27 / 33
26-1 アナスターシアの発明
しおりを挟む
「やったわ! やっとドラゴニウムが繊維化できた! ずいぶん時間がかかってしまったけど、これでカラハン様は安全ね」
アナスターシアは研究室で喜びの声をあげた。長年、マッキンタイヤー公爵領の錬金術士もまじえて多くの実験を行った成果が、カッシング侯爵邸の研究室で実を結んだのだ。その性能は素晴らしく、研ぎ澄まされた刃も槍も突き通すことはできない。
(拳銃はここにはないから試せないけど、その威力も想定して研究したわ。多分大丈夫なはず。これなら軽くて薄いし誰にもばれないわね。そうだ、私の下着もこれで作ろう。とにかく目標は長生き、長生き。伯父様にも贈らなくっちゃ)
☆彡 ★彡
こちらはカラハン第一王子が暮らすエメラルド城である。
「カラハン殿下。アナスターシア様から届け物ですよ。すごく軽い包みですが、なにが入っているのでしょう?」
ジュードは金のリボンが結ばれた包みをカラハン第一王子に差し出した。カラハン第一王子は丁寧にその包みを開く。中からはきらきらと銀色に輝くなめらかな生地が現れた。そこには手紙も同封されていた。
カラハン様へ
やっとドラゴニウムの繊維化に成功しました。服の下に着る物をこの生地で仕立ててください。剣や槍、弓矢もこの生地を突き破ることはできません。いつも、身につけてくださいませ。
カラハン様の安全を誰よりも願うアナスターシアより
手紙の内容を横目で盗み見たジュードは思わずニンマリした。
「カラハン殿下、相変わらず熱烈に愛されていますねぇーー。あんな美人にこれほど大事にされるのはどんな気分ですか?」
「それは、もちろん天にも昇る気持ちだ。だが、ジュードはアナスターシアの容姿ばかりを褒めるが間違っているぞ。一番素晴らしいのはあの性格だ。優しくて可愛くて健気で努力家で、子供や動物をこよなく愛し、使用人にも気さくでとても大事にしている。領民に対する思いやりも素晴らしい。天使だ、女神だ、この世で最高の女性だよ」
「はいはい。ストップ。そこまでです。アナスターシア様の長所をあげだすと、カラハン殿下はとまりませんからね。それと残念ですが、今日はアナスターシア様には会いにいけません。公務でぎっしりですし、外交使節団の迎接もあります」
「嘘だろう? アナスターシアには毎日会いたいのに」
「いや、いくらカッシング侯爵邸が近いとはいっても、さすがに会いすぎですよ。少しは寂しい思いをさせて、殿下を恋しいと思わせなくてはいけません。妹が言っていました。『会えなければ会えないほど愛おしさは募る』と」
「そうなのか? だったら、私もそうするべきだろうか? だが、三日が限界だな。稽古もあるし、アナスターシアが用意してくれた食事も食べたいし、なにより私がアナスターシアロスで死んだらどうする? 危険だ、極めて危険、危険」
カラハン第一王子の側近たちは呆れながらも、これほど主が愛せる女性を見つけられたことを喜んだのだった。
୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧
宣伝※次回27話は、デビュタント&婚約発表です。字数が多めで夕方六時に更新です。28話は再び、ハーランド王子登場。そして、29話は二回目のローズリンのざまぁになります。ローズリンのざまぁは、三回用意しておりますので、最後までお読みいただけると嬉しいです🙇🏻♀️
最終話まで朝6時、夕方18時の更新です。一応31話あたりで最終話の予定です。一話ごとの字数にばらつきがあり、申し訳ないです💦
アナスターシアは研究室で喜びの声をあげた。長年、マッキンタイヤー公爵領の錬金術士もまじえて多くの実験を行った成果が、カッシング侯爵邸の研究室で実を結んだのだ。その性能は素晴らしく、研ぎ澄まされた刃も槍も突き通すことはできない。
(拳銃はここにはないから試せないけど、その威力も想定して研究したわ。多分大丈夫なはず。これなら軽くて薄いし誰にもばれないわね。そうだ、私の下着もこれで作ろう。とにかく目標は長生き、長生き。伯父様にも贈らなくっちゃ)
☆彡 ★彡
こちらはカラハン第一王子が暮らすエメラルド城である。
「カラハン殿下。アナスターシア様から届け物ですよ。すごく軽い包みですが、なにが入っているのでしょう?」
ジュードは金のリボンが結ばれた包みをカラハン第一王子に差し出した。カラハン第一王子は丁寧にその包みを開く。中からはきらきらと銀色に輝くなめらかな生地が現れた。そこには手紙も同封されていた。
カラハン様へ
やっとドラゴニウムの繊維化に成功しました。服の下に着る物をこの生地で仕立ててください。剣や槍、弓矢もこの生地を突き破ることはできません。いつも、身につけてくださいませ。
カラハン様の安全を誰よりも願うアナスターシアより
手紙の内容を横目で盗み見たジュードは思わずニンマリした。
「カラハン殿下、相変わらず熱烈に愛されていますねぇーー。あんな美人にこれほど大事にされるのはどんな気分ですか?」
「それは、もちろん天にも昇る気持ちだ。だが、ジュードはアナスターシアの容姿ばかりを褒めるが間違っているぞ。一番素晴らしいのはあの性格だ。優しくて可愛くて健気で努力家で、子供や動物をこよなく愛し、使用人にも気さくでとても大事にしている。領民に対する思いやりも素晴らしい。天使だ、女神だ、この世で最高の女性だよ」
「はいはい。ストップ。そこまでです。アナスターシア様の長所をあげだすと、カラハン殿下はとまりませんからね。それと残念ですが、今日はアナスターシア様には会いにいけません。公務でぎっしりですし、外交使節団の迎接もあります」
「嘘だろう? アナスターシアには毎日会いたいのに」
「いや、いくらカッシング侯爵邸が近いとはいっても、さすがに会いすぎですよ。少しは寂しい思いをさせて、殿下を恋しいと思わせなくてはいけません。妹が言っていました。『会えなければ会えないほど愛おしさは募る』と」
「そうなのか? だったら、私もそうするべきだろうか? だが、三日が限界だな。稽古もあるし、アナスターシアが用意してくれた食事も食べたいし、なにより私がアナスターシアロスで死んだらどうする? 危険だ、極めて危険、危険」
カラハン第一王子の側近たちは呆れながらも、これほど主が愛せる女性を見つけられたことを喜んだのだった。
୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧
宣伝※次回27話は、デビュタント&婚約発表です。字数が多めで夕方六時に更新です。28話は再び、ハーランド王子登場。そして、29話は二回目のローズリンのざまぁになります。ローズリンのざまぁは、三回用意しておりますので、最後までお読みいただけると嬉しいです🙇🏻♀️
最終話まで朝6時、夕方18時の更新です。一応31話あたりで最終話の予定です。一話ごとの字数にばらつきがあり、申し訳ないです💦
1,673
お気に入りに追加
2,984
あなたにおすすめの小説
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
公爵夫人は愛されている事に気が付かない
山葵
恋愛
「あら?侯爵夫人ご覧になって…」
「あれはクライマス公爵…いつ見ても惚れ惚れしてしまいますわねぇ~♡」
「本当に女性が見ても羨ましいくらいの美形ですわねぇ~♡…それなのに…」
「本当にクライマス公爵が可哀想でならないわ…いくら王命だからと言ってもねぇ…」
社交パーティーに参加すれば、いつも聞こえてくる私への陰口…。
貴女達が言わなくても、私が1番、分かっている。
夫の隣に私は相応しくないのだと…。
【完結】勘違いしないでくれ!君は(仮)だから。
山葵
恋愛
「父上が婚約者を決めると言うから、咄嗟にクリスと結婚したい!と言ったんだ。ああ勘違いしないでくれ!君は(仮)だ。(仮)の婚約者だから本気にしないでくれ。学園を卒業するまでには僕は愛する人を見付けるつもりだよ」
そう笑顔で私に言ったのは第5王子のフィリップ様だ。
末っ子なので兄王子4人と姉王女に可愛がられ甘えん坊の駄目王子に育った。
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~
みなと
ファンタジー
目が覚めた私は、ぼんやりする頭で考えた。
生まれた息子は乳母と義母、父親である夫には懐いている。私のことは、無関心。むしろ馬鹿にする対象でしかない。
夫は、私の実家の資産にしか興味は無い。
なら、私は何に興味を持てばいいのかしら。
きっと、私が生きているのが邪魔な人がいるんでしょうね。
お生憎様、死んでやるつもりなんてないの。
やっと、私は『私』をやり直せる。
死の淵から舞い戻った私は、遅ればせながら『自分』をやり直して楽しく生きていきましょう。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる