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1 浮気がわかった瞬間

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 3年間、同棲している裕太は、控えめに言ってもいい線いってる男だ。背は高いし、顔立ちは整っていておまけに医者だ。大病院の勤務医だけれど、小児科の医者で小さい子供をもつママさん達にとても人気があると聞いたことがある。

 ふん、だからなんなのよ?と思っていた。だって、私だってモテるのだから。私は大手の不動産屋で勤務しているいわゆる”物件を売りまくるトップセールスウーマン”だ。主に、億ションなどを売っている私にとっては医者だろうがなんだろうが崇拝する気持ちはない。稼げる美女な私には怖いものなんて、なんにもないわよ!

 そう思っていたのは、実はさっきまでだ。私は、ついさっきよ。見ちゃったのよ! 裕太の携帯を。いや、見る気はなかった。誓ってもいい。裕太が悪いのよ。

 珍しく飲み会で酔って帰って来た裕太は玄関先で伸びていた。携帯は床に転がったままで、ラインの画面が開きっぱなしだった。

「こないだは楽しかったね! また会いたいな💗 愛してる」

 これは、絶対浮気でしょ? 💗なんて、同僚の間では普通は使わないじゃない? なんてことなの!

 私は、今までの裕太に対する自分の言動を思い起こしてみた。そして、その結論は浮気されても当たり前かも・・・・・・だった。


 まずは、お掃除。これは、分担制だった。共働きだからいいよね? と思っていたけれど・・・・・・トイレ掃除は私がさぼってほとんど裕太がやっている・・・・・・お風呂掃除も・・・・・・やばいぞ、私。

 お料理、ほぼ、スーパーのお惣菜・・・・・・やばいぞ、私。

 お洗濯、こないだ、さぼって、裕太に私のパンツを干させてた。

 お買い物も、裕太に任せて私は先日の休日はなにをしていたっけ?あぁ、顧客訪問とポスティングだ。

 私は、家を購入しようとしている顧客のリストを常に定期的に訪問して回っている。物件情報を常に提供し、こまめに顔を出すことでお客の懐に入り込み、”買うならあいつから買ってやるか”と思わせることが重要なのだ。お金持ちほどこの人情論は通用する。難しいのはより安く買おうとする連中。こいつらは、ネットでもばんばん物件を検索し勉強もそこそこしているから、小手先の営業トークじゃ売れない。

 あ、話が逸れたわ・・・・・・とにかく、だ。裕太を責める前にまず自分が反省してみた。そして、私は明日から生まれ変わる。裕太のために・・・・・・

 裕太をなんとかベッドまで連れていき、横にさせて水を飲ませようとした私に裕太が呟いた。

「なおみさん・・・・・・」

 ちなみに、私の名前は日向ですよ。ひ、な、た。あかんわ・・・・・・でもちょっと頑張ってみますよ。
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