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4-1 (ライモンド・パッチーニ男爵視点)

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(ライモンド・パッチーニ男爵視点)

 ヴァネッサの産んだ息子は天才だった。この世界でもっとも難関とされるプリンチピーニ学園に軽く合格し、どの学科でも2位を遠く引き離しトップを独走する優秀さだ。剣術も天賦の才があり、容姿もわたしの息子とは思えないほど美しい。

 これほどの素晴らしい長所がいくつも備わったアルフィオを、アーグイピン帝国の皇帝が見逃すはずもない。プリンチピーニ学園きっての天才を囲い込もうと帝国が動く。アルフィオはわたしに、頻繁に皇女殿下達のお茶会に招かれる、と手紙で知らせてきたのだ。

(ふふふ、優秀な男を娘婿に迎えたい気持ちは痛いほどわかるさ・・・・・・アルフィオが皇女殿下と結婚できると確信したぞ! こうなったらわたしは息子に全てを懸けることにしよう。小国の男爵家に過ぎないパッチーニ家がいよいよ世界にその名を轟かせることになるのだ!)

 わたしと両親は天にも昇る心地で、日々を過ごす。毎月保護者であるパッチーニ男爵家に送られてくるアルフィオの成績表は額に入れて飾りたいくらい誇らしかった。
 実際、母上は涙を流しながら額に入れて応接室にそれをズラリと並べたよ。もちろん来客があるたびに孫を自慢する為にだ。

 わたしも、もちろん友人達や親戚一同を招き、わざと応接室で待たせそれが目に付くようにしてやったさ。来た時とまるで違う彼らの態度に、彼らが帰った後のわたしは父上達と腹を抱えて笑い転げてやった。


 帰る時(アルフィオの成績表を見た後の)の彼らは、わたし達に奴隷のように卑屈な態度でぺこぺこと頭を下げたのだ。格の違いを嫌というほど感じていたたまれないようだった。わたしの息子が皇帝に目をかけられている話もしてやったからな。

「アルフィオは将来のアーグイピン帝国の重鎮となるはずだ。とてつもない権力をいずれ持ち始め、あの帝国の支配者まで登り詰めるのかもしれないぞ。ふふふ、その時がきてもお前達のことは忘れないでいてあげよう。あっはははは」
 私は心の底から笑ったのさ。とても気分が良いし、人生で最良の日々だった。子供の出来が良いって、これほどまでに嬉しいものなのか! 知らなかったよ。周りの皆がわたしに一目置くのさ。まるで私の手柄のように褒め称えてくれるのだ。

 子供の栄誉は親のものだ。なんて最高なんだろう! アルフィオのことを話題にする限りわたしは無敵だった。なぜなら、アルフィオは世界で1番優秀なのだから!

(なんたる栄誉! 神様、感謝します。これも、日頃のわたしの行いが良いからだろうな)

 それに、わたしはアルフィオと良好な関係を築いており、毎月必ず手紙がこちらに届くのも嬉しい。ヴァネッサのところには一通も送っていないこともわかっていた。息子の愛はわたしや両親に向けられているのだ。間違ってもたまたま運良く天才を生んだ女には向けられていない。アルフィオには留学時に侍従を一人つけて最高の個室に入れてやったから、アルフィオの動向はその侍従からこちらに筒抜けだったのさ。


(わたしのタネなのだ。パッチーニ男爵家の優秀な遺伝子がアルフィオに集結した結果なのだ。これこそ真理だ)

 アルフィオはそのあたりをとてもわきまえていた。毎日わたしへの感謝の言葉を口にし、日々パッチーニ男爵家の誉れになりたいと侍従に呟いているという。なんと立派で気高い志を持った息子なのだろう!

(あぁ、神様、あなたを讃えます。わたしに最高の息子を与えてくださったことを感謝いたします!)
 毎日のように神に感謝するわたしだ。心が清く洗われる瞬間だった。







 そうして父上と相談し、アルフィオには一切金を惜しまないことをパッチーニ男爵家の家訓とする。アルフィオは手中の宝。最大限に大事にしてあげよう。いずれ、それは何百倍にもなってわたし達に戻ってくるのだから!!
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