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おまけ カンガルーのカンちゃん
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※それほど残酷ではないと思います。お仕置き的な感じの描写になります。読みたい方だけどうぞーー
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
スペイニ国王がコロッセウムの中央に引き出され、牢の扉が重々しく開くと、そこから筋骨隆々としたカンガルーが跳び出してきた。王が小柄に見えるほどの体格を誇り、前足を構え尻尾で大地を支えたその姿は、まさに闘士そのものだった。
このカンガルーの名前はカンちゃん。ローマムア帝国で大切に飼われているが、たまに悪人のお仕置き係として、コロッセウムに登場する人気者だった。
スペイニ国王は観客席からの野次を浴びながら、たじろぎ後ずさる。王が無様に後退すると、カンガルーはその反応を見逃さず、大きな跳躍で彼のすぐそばまで迫った。王は「うわぁ!」と悲鳴をあげ必死に逃げ出すが、その姿を見た民たちは歓声をあげてはやし立てる。
「逃げるなよ! 戦えーー!」
「カンちゃんから一撃食らえ! そっちだ、そっち!」
「カンちゃーん! 頑張ってーー」
スペイニ国王が逃げ惑う姿に、民たちは憎しみを込めて嘲笑を浴びせていた。ローマムア帝国の民にとっては、敬愛するアレクサンダー皇帝が悪人に仕立て上げられていたことへの怒りが渦巻いている。スペイニ国民にとっては、裏切られ騙されたという深い憤りがあった。だからこそ、カンガルーに向けられる声援は熱狂的で、まるで一つの怒涛となってスペイニ国王を追い立てていた。
ゆっくりとカンガルーが後ろ足を構える。王は「や、やめろ!」と叫びながら後ずさりするも、足がもつれて転びそうになりながらよろよろと後退した。
次の瞬間、硬い壁が背中に当たり、ついにコロッセウムの壁まで追い詰められたことに王は気づく。青ざめた顔で周囲を見回しても、逃げ場はどこにもない。カンガルーは見事な後ろ足キックを放ち、王の腹にドンと炸裂させた。王は勢いよく壁に叩きつけられ、観客席からは大歓声が沸き起こる。
「いいぞ、カンちゃーーん! もう一発だ!」
「カンちゃーーん! ファイトーー!」
さらに立ち上がろうとする王に、今度はカンガルーが前足を使って威圧的に近づく。
「待ってくれ! これ以上はやめてくれ」
王は手を振り回しながら必死に叫ぶ。だが、その姿が滑稽に見えるのか、民たちはより一層笑い、容赦のない言葉を浴びせかけた。
「もっとやれ! 王が泣いてるぞ!」
「さあ、謝罪してみろ! お前が拉致した女たちに頭をさげろーー」
民衆の熱狂のなか、王は砂の上に倒れ込み、屈辱にまみれながら必死で許しを請う。しかし、カンガルーはその様子をよそに、軽やかに跳ねては新たなキックをしようと狙っていた。
コロッセウム中に民の歓声と笑い声が響き渡り、スペイニ国王はその愚行の代償を、招かれたスペイニ国民とローマムア帝国民の目の前で払うことになった。この見世物はとても長い期間続けられた。
スペイニ国王は重傷を負っては手厚く看護され、全快するとまたコロッセウムで戦わされた。アレクサンダーは簡単に死ぬことを許さなかったのだ。この時、使われたライオンや熊はよく訓練された動物たちだった。罪人をひと思いには殺さない。恐怖と痛みをほどほどに与えるように仕込まれていたのだった。
•───⋅⋆⁺‧₊☽⛦☾₊‧⁺⋆⋅───•
※ライオンや熊と戦うシーンはありません。ちょっと残酷すぎるので。
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スペイニ国王がコロッセウムの中央に引き出され、牢の扉が重々しく開くと、そこから筋骨隆々としたカンガルーが跳び出してきた。王が小柄に見えるほどの体格を誇り、前足を構え尻尾で大地を支えたその姿は、まさに闘士そのものだった。
このカンガルーの名前はカンちゃん。ローマムア帝国で大切に飼われているが、たまに悪人のお仕置き係として、コロッセウムに登場する人気者だった。
スペイニ国王は観客席からの野次を浴びながら、たじろぎ後ずさる。王が無様に後退すると、カンガルーはその反応を見逃さず、大きな跳躍で彼のすぐそばまで迫った。王は「うわぁ!」と悲鳴をあげ必死に逃げ出すが、その姿を見た民たちは歓声をあげてはやし立てる。
「逃げるなよ! 戦えーー!」
「カンちゃんから一撃食らえ! そっちだ、そっち!」
「カンちゃーん! 頑張ってーー」
スペイニ国王が逃げ惑う姿に、民たちは憎しみを込めて嘲笑を浴びせていた。ローマムア帝国の民にとっては、敬愛するアレクサンダー皇帝が悪人に仕立て上げられていたことへの怒りが渦巻いている。スペイニ国民にとっては、裏切られ騙されたという深い憤りがあった。だからこそ、カンガルーに向けられる声援は熱狂的で、まるで一つの怒涛となってスペイニ国王を追い立てていた。
ゆっくりとカンガルーが後ろ足を構える。王は「や、やめろ!」と叫びながら後ずさりするも、足がもつれて転びそうになりながらよろよろと後退した。
次の瞬間、硬い壁が背中に当たり、ついにコロッセウムの壁まで追い詰められたことに王は気づく。青ざめた顔で周囲を見回しても、逃げ場はどこにもない。カンガルーは見事な後ろ足キックを放ち、王の腹にドンと炸裂させた。王は勢いよく壁に叩きつけられ、観客席からは大歓声が沸き起こる。
「いいぞ、カンちゃーーん! もう一発だ!」
「カンちゃーーん! ファイトーー!」
さらに立ち上がろうとする王に、今度はカンガルーが前足を使って威圧的に近づく。
「待ってくれ! これ以上はやめてくれ」
王は手を振り回しながら必死に叫ぶ。だが、その姿が滑稽に見えるのか、民たちはより一層笑い、容赦のない言葉を浴びせかけた。
「もっとやれ! 王が泣いてるぞ!」
「さあ、謝罪してみろ! お前が拉致した女たちに頭をさげろーー」
民衆の熱狂のなか、王は砂の上に倒れ込み、屈辱にまみれながら必死で許しを請う。しかし、カンガルーはその様子をよそに、軽やかに跳ねては新たなキックをしようと狙っていた。
コロッセウム中に民の歓声と笑い声が響き渡り、スペイニ国王はその愚行の代償を、招かれたスペイニ国民とローマムア帝国民の目の前で払うことになった。この見世物はとても長い期間続けられた。
スペイニ国王は重傷を負っては手厚く看護され、全快するとまたコロッセウムで戦わされた。アレクサンダーは簡単に死ぬことを許さなかったのだ。この時、使われたライオンや熊はよく訓練された動物たちだった。罪人をひと思いには殺さない。恐怖と痛みをほどほどに与えるように仕込まれていたのだった。
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※ライオンや熊と戦うシーンはありません。ちょっと残酷すぎるので。
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