上 下
7 / 16

7 死刑は免れたけれど・・・・・・

しおりを挟む
 アダム様がチャーリー伯父様を調べあげた結果、養育費はやはり打ち切られていなかったことがわかった。チャーリー伯父様は賭け事でつくった莫大な借金があり、その返済に私の養育費が使われたらしい。

 それからお爺様の遺言書を隠していたことも発覚する。遺言書にはお爺様の家や敷地も、全て私に相続させるという記載があった。お爺様の持っていたわずかなお金ですら、全て私に遺すと書かれた遺言書は、チャーリー伯父様の金庫から発見された。

 後日、アダム様がチャーリー伯父様を裁判にかけ、私もお母様も出席した。医師に診てもらったお母様の体調はかなり良くなっていたので、お母様の顔色は前よりも血色が良い。

 裁判のなかでなぜチャーリー伯父様が、お爺様の遺言書を破棄せずに保管していたのか聞かれた際、「オヤジのむかつく遺言書を見ながら、妹や姪が苦しむ状況を作り出すことに快感を覚えた」と歪んだ気持ちを吐露する。

 チャーリ伯父様の私やお母様への憎悪は根深くて、思わず身震いするほどだ。お爺様からの愛が欲しかったのかもしれない。それと私達への嫉妬も含まれているのかな。
 でも、自堕落な生活をしていたチャーリー伯父様がお爺様から可愛がられるわけはないのよ。だって、お爺様は高潔な方だったから。

「チャーリーは詐欺罪でその嘘つきな舌を焼き、ジェミングウェイ辺境伯爵家を欺こうとした罪により斬首とする。自分の娘をジェミングウェイ辺境伯爵家の子供として名乗らせるということは、ジェミングウェイ家への冒涜であり、不敬罪にもあたり・・・・・・その娘と妻も・・・・・・死罪・・・・・・」
 長々と罪状が語られ、3人とも死罪の判決がなされようとしていた。


ところが、
「お待ちください。・・・・・・これでも私と血が繋がった兄でございます。亡き父も兄が死罪となることは、きっとあの世でも望んではおりません。どうか寛大な罰を・・・・・・」
 心優しいお母様は泣いて懇願する。確かにこんな伯父様でもお爺様の息子であることに変わりはない。お爺様が悲しむかも・・・・・・

「私もチャーリー伯父様の死罪は望んでおりません。死んでしまうだけが罪の償いではないです」
 お母様と同じく私も声をあげた。

「ふむ。・・・・・・被害にあった二人がそう言うのなら命は取らない。しかし、無罪放免というわけにはいかない。ムチ打ちをそれぞれ10回、その後罪状を記したプラカードをクビから下げ我が領地を隅々まで歩き、皆にその顔を知らしめろ。村に戻った際には教会の門前で、この”恥辱の仮面”を被り三日ほど晒し者となれば良い!」
 アダム様が最終的な判決を下し、チャーリ伯父様は安堵の声をあげる。

 死にはしないけれどなかなかの刑だと思う。チャーリ伯父様はすっかり安心しているけれど大丈夫なのかしら?

「ちなみにお前達が被るこのお面は犯した罪を示すものだ。自分の利益だけを求めて探し回る大きく見開いた目、どんな情報も逃さないラッパのような耳、嘘しか言わない長く垂れ下がった舌。村人から石の一つや二つは飛んでくるだろうが我慢することだ。もし父上が存命であったのなら、生きながら熱された油壺に投げ込まれたことだろう」

 アダム様がサラリとおっしゃった言葉にチャーリー伯父様は失禁した。

「あんな変なお面を被って教会の前に立つなんて地獄だわ。村の笑い者よ。村八分で誰にも相手にされなくなっちゃう・・・・・・嫌よ。嫌だ。嫌だよぉーー!! 父さんの言う通りにしただけなのに・・・・・・シエナ! お願い。助けてよ」
 
 青ざめた顔を私に向けて、イブリンが「助けて」と懇願したが、私にこれ以上できることはない。チャーリ伯父様達は私やお母様だけを迫害したのではないのだから。ジェミングウェイ辺境伯爵家までも愚弄した罪は消せないのだ。

「これ以降、シエナはジェミングウェイ辺境伯爵家の令嬢となる。ここにアダム・ジェミングウェイ辺境伯としてシエナを当家に正式に迎え入れることを宣言する。貴族籍に追加する申請も速やかに王家に届け出ることとしよう。さて、刑の執行はこの瞬間から始めよ! ムチで思いっきりそいつらを叩くのだ!」



*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*

次回、チャーリー達の刑の執行場面です。あまり残酷すぎない程度に書きたいです。
しおりを挟む
感想 85

あなたにおすすめの小説

巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~

アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

婚約破棄が成立したので遠慮はやめます

カレイ
恋愛
 婚約破棄を喰らった侯爵令嬢が、それを逆手に遠慮をやめ、思ったことをそのまま口に出していく話。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

モラハラ王子の真実を知った時

こことっと
恋愛
私……レーネが事故で両親を亡くしたのは8歳の頃。 父母と仲良しだった国王夫婦は、私を娘として迎えると約束し、そして息子マルクル王太子殿下の妻としてくださいました。 王宮に出入りする多くの方々が愛情を与えて下さいます。 王宮に出入りする多くの幸せを与えて下さいます。 いえ……幸せでした。 王太子マルクル様はこうおっしゃったのです。 「実は、何時までも幼稚で愚かな子供のままの貴方は正室に相応しくないと、側室にするべきではないかと言う話があがっているのです。 理解……できますよね?」

婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。

松ノ木るな
恋愛
 純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。  伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。  あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。  どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。  たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。

【完結】都合のいい女ではありませんので

風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。 わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。 サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。 「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」 レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。 オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。 親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。 ※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

契約結婚の終わりの花が咲きます、旦那様

日室千種・ちぐ
恋愛
エブリスタ新星ファンタジーコンテストで佳作をいただいた作品を、講評を参考に全体的に手直ししました。 春を告げるラクサの花が咲いたら、この契約結婚は終わり。 夫は他の女性を追いかけて家に帰らない。私はそれに傷つきながらも、夫の弱みにつけ込んで結婚した罪悪感から、なかば諦めていた。体を弱らせながらも、寄り添ってくれる老医師に夫への想いを語り聞かせて、前を向こうとしていたのに。繰り返す女の悪夢に少しずつ壊れた私は、ついにある時、ラクサの花を咲かせてしまう――。 真実とは。老医師の決断とは。 愛する人に別れを告げられることを恐れる妻と、妻を愛していたのに契約結婚を申し出てしまった夫。悪しき魔女に掻き回された夫婦が絆を見つめ直すお話。 全十二話。完結しています。

処理中です...