4 / 9
4-1 (ライモンド・パッチーニ男爵視点)
しおりを挟む
(ライモンド・パッチーニ男爵視点)
ヴァネッサの産んだ息子は天才だった。この世界でもっとも難関とされるプリンチピーニ学園に軽く合格し、どの学科でも2位を遠く引き離しトップを独走する優秀さだ。剣術も天賦の才があり、容姿もわたしの息子とは思えないほど美しい。
これほどの素晴らしい長所がいくつも備わったアルフィオを、アーグイピン帝国の皇帝が見逃すはずもない。プリンチピーニ学園きっての天才を囲い込もうと帝国が動く。アルフィオはわたしに、頻繁に皇女殿下達のお茶会に招かれる、と手紙で知らせてきたのだ。
(ふふふ、優秀な男を娘婿に迎えたい気持ちは痛いほどわかるさ・・・・・・アルフィオが皇女殿下と結婚できると確信したぞ! こうなったらわたしは息子に全てを懸けることにしよう。小国の男爵家に過ぎないパッチーニ家がいよいよ世界にその名を轟かせることになるのだ!)
わたしと両親は天にも昇る心地で、日々を過ごす。毎月保護者であるパッチーニ男爵家に送られてくるアルフィオの成績表は額に入れて飾りたいくらい誇らしかった。
実際、母上は涙を流しながら額に入れて応接室にそれをズラリと並べたよ。もちろん来客があるたびに孫を自慢する為にだ。
わたしも、もちろん友人達や親戚一同を招き、わざと応接室で待たせそれが目に付くようにしてやったさ。来た時とまるで違う彼らの態度に、彼らが帰った後のわたしは父上達と腹を抱えて笑い転げてやった。
帰る時(アルフィオの成績表を見た後の)の彼らは、わたし達に奴隷のように卑屈な態度でぺこぺこと頭を下げたのだ。格の違いを嫌というほど感じていたたまれないようだった。わたしの息子が皇帝に目をかけられている話もしてやったからな。
「アルフィオは将来のアーグイピン帝国の重鎮となるはずだ。とてつもない権力をいずれ持ち始め、あの帝国の支配者まで登り詰めるのかもしれないぞ。ふふふ、その時がきてもお前達のことは忘れないでいてあげよう。あっはははは」
私は心の底から笑ったのさ。とても気分が良いし、人生で最良の日々だった。子供の出来が良いって、これほどまでに嬉しいものなのか! 知らなかったよ。周りの皆がわたしに一目置くのさ。まるで私の手柄のように褒め称えてくれるのだ。
子供の栄誉は親のものだ。なんて最高なんだろう! アルフィオのことを話題にする限りわたしは無敵だった。なぜなら、アルフィオは世界で1番優秀なのだから!
(なんたる栄誉! 神様、感謝します。これも、日頃のわたしの行いが良いからだろうな)
それに、わたしはアルフィオと良好な関係を築いており、毎月必ず手紙がこちらに届くのも嬉しい。ヴァネッサのところには一通も送っていないこともわかっていた。息子の愛はわたしや両親に向けられているのだ。間違ってもたまたま運良く天才を生んだ女には向けられていない。アルフィオには留学時に侍従を一人つけて最高の個室に入れてやったから、アルフィオの動向はその侍従からこちらに筒抜けだったのさ。
(わたしのタネなのだ。パッチーニ男爵家の優秀な遺伝子がアルフィオに集結した結果なのだ。これこそ真理だ)
アルフィオはそのあたりをとてもわきまえていた。毎日わたしへの感謝の言葉を口にし、日々パッチーニ男爵家の誉れになりたいと侍従に呟いているという。なんと立派で気高い志を持った息子なのだろう!
(あぁ、神様、あなたを讃えます。わたしに最高の息子を与えてくださったことを感謝いたします!)
毎日のように神に感謝するわたしだ。心が清く洗われる瞬間だった。
そうして父上と相談し、アルフィオには一切金を惜しまないことをパッチーニ男爵家の家訓とする。アルフィオは手中の宝。最大限に大事にしてあげよう。いずれ、それは何百倍にもなってわたし達に戻ってくるのだから!!
ヴァネッサの産んだ息子は天才だった。この世界でもっとも難関とされるプリンチピーニ学園に軽く合格し、どの学科でも2位を遠く引き離しトップを独走する優秀さだ。剣術も天賦の才があり、容姿もわたしの息子とは思えないほど美しい。
これほどの素晴らしい長所がいくつも備わったアルフィオを、アーグイピン帝国の皇帝が見逃すはずもない。プリンチピーニ学園きっての天才を囲い込もうと帝国が動く。アルフィオはわたしに、頻繁に皇女殿下達のお茶会に招かれる、と手紙で知らせてきたのだ。
(ふふふ、優秀な男を娘婿に迎えたい気持ちは痛いほどわかるさ・・・・・・アルフィオが皇女殿下と結婚できると確信したぞ! こうなったらわたしは息子に全てを懸けることにしよう。小国の男爵家に過ぎないパッチーニ家がいよいよ世界にその名を轟かせることになるのだ!)
わたしと両親は天にも昇る心地で、日々を過ごす。毎月保護者であるパッチーニ男爵家に送られてくるアルフィオの成績表は額に入れて飾りたいくらい誇らしかった。
実際、母上は涙を流しながら額に入れて応接室にそれをズラリと並べたよ。もちろん来客があるたびに孫を自慢する為にだ。
わたしも、もちろん友人達や親戚一同を招き、わざと応接室で待たせそれが目に付くようにしてやったさ。来た時とまるで違う彼らの態度に、彼らが帰った後のわたしは父上達と腹を抱えて笑い転げてやった。
帰る時(アルフィオの成績表を見た後の)の彼らは、わたし達に奴隷のように卑屈な態度でぺこぺこと頭を下げたのだ。格の違いを嫌というほど感じていたたまれないようだった。わたしの息子が皇帝に目をかけられている話もしてやったからな。
「アルフィオは将来のアーグイピン帝国の重鎮となるはずだ。とてつもない権力をいずれ持ち始め、あの帝国の支配者まで登り詰めるのかもしれないぞ。ふふふ、その時がきてもお前達のことは忘れないでいてあげよう。あっはははは」
私は心の底から笑ったのさ。とても気分が良いし、人生で最良の日々だった。子供の出来が良いって、これほどまでに嬉しいものなのか! 知らなかったよ。周りの皆がわたしに一目置くのさ。まるで私の手柄のように褒め称えてくれるのだ。
子供の栄誉は親のものだ。なんて最高なんだろう! アルフィオのことを話題にする限りわたしは無敵だった。なぜなら、アルフィオは世界で1番優秀なのだから!
(なんたる栄誉! 神様、感謝します。これも、日頃のわたしの行いが良いからだろうな)
それに、わたしはアルフィオと良好な関係を築いており、毎月必ず手紙がこちらに届くのも嬉しい。ヴァネッサのところには一通も送っていないこともわかっていた。息子の愛はわたしや両親に向けられているのだ。間違ってもたまたま運良く天才を生んだ女には向けられていない。アルフィオには留学時に侍従を一人つけて最高の個室に入れてやったから、アルフィオの動向はその侍従からこちらに筒抜けだったのさ。
(わたしのタネなのだ。パッチーニ男爵家の優秀な遺伝子がアルフィオに集結した結果なのだ。これこそ真理だ)
アルフィオはそのあたりをとてもわきまえていた。毎日わたしへの感謝の言葉を口にし、日々パッチーニ男爵家の誉れになりたいと侍従に呟いているという。なんと立派で気高い志を持った息子なのだろう!
(あぁ、神様、あなたを讃えます。わたしに最高の息子を与えてくださったことを感謝いたします!)
毎日のように神に感謝するわたしだ。心が清く洗われる瞬間だった。
そうして父上と相談し、アルフィオには一切金を惜しまないことをパッチーニ男爵家の家訓とする。アルフィオは手中の宝。最大限に大事にしてあげよう。いずれ、それは何百倍にもなってわたし達に戻ってくるのだから!!
27
お気に入りに追加
1,213
あなたにおすすめの小説
【完結】遅いのですなにもかも
砂礫レキ
恋愛
昔森の奥でやさしい魔女は一人の王子さまを助けました。
王子さまは魔女に恋をして自分の城につれかえりました。
数年後、王子さまは隣国のお姫さまを好きになってしまいました。
[完結]離婚したいって泣くくらいなら、結婚する前に言ってくれ!
日向はび
恋愛
「離婚させてくれぇ」「泣くな!」結婚してすぐにビルドは「離婚して」とフィーナに泣きついてきた。2人が生まれる前の母親同士の約束により結婚したけれど、好きな人ができたから別れたいって、それなら結婚する前に言え! あまりに情けなく自分勝手なビルドの姿に、とうとう堪忍袋の尾が切れた。「慰謝料を要求します」「それは困る!」「困るじゃねー!」
死に戻るなら一時間前に
みねバイヤーン
恋愛
「ああ、これが走馬灯なのね」
階段から落ちていく一瞬で、ルルは十七年の人生を思い出した。侯爵家に生まれ、なに不自由なく育ち、幸せな日々だった。素敵な婚約者と出会い、これからが楽しみだった矢先に。
「神様、もし死に戻るなら、一時間前がいいです」
ダメ元で祈ってみる。もし、ルルが主人公特性を持っているなら、死に戻れるかもしれない。
ピカッと光って、一瞬目をつぶって、また目を開くと、目の前には笑顔の婚約者クラウス第三王子。
「クラウス様、聞いてください。私、一時間後に殺されます」
一時間前に死に戻ったルルは、クラウスと共に犯人を追い詰める──。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
令嬢が婚約破棄をした数年後、ひとつの和平が成立しました。
夢草 蝶
恋愛
公爵の妹・フューシャの目の前に、婚約者の恋人が現れ、フューシャは婚約破棄を決意する。
そして、婚約破棄をして一週間も経たないうちに、とある人物が突撃してきた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる