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10 ジェミングウェイ辺境伯爵家の最高の力を受け継ぎし者
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「こら! シエナはジェミングウェイ辺境伯爵家に来たばかりで心細い思いをしているんだぞ。少しでも馴染めるように温かい言葉をかけてあげるのがお前のするべきことだ! ところで、お前の炎属性魔法だが、威力が全然足りない。もっと修練を積まないと魔物に一瞬で殺されるぞ」
「僕は一生懸命やってますよ! だけど・・・・・・」
「言い訳は聞きたくない。私がお前の歳にはその倍の力があった」
「・・・・・・」
悔しそうに唇を噛むトニー様。
その日のディナーはトニー様の拗ねた態度のせいで、とても居心地が悪かった。私は仲良くしたいのにきっかけが見つからない。
専属騎士のジェームズは、私が浮かない顔をしているのにすぐに気がついてくれる。
「どうしました? なにか悩んでいるようですが」
「うん。甘え方がね、わからないです。アダム様もマリーベル様も「甘えてほしい」と、おっしゃるのだけれど・・・・・・今まで甘えたことってなかった気がするのよ。それからトニー様とも仲良くしたいけど、どうすればいいのかわからないです」
ジェームズは気さくでなんでも話を聞いてくれるから、この人だけには本音が言えた。
「甘え方ねぇ。今までシエナ様はお母様を助けたい、と思うばかりだったようですからわからないですよね。だったら甘えるよりも、お手伝いのほうが簡単にできますね?」
「お手伝い?」
「そうですよ。マリーベル様は、庭園のバラのお手入れを自分でなさるのがお好きですよ。それを手伝うのはいかがでしょう? アダム様とトニー様には、クッキー等を焼くといいです。以前、騎士達が手作りクッキーを作ってくれる娘や妹を自慢していたことがありました。その時の羨ましそうな表情といったら! あっはは。あっ、これはナイショですよ」
「そうね。甘える方法ばかり考えていたけれど、要するに私の好意と感謝を伝えられればいいのですものね」
☆彡
翌日、マリーベル様が庭園でバラのつぼみをかき取っているところに近づく。
「なぜ、つぼみを取ってしまうのですか?」
「あら、シエナちゃんもバラが好きなの? これはね、大輪咲きのバラをより大きく美しく咲かせたいからなのよ。こうして一番上と他二つほどのつぼみだけを残して、それ以外は取ってしまうの」
「私もお手伝いしていいですか? マリーベル様と一緒にバラを綺麗に咲かせたいです」
「え? 今、なんて言ったの? 私と一緒にバラを咲かせたい? なんて素敵な可愛いことを言ってくれるの! すっごく嬉しいわ!」
マリーベル様と庭園で、お花の手入れをするのが日課になった私は、日ごとに自然に接することができるようになった。同じ作業を一緒にすることで、とても和やかな空気が生まれるのは不思議だ。
作業の後には一緒にお茶を飲み、他愛ないおしゃべりをする。お互いに気を遣っていた部分がほんの少しほぐれていく気がした。
「そういえばマリーベル様はお菓子作りは得意ですか? クッキーを焼いてアダム様とトニー様に差し入れをしたいんです」
「まぁ、それはいいことね! クッキーぐらいなら私も焼けるわ。早速、一緒に作りましょう」
マリーベル様と私は、ボールに室温で柔らかくしておいたバターをいれ、泡立て器でよく練り混ぜる。なめらかなクリーム状になったら砂糖を加え・・・・・・
「クッキーを作るってそれほど難しくないですね」
「そうね! 娘と作れるなんて夢みたい。二人で作ると、とっても楽しいわ」
「えっと・・・・・・娘って・・・・・・」
「あぁ、ごめんなさい。私の一方的な片思いかな。でも、私を第二のお母様って思ってくれると嬉しいわ。もちろん、すぐにでなくていいの・・・・・・」
「第二のお母様というより、お姉様って気がします。マリーベル様はお若くて綺麗ですから」
「・・・・・・まぁ・・・・・・なんでシエナちゃんは、私が望む以上の言葉をいつもくれるのかしら? いいこと。私はなにがあってもシエナちゃんの味方よ」
護衛騎士のジェームズが「恐るべき無自覚、人たらし・・・・・・」とぼそっと呟いたのは多分気のせいだ。
できあがったばかりのクッキーを持って、アダム様がトニー様に魔法の特訓をしているところにお邪魔する。二人は炎属性魔法使いでお互い炎槍、炎玉を繰り出しているが力の差は明らかだった。
トニー様と目があった私は「クッキーはいかがですか? トニー様のぶんも焼きました」と、声をかける。
ニヤリと笑ったトニー様は私の方に向かって小さな炎渦を放った。
「あっ、しまった。逸らすつもりだったのに・・・・・・」
トニー様は青ざめたがもう遅い・・・・・・炎渦は私に直撃してくることは避けられない。
私の全身が一瞬で青白い光に包まれて、無意識に右手を持ち上げるとそこから・・・・・・
「僕は一生懸命やってますよ! だけど・・・・・・」
「言い訳は聞きたくない。私がお前の歳にはその倍の力があった」
「・・・・・・」
悔しそうに唇を噛むトニー様。
その日のディナーはトニー様の拗ねた態度のせいで、とても居心地が悪かった。私は仲良くしたいのにきっかけが見つからない。
専属騎士のジェームズは、私が浮かない顔をしているのにすぐに気がついてくれる。
「どうしました? なにか悩んでいるようですが」
「うん。甘え方がね、わからないです。アダム様もマリーベル様も「甘えてほしい」と、おっしゃるのだけれど・・・・・・今まで甘えたことってなかった気がするのよ。それからトニー様とも仲良くしたいけど、どうすればいいのかわからないです」
ジェームズは気さくでなんでも話を聞いてくれるから、この人だけには本音が言えた。
「甘え方ねぇ。今までシエナ様はお母様を助けたい、と思うばかりだったようですからわからないですよね。だったら甘えるよりも、お手伝いのほうが簡単にできますね?」
「お手伝い?」
「そうですよ。マリーベル様は、庭園のバラのお手入れを自分でなさるのがお好きですよ。それを手伝うのはいかがでしょう? アダム様とトニー様には、クッキー等を焼くといいです。以前、騎士達が手作りクッキーを作ってくれる娘や妹を自慢していたことがありました。その時の羨ましそうな表情といったら! あっはは。あっ、これはナイショですよ」
「そうね。甘える方法ばかり考えていたけれど、要するに私の好意と感謝を伝えられればいいのですものね」
☆彡
翌日、マリーベル様が庭園でバラのつぼみをかき取っているところに近づく。
「なぜ、つぼみを取ってしまうのですか?」
「あら、シエナちゃんもバラが好きなの? これはね、大輪咲きのバラをより大きく美しく咲かせたいからなのよ。こうして一番上と他二つほどのつぼみだけを残して、それ以外は取ってしまうの」
「私もお手伝いしていいですか? マリーベル様と一緒にバラを綺麗に咲かせたいです」
「え? 今、なんて言ったの? 私と一緒にバラを咲かせたい? なんて素敵な可愛いことを言ってくれるの! すっごく嬉しいわ!」
マリーベル様と庭園で、お花の手入れをするのが日課になった私は、日ごとに自然に接することができるようになった。同じ作業を一緒にすることで、とても和やかな空気が生まれるのは不思議だ。
作業の後には一緒にお茶を飲み、他愛ないおしゃべりをする。お互いに気を遣っていた部分がほんの少しほぐれていく気がした。
「そういえばマリーベル様はお菓子作りは得意ですか? クッキーを焼いてアダム様とトニー様に差し入れをしたいんです」
「まぁ、それはいいことね! クッキーぐらいなら私も焼けるわ。早速、一緒に作りましょう」
マリーベル様と私は、ボールに室温で柔らかくしておいたバターをいれ、泡立て器でよく練り混ぜる。なめらかなクリーム状になったら砂糖を加え・・・・・・
「クッキーを作るってそれほど難しくないですね」
「そうね! 娘と作れるなんて夢みたい。二人で作ると、とっても楽しいわ」
「えっと・・・・・・娘って・・・・・・」
「あぁ、ごめんなさい。私の一方的な片思いかな。でも、私を第二のお母様って思ってくれると嬉しいわ。もちろん、すぐにでなくていいの・・・・・・」
「第二のお母様というより、お姉様って気がします。マリーベル様はお若くて綺麗ですから」
「・・・・・・まぁ・・・・・・なんでシエナちゃんは、私が望む以上の言葉をいつもくれるのかしら? いいこと。私はなにがあってもシエナちゃんの味方よ」
護衛騎士のジェームズが「恐るべき無自覚、人たらし・・・・・・」とぼそっと呟いたのは多分気のせいだ。
できあがったばかりのクッキーを持って、アダム様がトニー様に魔法の特訓をしているところにお邪魔する。二人は炎属性魔法使いでお互い炎槍、炎玉を繰り出しているが力の差は明らかだった。
トニー様と目があった私は「クッキーはいかがですか? トニー様のぶんも焼きました」と、声をかける。
ニヤリと笑ったトニー様は私の方に向かって小さな炎渦を放った。
「あっ、しまった。逸らすつもりだったのに・・・・・・」
トニー様は青ざめたがもう遅い・・・・・・炎渦は私に直撃してくることは避けられない。
私の全身が一瞬で青白い光に包まれて、無意識に右手を持ち上げるとそこから・・・・・・
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