね」

 朗らかに笑いながらそうおっしゃったオーナーの奥様はとても気さくな方だった。子猫達はどれも可愛くてホワイトをベースに耳や顔周り、手足、しっぽにブルーグレーのポイントが入っていた。いわゆるブルーポイントと言われるかなり高価な猫達よ。

「可愛いし素敵な猫ですわ。本当に綺麗」

「そうでしょう? 大事にしてくださるなら喜んでお譲りしますよ。猫や犬は傷ついた心を知らぬ間に治してくれますからね」

「飼いたいですが夫が動物嫌いなのです。それに妹が猫アレルギーで・・・・・・」

「動物嫌いと猫アレルギー? まぁ、なんてことかしら。猫がいるだけで人生が三倍は楽しくなるのにねぇ」
 エバリンさんはそう言いながら苦笑した。

「わたしも妻が猫アレルギーだから猫が飼えない。画廊の方のベルを鳴らしたのに反応がないから、こちらに勝手に来させてもらったよ」
 
 いらついたような声に心がざわめき顔をあげると、まさかのスタインフェルド男爵が私を睨み付けていた。

「あのベルは壊れていましてね。明日にでも修理の者が来ますのよ。それにしても、スタインフェルド男爵がこちらにいらっしゃるなんて珍しいですわね。どういったご用件でしょうか?」

 流石は王都いち格式のある画廊のオーナー夫人だ。スタインフェルド男爵に迷惑そうな口ぶりで話しかけた。

「スタインフェルド男爵がお戻りになるのは来月だとテリーザから聞いていたのに・・・・・・」

 私は思わず心の声を漏らす。

「さきほど、マリアンさんがこちらに入るところを見たので、出てくるところを待っていたのだ。ところがなかなか姿を現さないのでこうしてやって来たというわけさ」

「私がなにかお気にさわることをしたのでしょうか?」

「テリーザが側にいないとなにもできないそうだな。本当にしっかりしてくれないか? テリーザの優しさにつけ込みすぎだ。毎日のように妹を呼びつけて仕事を手伝わせるなんて傲慢な女だなっ! 身の程知らずめっ」

 私はとんでもないいいがかりをつけられたのだった。




※猫のAIイラストを0話に掲載しています。見たい方だけどうぞぉーー。
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