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9 探偵ごっこ その2

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裕太の車は、国産車でも、もちろん高級な車だ。私は、裕太の車の底の下にGPSを付けて、様子を観察した。

1日目、裕太の車は普通に勤務地の日青病院に行って、そのまま帰ってくる。次の日も、その次の日も変らない。

拍子抜けしていると、週末に待ってました、の言葉が出てきた。

「今日は、デートなんだよ」

裕太が朝から、コロンをたっぷり振って、アイスブルーのシャツに白いチノパンを履いていた。あのワックスで固めたようなツンツンの頭を触りまくって崩したい衝動をぐっとこらえて、私は裕太を褒めた。

「すごいわよ? なんていうか、すごい若作り?」

うん、これは褒めてないな。ちょっと、失敗したわ・・・・・・

私が仕事に行こうとすると裕太は、少しだけ私を見て微笑んだ。

「行ってくるよ。今日は、帰らないかもしれない」

「了解」

そうよね。どこか、夜景の綺麗なホテルにでも行って、彼女とお泊まりするのだろう。

私は、裕太のGPSを気にしながらお客様に物件案内をしていた。

どこに行くのか、わくわくしていた。やはり、車はお台場のあたりをまわって、きっとおしゃれなシティホテルに・・・・・・と思っていた。

けれど、車は、鎌倉に向かっている。・・・・・・まぁね、鎌倉もデートスポットだしね・・・・・・けれど、車が停車した位置関係を確認して、思わず声が漏れた。

ここって、裕太の実家? 間違いない・・・・・・しばらく、考えて、結論が浮かんだ。


あぁ、これは彼女を両親に紹介するつもりなんだわ。納得だ・・・・・・私も、一度だけ、同棲する前にお邪魔したことがあった。綺麗なお母さんと恰幅の良いお父さんだった。

一緒に行っているのは、多分あの『なおみ』なのだろうな。

裕太の車は次の日の夕方まで、ずっと実家から移動していなかった。

ずいぶん動きが悪いわねぇーーあぁ、もしかして、実家のお母さんと『なおみ』が気が合いすぎて、嫁姑ごっこで盛り上がっているのかも。

あぁ、凹む。やっぱり、女心はそう簡単に切り替えられない。裕太のことは、もう諦めたし憎いとさえ思うけれど、こんな状況を突きつけられると、やはり心臓がギュっと痛む。

キュンではないわよ? こう、なんて言うのかなぁーー? うん、語彙力なくて、自分の脳内で爆死しそう・・・・・・だけれど、わかりやすく言えば傷ついたの一言なんだよ・・・・・・

そんなに・・・・・・そんなに・・・・・・私は結婚する価値がない女なの?・・・・・・いかん、いかん。

暗くなってはいけない・・・・・・今日は、美味しい物でも作って家でお酒でも飲むか・・・・・・

そんなことを思っていると裕太から電話がかかってきた。

「日向、今日は美味しいものでも食いに行こうか。奢るからさ。お前が、ずっと行きたがっていたレストランを予約したから!」

一方的に言われて、電話が切られた。

何で、今更、そんなとこに連れて行こうとするのよ? 私の頭は、疑問符でいっぱいだった。







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