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1 シエナの出生の背景は・・・・・・
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ジェミングウエイ辺境伯領の東は隣国アトランテ、西は魔の森であった。この地を治めるルイ・ジェミングウエイ辺境伯は屈強で魔力も膨大。隣国や魔物の侵略からルメール国を守る盾のような存在だ。
彼はすでにそれほど若くはないがまだまだ健在で、戦いの他に狩猟を好む男だった。ある日、狩猟中に思わぬ怪我をする。激しい戦闘中もかすり傷ひとつ負わなかった彼にとっては珍しいことである。
その際村長の屋敷で手当を受け、そのままそこに宿泊することになった。
ジェミングウエイ辺境伯領のなかでも、とくに寂れた村の村長セバスチャンには美しいエレノアという娘がいた。
「あの美しい娘を儂にくれまいか?」
「申し訳ありませんが、エレノアには婚約者がおります。そのような申し出は・・・・・・承諾できかねます」
「誰に口をきいている? 儂はこの地の領主だぞ。儂に逆らうのなら、この村の税だけ重く取り立てるとするかな。村人はさぞ困ることだろう。飢え死にする子供も跡を絶たないことになり、それがお前の少しの我が儘から起こったことだと知るだろうな」
「そ、そんな・・・・・・あんまりです。村人を引き合いに出されたら私は拒むことはできません・・・・・・」
フランキーは娘を差し出すしかなかった。エレノアには床に頭をこすりつけ、「不甲斐ない父を許しておくれ」と泣きながら謝った。
「お父様、仕方がありません。領主様のおっしゃることには誰も逆らえません。私さえ我慢すればいいのですから」
エレノアは自分も泣きたい思いをグッと堪えて、ルイ・ジェミングウエイ辺境伯の寝室に向かったのだった。
ルイ・ジェミングウエイ辺境伯はエレノアの純潔を奪ったというのに、そのまま何事もなかったように屋敷に戻っていく。辺境伯には妻と息子がおり、その仲はとても良いという評判であった。エレノアはルイの気まぐれで選ばれた一夜の相手にすぎないのだった。
それでも領主様のお手がついたエレノアは、そのまま婚約者と結婚することはできない。幼なじみとの婚約は解消され、エレノアは悲しみに沈んでいた。ところが悲しんでいるばかりではいられない状況が訪れる。
エレノアが妊娠したのだ。早速フランキーはルイ・ジェミングウエイ辺境伯の元に使いを送るが、渡された手紙には「無事に生まれたら金だけは送ろう」というものだった。
(なんて冷たい手紙だ。あれだけ無理強いでエレノアを望んだくせに・・・・・・人の人生をなんと思っておられるのか・・・・・・不憫なエレノアよ。生まれてくる子供も可哀想でならない・・・・・・私にもっと力があったなら)
フランキーは心の中でそう思いながら涙を流すのだった。
୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧
ルイ・ジェミングウエイ辺境伯はちょっとしか出てきません。脇役です。一応、ヒロインの父です。
ヒロインはルイ・ジェミングウエイ辺境伯とエレノアとの間に生まれたシエナです。
彼はすでにそれほど若くはないがまだまだ健在で、戦いの他に狩猟を好む男だった。ある日、狩猟中に思わぬ怪我をする。激しい戦闘中もかすり傷ひとつ負わなかった彼にとっては珍しいことである。
その際村長の屋敷で手当を受け、そのままそこに宿泊することになった。
ジェミングウエイ辺境伯領のなかでも、とくに寂れた村の村長セバスチャンには美しいエレノアという娘がいた。
「あの美しい娘を儂にくれまいか?」
「申し訳ありませんが、エレノアには婚約者がおります。そのような申し出は・・・・・・承諾できかねます」
「誰に口をきいている? 儂はこの地の領主だぞ。儂に逆らうのなら、この村の税だけ重く取り立てるとするかな。村人はさぞ困ることだろう。飢え死にする子供も跡を絶たないことになり、それがお前の少しの我が儘から起こったことだと知るだろうな」
「そ、そんな・・・・・・あんまりです。村人を引き合いに出されたら私は拒むことはできません・・・・・・」
フランキーは娘を差し出すしかなかった。エレノアには床に頭をこすりつけ、「不甲斐ない父を許しておくれ」と泣きながら謝った。
「お父様、仕方がありません。領主様のおっしゃることには誰も逆らえません。私さえ我慢すればいいのですから」
エレノアは自分も泣きたい思いをグッと堪えて、ルイ・ジェミングウエイ辺境伯の寝室に向かったのだった。
ルイ・ジェミングウエイ辺境伯はエレノアの純潔を奪ったというのに、そのまま何事もなかったように屋敷に戻っていく。辺境伯には妻と息子がおり、その仲はとても良いという評判であった。エレノアはルイの気まぐれで選ばれた一夜の相手にすぎないのだった。
それでも領主様のお手がついたエレノアは、そのまま婚約者と結婚することはできない。幼なじみとの婚約は解消され、エレノアは悲しみに沈んでいた。ところが悲しんでいるばかりではいられない状況が訪れる。
エレノアが妊娠したのだ。早速フランキーはルイ・ジェミングウエイ辺境伯の元に使いを送るが、渡された手紙には「無事に生まれたら金だけは送ろう」というものだった。
(なんて冷たい手紙だ。あれだけ無理強いでエレノアを望んだくせに・・・・・・人の人生をなんと思っておられるのか・・・・・・不憫なエレノアよ。生まれてくる子供も可哀想でならない・・・・・・私にもっと力があったなら)
フランキーは心の中でそう思いながら涙を流すのだった。
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ルイ・ジェミングウエイ辺境伯はちょっとしか出てきません。脇役です。一応、ヒロインの父です。
ヒロインはルイ・ジェミングウエイ辺境伯とエレノアとの間に生まれたシエナです。
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