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サイラスはいつのまにか過去の人?
しおりを挟む卒業パーティの前日、最後の学園の授業の日に、セオドル王子が放課後、魔法科の教室にやってきた。
「明日の卒業パーティはエスコートできない。すまないね。」
セオドル王子が、ブロンドの長い髪を王子様らしくなびかせて、颯爽とはいってきた。
「はい、かしこまりました」
「ふーーん。それなら、俺がエスコートしてもかまわないよねぇー?」
背後からディラン様が、黒い笑顔で微笑んでいた。
「あ、あぁ、もちろんだ。こんなのでいいなら勝手にエスコートでもなんでもしろ」
セオドル王子は、私を、こんなの、と言い捨てて去って行った。
「さぁ、そうと決まったら、さっさと俺の屋敷に行こう」
「え?えぇーーーーー??」
馬車に乗せられて向かったのはドルー公爵家。
ディラン様のお姉様のエリザベス・ドルー公爵令嬢は有名な実業家だ。
画期的な化粧品や斬新なデザインのドレス、エステなど女性の美を追究する美容業界の第一人者だ。
私は卒業パーティの直前までエステで磨かれ肌はすべすべ、お化粧されたら別人のように華やかになった。
今まで、ほとんどすっぴんだったから、お化粧でこんなにも女性が変わるなんて驚きだった。
鼻のあたりのソバカスは完璧に隠され、やぼったい太めの眉はアーチ型に整えられた。
あまり大きくない、寂しくみえる一重の目は目尻にアイラインを太めに引きブラウンのアイシャドーで影をつけ、つけまつげがつけられた。
こうすると、自信に溢れたクールな大人の女性に見える。(中身は全く違うけれど‥‥)
ドレスは綺麗な淡いブルーでフリルもレースも一切なし。肌にぴったりとしたシルエットで背の高さや足と腕の長さが目立って恥ずかしい。
「ウエストは充分細いから、お胸をもう少し底上げしましょう」パッドを下着にいれられ、胸の谷間がくっきりと現れた。
「さぁ、口紅と頬紅はローズピンクにしましょうか?あら、綺麗!髪はすっきり夜会巻きがいいわね。一房たらしてみるとまた素敵。
あなたの髪って綺麗ないい色ねぇーーまっすぐでキラキラして‥‥」
綺麗だなんて、今まで言われたことなんてない。
お世辞でも、褒められると嬉しい。
すっかり支度が終わってディラン様のところにエリザベス様に手をひかれて行った。
靴はヒールが少し高めなドレスとお揃いの色でバッグも貸してもらった。
ディラン様は賞賛の眼差しを私に向けている。
「美女の誕生だね!自分にあったドレスと化粧法、髪型でずいぶん変わるだろう?」
私は、自分が美女になれたなどとは思わないが、前より存在感がでたようで嬉しかった。
パーティに向かう馬車のなかで、ディラン様の瞳の色と同じルビーのネックレスを私の首につけてくれた。
「え?こんな高価なものをお借りしていいのですか?あとで、このドレスも靴もバッグもお返ししますね」
「意地悪だなぁー。ポージは俺の気持ちがわからないの?」
「ディラン様は優しいから、私に同情しているのですよね?」
「ふっふっ。まぁ、あとでゆっくり教えてあげるよ」
ディラン様は少し黒い笑顔になった?
「とにかく、今日はこんなに綺麗な君と卒業パーティに行けるなんて嬉しいよ」
ディラン様は私の手の甲にキスをした。
私は、顔が熱くなって多分真っ赤に染まっていると思う。
そして、今気づいた!
昨日から?いいえ、もっと前から?サイラスのことを考えなくなっていたことを。
不思議!今はサイラスの名前を聞いても何も感じない。
前は胸が痛くて悲しみで押しつぶされそうだったのに‥‥
時間が忘れさせてくれるって本当なんだ。
婚約破棄事件から2年半。
もう忘れてもいい時期だった。
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