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おまけ  (それぞれの末路)その1

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*:゚+。.☆妹とその夫の末路(妹視点)

私と夫が、牢屋に入れられている間に、両親は私を除籍した。犯罪者はいらないと、家族の縁を切られたのだ。

姉に嫉妬して、夫と謀り姉の部屋に火を放った大罪人。さらに、夫は劇薬までかけようとした。本来なら死罪だが、お姉様の温情により命まではとられなかった。平民に落ちて、自由に生きて良いと言われた。

私達は最初はこの甘い処分に、心のなかで舌を出していた。ところが・・・・・・部屋を借りようとすると、どこに行っても断られた。

私達の顔と名前と行った犯罪は、各所に立て札やポスターが貼られて、まんべんなく知れ渡っていたのだ。

「あんた達には貸せないよ! また、火でも付けられたら困るからね」

住むところも見つけられなかった私達は路上生活者になるしかなかった。しかも、働こうとしても、どこも雇ってくれるところはない。

「ここでは働けないよ! 嫉妬で実の姉を殺そうとしたんだろう? そんな危険な奴はごめんだね」

冷たく言われて、追い返されるのだった。

飲食店の残飯をあさって生きるしかなくなった私達は、段ボールで作った家で、文句を言い合いながら暮らした。

そのうち、体調不良を理由に王が退位し、ネイサン・カーター公爵が王になった。

お姉様は王妃、私は乞食だ。

酷い・・・・・・なんて世の中は不公平なんだろう・・・・・・


*:゚+。.☆妹とその夫の末路(夫視点)

私は、あの夢のように美しいエリザベスに恋い焦がれていた。だから、王太子妃になると聞いて、憎悪した。

何度も、エリザベスに誘いをかけたが、軽蔑の眼差しを向けられるだけだった。酷いよ! 少しぐらい振り向いてくれてもいいじゃないか! お高くとまりやがって!

だから、エリザベスの部屋に火をつけてやったのさ。酷い火傷でもして二度と人前に出られないくらい醜くなればいいと思った。私のものにならないエリザベスがいけないんだ!

頬に火傷を負って、醜くなった時には最高に嬉しかった。が、ネイサン・カーター公爵と結婚するなんて反則だろう? あの麗しいうえに、王の弟で、絶大な人気と権力を誇るネイサン様の妻だと?
あり得ないよ! おまけに、懐妊したなんて聞いて・・・・・・薬剤をかけてやろうと思った。 でも、失敗したんだ。

殺人未遂犯になった私は妻と路上生活者になり・・・・・・今や、エリザベスは王妃となっている。王は病気のために退位し、新しく王になったネイサン様は国民から大歓迎された。

絶大な支持を誇る王と王妃は、仲睦まじく愛し合っていると聞く。忌々しいし、自分だけが損をしている気分になった。

ブツブツと文句を言いながら、私は今日も、下を見ながら道を歩く。

あ、見つけた! 銅貨がひとつ落ちていた。拾い上げてポケットにしまう。

夜は青空広場の横の飲食店で残飯をもらおう。

あぁ、銅貨じゃなくて銀貨が落ちてないかな。私は、落ちている小銭を集めてはポケットにしまう。

すると、後ろから大男が私の肩をぐっと掴んだ。

「おい、その金をよこせよ!」

みぞおちを殴られて、気がついたら拾った小銭は全部盗られ、上着と靴までなくなっていたのだった。 

こんなことは日常茶飯事だった。これが、今の私の生活だ・・・・・・


*:゚+。.☆元王の末路(王視点)


ある日、弟は爽やかな笑顔を浮かべて私に言った。

「兄上。この間の検診でお体の疾患が見つかったようです。一ヶ月ほど、静養したほうがいいです。田舎に別荘を用意しましたので移動なさってください」

なんの疑いもなく受け入れた。そして、あれからずっとこの田舎の別荘で軟禁され監視されている。ネイサンは王になり、私は妃と愛妾達とこの田舎に閉じ込められた。

「王の激務は兄上の命を縮めますから、これ以降は私が代わりにやりましょう」

そう言われれば、頷くしかなかった。確かに、健康は大事だからな。長生きもしたいしな。

もともと政治のほとんどは、ネイサンと宰相が相談してやっていたし、騎士団はネイサンが指揮していた。

考えたら、王でいた時も今と、なにも変らない。

あぁ、変わったのは女どもだな。あいつらは、次々と去っていった。

「王様でなくなったおじさんに、なんの興味もありませんわ!」

若い愛妾は、そう言いながら一番に出ていったし、他の愛妾達も私の悪口をいいながら出て行った。

「王様でなくなったら、ただの性格悪いじじぃじゃないの? そんなのに尽くすなんてもう無理!」

「今まで散々、私達のことをペットみたいに扱ってきたんだから、棄てられて当然よね」



うるさいわ! 不細工どもが! まぁ、いいさ、私にはローガンを産んだ王妃がいる。

「王妃よ。あぁ、今では元が付くが・・・・・・まぁ、仲良くやっていこう。私らも、いい歳だしなぁーー今後はお前だけを大事にしようと思う」

「はぁ? 私は、明日にはここを去りますよ。貴方と余生なんてごめんですわ。隣国の公爵に嫁いだ娘のアンジェラの屋敷に行きますわ。言っておきますが、アンジェラは貴方には来て欲しくないそうです!」

最後までいるのは、犬か・・・・・・大型犬を3年ほどまえから、飼っていた。

「友よ・・・・・・うん、犬は最高の友だよな。文句も言わないし、いうことも聞いてくれるだろう?」

私は、その犬に腕を回して柔らかい毛に顔を埋めた。その途端に腕に激痛がはしった。私は犬に噛まれてその痛さに顔を歪めた。

側近が私に、嘲るように、こう言ったのだった。

「誰一人として大事にしてこなかった人間の最期なんてこんなもんです」

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