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17  日向視点  (最終話)

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私は、裕太の実家に車を走らせている。暖かな陽気で、車に差し込む陽射しは、かなりきつい。

日焼け止めを塗っておけばよかった。最近、シミとかソバカスが気になるお年頃なのよね。

今日は、なんの曲を聴きながら鎌倉まで走ろうかな。最近のお気に入りは、”デミ・ロヴァートのStone Cold”だ。
 
「やだ、でも、これって、失恋の歌じゃん・・・私は、やっぱり、裕太のことが気にかかっているってことよね・・・」

私は、皮肉な笑みを浮かべて、車を走らせた。


*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚


私は、裕太の両親の家で、なにをしているの? なぜか、とても大歓迎を受けて・・・裕太のお母さんから抱きつかれたのだ。

「あの・・・裕太さんは、アメリカに行くんですよね?」

裕太のお母さんは、黙っている。悲しそうな顔で首を横に振って言った言葉は、

「アメリカには行かないけれど、遠いところに行くでしょうね。もう、長くは生きられないのよ」

は? なんの冗談なの? これって・・・嘘よね・・・

癌治療センターで働いているんじゃなくて、入院していたんだ・・・じゃぁ、あの可愛い子は・・・

私は、裕太の実家のリビングルームに飾ってある家族写真の一枚に、あの可愛い子が写っているのを見つけた。

「あの、この可愛い子って・・・」

「あぁ、それは裕太の従姉妹よ。来月、結婚するのよ。裕太のことを兄のように慕ってる子でね・・・」

従姉妹かい・・・まぁ、従姉妹とでも結婚はできるけれど、この子にはすでに婚約者がいて、来月に結婚するとなれば・・・浮気相手じゃないわな・・・





*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚




私は帰りの車の中で、また”Stone Cold"を聴く。この歌詞の通りに、他の女がいてくれた方がよっぽど良かった。

ただ、歌詞の一部に『本当のことが知りたい。私と私の心はきっとその真実を受け入れるだろうから』というのがあった。

ここには、とても共感して、めちゃくちゃ泣けた。マンションに戻ると、瑛太がいて、私の青ざめた顔色を見て抱きしめた。瑛太は、本当に勘が鋭い。

「行ってこいよ。俺、待ってるよ。裕太さんのこと、気がついたんだろ? ほら、俺は、まだ若いからさ、10年は待てるよ・・・もし奇跡的に裕太さんが、もっと長生きできたら、もちろんその方がいいんだけどさ・・・大丈夫だよ・・・裕太さんを選んだ日向を責めたりしないさ」



*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚




あれから、何度目かの夏が巡り、私は裕太の名前を呼ぶ。

「裕太。おいで、綺麗な海ねぇーー。ほら、ママの手を離さないで」

私は、幼い裕太と浜辺を笑いながら駆けている。裕太は、はしゃぎながら、瑛太に抱きついた。

私は、裕太を看取り、その半年後に瑛太と結婚した。私達の子供には”裕太”と名づけた。

この名前は、瑛太が言いだしたのだ。

「どうせ、裕太さんは一生、日向さんの心のなかで生き続けるなら、俺達の息子で上書きしよう。裕太さんは、俺たちの一番大事な人になるんだ」

「え? 嫌じゃないの? 他の男の名前を息子につけるなんて?」

私は、びっくりして聞いたのよ。そうしたら、瑛太は私にこう言ったわ。

「日向さんの過去の男もひっくるめて、俺は引き受けるよ。できる男って、そういうもんだろう? 裕太は、医者にしよう。裕太さんができなかったことを、俺達が叶えてやろうよ! あとは、もう二人子供が欲しいな。みんなで、仲良く暮せばきっと、天国の裕太さんも喜んでくれる・・・」




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