（本編完結、番外編は随時更新）夫に子供ができました

番外編

２ 桜とウナギのひつまぶし

　ここは東洋の国で目の前にあるお城は、私達がよく見慣れたお城とはかなり趣が違う。そのお城を引き立てているのは桜と呼ばれる花だ。淡いピンクでほとんど白に近いかもしれない色は上品で圧倒的美しさを誇る。

　濃いピンクのしだれ桜とよばれるものも、通常の桜とは違いとても見事で見とれてしまう。どちらも素敵で違った良さがあるのだ。

「夜桜って素敵。夜に見る花は幻想的ですね」

　こうしてゆっくりと楽しむアンセル様との夜のお散歩も良いものね。小さな花がたくさん集まって咲く桜は、大輪の薔薇とは違ってまた別な美しさがあった。

　まるで、桜の木いっぱいに咲いた花たちが、「ほら、見てちょうだい！　私達の姿を目に焼き付けて！　今が１番綺麗なのよ」と、言っているようなのだ。

「桜の花の精が、私に一斉に話しかけています。『私の綺麗な姿を忘れないで！』と言っているのです」

「あっははは。素敵なことをおっしゃいますね？　うん、確かに『来年も見にきてね』と、わたしにも言いましたよ。花の精は毎年見に来てほしいらしい」

「ふふふ、また、是非来たいです」

「いいですよ。来年も再来年も一緒にこうして桜の下を歩きましょうね」

　アンセル様はにっこりと微笑む。

（はぁーー、幸せ）










「ところで、お腹が空きませんか？　こちらはね、ウナギという魚がとても旨いらしいです。夕食はそれにしてみましょう。お魚は大丈夫ですか？」

「えぇ、もちろん。なんでも好き嫌いなく食べられますから、ご心配なく」

　あまり広くはない敷地を二人で桜の下を歩く。気候も穏やかで寒くも暑くもない。最高の夜のお散歩になった。








　さて、私達は鰻屋さんに到着。

「これが鰻･･････いただきます」

　一口食べると甘しょっぱい味に、カリッと焼き上げた魚の香ばしさが口の中に広がった。

「あら、ちっとも生臭くないですわ。この白いつぶつぶが米なのですね？　美味しいです。この魚との相性は抜群ですね」

「うん、これはパンでは合わないでしょう。お酒も頼みましょうか？　こちらは地酒があるようですよ」

「まぁ、飲みたいですわ。ありがとうございます」

　白く透き通ったお酒は、人肌に暖めて飲むと美味しくて、いくらでも飲めそうだった。




　この”ひつまぶし”という食べ物、まずはそのまま食べてみる。それから山椒という香辛料を振る。ピリッとした味が広がって魚のうま味を引き立てる。

　次はゆず胡椒を上に乗せて、また一風変わった美味しさのハーモニーが口の中で調和しあう！　この爽やかなゆずってなに？　胡椒はブラックペッパーなの？　よくわからないけれど、とにかく私の好みにぴったり。

　最後はネギを入れ、おだしをかけて最後の一口まで飽きることなく完食。

（はぁーー、満足！）

「なんて賢い食べ方なのでしょう。幾通りものお味が広がります」

　私は感嘆の声をあげる。

「本当に、素晴らしい食べ物ですね？　この山椒という香辛料が良いアクセントです」

「ゆず胡椒も美味しいです。なんともいえない風味で後味が爽やかです」

「鰻だけでもこのように幾通りもの食べ方を生み出したこの国はとてもすばらしいですね」

　私達は東洋の国の桜とウナギひつまぶしを心ゆくまで堪能したのだった。




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※この小説のイメージの元になった場所です。参考までに。作者撮影、長野県にて。

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いや、なんていうか、鰻食べたくなったから書きました。😆😁