上 下
13 / 33

12 壮麗なマッキンタイヤー公爵邸

しおりを挟む
 マッキンタイヤー公爵邸は、広大な敷地にそびえ立つ壮麗な建築物である。邸宅の入り口には、高くそびえる鉄製の門があり、繊細な装飾が施された門扉には初代ユーフェミア王女を象徴する百合の紋章が刻まれていた。門をくぐると、美しく整えられた庭園が広がり、四季折々の花々が咲き乱れる。

 庭園を抜けると、白い大理石で造られた壮大な邸宅が目に入る。正面には広々とした大階段があり、邸宅の外壁は精緻な彫刻が施されていた。窓には色とりどりのステンドグラスがはめ込まれている。それは、初代ユーフェミア王女の聖女としての奇跡を描いたもので、光が差し込むと虹色の光が七色に反射した。

 アナスターシアは、初めてマッキンタイヤー公爵邸を訪れた。そして、その美しさにすっかり目を奪われた。邸内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのはエントランスホール(玄関を入ってすぐの広い空間)である。  ホールの床は美しいモザイク模様の大理石で天井は高く、精巧なフレスコ画が描かれていた。中央には巨大なシャンデリアが吊るされており、その無数のクリスタルが煌めく光を放つ。ホールの四方には大理石の柱が立ち並び、優雅なアーチが天井を支えていた。

 ホールの奥には広々としたサロンがあり、ここでは公爵家の招待客が優雅なひとときを過ごすことができる。サロンの家具はすべて高級な素材で作られ、特に目を引くのは、ベルベットで覆われた豪華なソファと、黄金の刺繍が施されたカーテンである。壁には美しい絵画が飾られており、初代ユーフェミア王女の姿を描いた肖像画が中央に掲げられていた。

 さらに奥へ進むと、広大なダイニングルームがあり、その中央には巨大なテーブルが置かれていた。ダイニングルームの窓からは、噴水のある庭園が一望でき、その景色はまるで絵画のように美しかった。

 マッキンタイヤー公爵邸は、豊かな領地からの莫大な収益によって維持され、その豪華さと優雅さは訪れるすべての人々に感銘を与えるものだった。ここは初代ユーフェミア王女の聖女としての名声と、現在の将軍である公爵の力を象徴する、まさに王国随一の壮麗な邸宅なのであった。

 邸宅の上階のマッキンタイヤー公爵の部屋の隣には、アナスターシアの部屋がすでに用意されていた。そこは広々とした部屋で天井からは繊細なシャンデリアが煌めき、窓から差し込む自然光は絹のカーテンに反射して室内を温かく包み込む。
 壁には淡いパステルカラーが施され、繊細な花柄のレリーフが美しく浮かび上がっていた。床にはふかふかのカーペットが敷かれ、中央には優雅なデザインの四柱ベッドが鎮座している。ベッドにはシルクのシーツが掛けられ、ふんわりとした羽毛布団が上品なカバーに包まれていた。
 部屋の一角には、白く塗られた優美なドレッサーが置かれており、ドレッサーの上には、香水瓶やブラシ、宝石箱などが整然と並んでいた。
 また、窓際には柔らかなクッションが置かれたカウチがあり、アナスターシアが庭の景色を眺めながら寛げるようになっていた。

「伯父様、このように素晴らしいお部屋を用意してくださってありがとうございます」
「可愛いアナスターシアのためだ。当然のことさ。ところで、本を読みたかったら離れに図書室があるから、自由に入って構わない。バイオレッタはよく難しい本を読みふけり、私に愚痴をこぼしていたぞ。『なぜ、女性は学者になれないのですか? 私は天文学者になりたいのに』ってな」
「天文学者ですって? お母様からそんな話は聞いた覚えがありません。でも、本がお好きでよく読まれていたのを覚えています。私は天文学者になるより、将軍になりたいです。私が男だったら良かったのに」
「諦めるのはまだ早いぞ。未だかつて女性の将軍はいなかったが、最近は女性騎士が増えている。頑張れば、歴史上で最初の女性将軍になれるかもしれない」

 今のアナスターシアには身につけたいと願う能力がたくさんあった。それはたった一つの目標のためにとても必要なものだった。『長生き』これがアナスターシアの最大の目標だったのだ。

 ハーランド第二王子と関わらないようにして18歳で殺されないこと、これこそが一番大事なことだ。だから、アナスターシアは強くならねばならないし、多くの知識を詰め込み防御力をあげなければならないと決心したのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

公爵夫人は愛されている事に気が付かない

山葵
恋愛
「あら?侯爵夫人ご覧になって…」 「あれはクライマス公爵…いつ見ても惚れ惚れしてしまいますわねぇ~♡」 「本当に女性が見ても羨ましいくらいの美形ですわねぇ~♡…それなのに…」 「本当にクライマス公爵が可哀想でならないわ…いくら王命だからと言ってもねぇ…」 社交パーティーに参加すれば、いつも聞こえてくる私への陰口…。 貴女達が言わなくても、私が1番、分かっている。 夫の隣に私は相応しくないのだと…。

結婚式後に「爵位を継いだら直ぐに離婚する。お前とは寝室は共にしない!」と宣言されました

山葵
恋愛
結婚式が終わり、披露宴が始まる前に夫になったブランドから「これで父上の命令は守った。だが、これからは俺の好きにさせて貰う。お前とは寝室を共にする事はない。俺には愛する女がいるんだ。父上から早く爵位を譲って貰い、お前とは離婚する。お前もそのつもりでいてくれ」 確かに私達の結婚は政略結婚。 2人の間に恋愛感情は無いけれど、ブランド様に嫁ぐいじょう夫婦として寄り添い共に頑張って行ければと思っていたが…その必要も無い様だ。 ならば私も好きにさせて貰おう!!

【完結】勘違いしないでくれ!君は(仮)だから。

山葵
恋愛
「父上が婚約者を決めると言うから、咄嗟にクリスと結婚したい!と言ったんだ。ああ勘違いしないでくれ!君は(仮)だ。(仮)の婚約者だから本気にしないでくれ。学園を卒業するまでには僕は愛する人を見付けるつもりだよ」 そう笑顔で私に言ったのは第5王子のフィリップ様だ。 末っ子なので兄王子4人と姉王女に可愛がられ甘えん坊の駄目王子に育った。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完結】陛下、花園のために私と離縁なさるのですね?

ファンタジー
ルスダン王国の王、ギルバートは今日も執務を妻である王妃に押し付け後宮へと足繁く通う。ご自慢の後宮には3人の側室がいてギルバートは美しくて愛らしい彼女たちにのめり込んでいった。 世継ぎとなる子供たちも生まれ、あとは彼女たちと後宮でのんびり過ごそう。だがある日うるさい妻は後宮を取り壊すと言い出した。ならばいっそ、お前がいなくなれば……。 ざまぁ必須、微ファンタジーです。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!

山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」 夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。

処理中です...