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オリバーの苦悩
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モーガン男爵夫人は血色が良く丸顔で、ぱっちりとした目が印象的だった。モーガン男爵は痩せすぎで、顔色も悪く三白眼。この夫婦は二人とも小柄で、髪と瞳の色は明るめのブラウンだった。アリスは夫人に、アルバートは男爵にそっくりだ。
僕の婚約者となったアグネスは、透き通るような白い肌を持ち、すらりと背が高い。豊かに流れる金髪と、青空を切り取ったかのような美しい瞳は、見る者を魅了する。高く通った鼻梁に、形の整った唇――その気品は男爵令嬢というよりも、むしろ王女と呼ぶにふさわしいほどだった。
初めて会った時、「アグネス嬢はモーガン男爵夫妻に似ていないね。隔世遺伝かな? ちなみに僕も両親にはあまり似ていなくてね。祖父似らしい」と話しかけた。彼女は悲しげな表情で「やはり自分に似た人間のほうが可愛いのでしょうか?」と聞いてきた。
確かに、モーガン男爵家では、いつもアグネスを除いた家族だけが、楽しげに談笑している姿を見かける。両親は自分たちにそっくりな二人の子供にしか関心がないようで、まるでアグネスの存在など最初からなかったかのようだ。それが理由なのだろうか、アグネスの表情はいつもどこか寂しげだった。
滅多に笑顔を見せない彼女を、なんとか笑わせたい。
だから、僕はモーガン男爵家を訪れるたびに花束を持参し、面白い話題を探してアグネスを笑顔にしようと努めた。彼女は読書が好きだったが、家族愛を描いたほのぼのとした小説は苦手だと言う。理由を尋ねると「読んでいると、自分が惨めに感じるから」と答えた。それはつまり、彼女がモーガン男爵家で幸せではないことを示している。
僕はアグネスを守りたい。彼女のために、王立騎士団で昇進し、幹部になろう。もっと美しいドレスや宝石を贈り、美味しいものを食べさせて、彼女を思い切り甘やかしてあげたい。
模擬試合の際に手料理を差し入れてくれる心優しいアグネス。彼女を幸せにするのが自分の務めだと信じて、日々騎士団での鍛錬に励んでいた。その甲斐あって、ついに騎士副団長補佐に昇進したときは、まるで天にも昇るような気持ちだった。
これで、アグネスをすぐにでも妻として迎え、あの家から解放してあげられる!
ところが、その頑張りが思わぬ方向に進んでしまった。モーガン男爵家で昇進の報告をすると、それを聞いていたモーガン男爵夫人は突然サロンへと案内し、アグネスではなく妹のアリスとばかり話をさせようとしてきた。アグネスと話したいのに、夫人はまるでそれを阻むかのようだった。
数日後、モーガン男爵夫人とアリスが突然ハース男爵家を訪れ、信じられない提案をしてきた。それは「婚約者の交換」だった。
「なぜですか? 僕はアグネスを心から愛しています……」
「アリスがオリバー様を想っているのですよ。アグネスよりも気立てが良くて、何よりも可愛らしい。オリバー様も、アリスを気に入りますわ」
「まったく意味がわかりません。僕はアグネスを一生守ると誓ったんです。どんなことがあっても、彼女を妻に迎えます。そのためにここまで努力してきました」
「オリバー様の妹ミラ様は、もうすぐリアム・ハサノフ子爵に嫁がれますよね? 奇遇だわ、ちょうど当家がハサノフ子爵家に貸していたお金を、全額返済していただこうと思っていたところです。利息も含めればかなりの金額ですよ」
モーガン男爵家は金貸しのようなこともしており、お金に対してがめついとか、拝金主義だとか、そうした悪評は聞いたことがあった。
「私を脅しているのですか?」
「いいえ、お願いしているのですわ。脅しだなんて、人聞きの悪いことをおっしゃらないで」
モーガン男爵夫人は、真っ赤な口紅を塗った唇を歪めて笑った。
僕にアグネスと妹のミラを天秤にかけさせるなんて、あまりにも卑怯すぎる。次第に僕の家族を交えた家族会議にまで発展し、僕はどんどん追い詰められていく。
「アグネスはどうなるのですか?」
「アグネスは慣れていますわ。いつも『お姉さんなんだから』と言い聞かせてきましたからね。問題なんて何もありません」
モーガン男爵夫人の言葉に、嫌悪感を覚えた。きっと、彼女はずっとアグネスに我慢を強いてきたのだろう。
「お兄様、お願い ! リアム様を助けて! ハサノフ子爵領は去年洪水で農作物が大打撃を受け、その影響は今も続いているわ。全額返済なんて要求されたら破産してしまうわ」
「オリバー。自分の幸せを優先して、妹の結婚を壊す気か? 私はそんな勝手な人間に育てた覚えはない。長男なら、妹や弟を守るべきだろう?」
泣きながら懇願するミラを無視できない。
「アグネスは美しく、賢いですからね。高位貴族からの縁談もありますわ。オリバー様は心配なさらなくても大丈夫です。むしろ、アグネスはオリバー様と一緒になるより、もっと良い相手と結ばれて、幸せな生活を送るでしょう」
それから、僕はアグネスに会いに行くこともできなくなった。彼女から何度も手紙が届いた。最初の手紙は、僕の体調を気遣う優しいもので、次は「もし何かあなたを怒らせたのなら謝りたい」と、心から謝罪する内容だった。最後には、「なぜ返事をくれないのか」と真剣に問いかける手紙が届いた。すべての手紙を読んだし、正直なところ、すぐにでも彼女に会いに行きたかった。しかし、ミラのことが足かせになっていた。
その後、アグネスの嫁入りの話を耳にした。アリスによると、その相手はとても裕福な、格上の貴族らしい。僕はその話を聞いて胸が苦しくなった。自分が彼女を守れず、結果的に振ったような形になってしまったのに、今さら彼女のことを気にする資格なんてないはずだ。
しかし、アグネスが崖から飛び降りたと聞いたときには……言葉を失った。彼女が嫁がされそうになった相手は、二度も離婚歴のある、親子ほど年の離れたグラント・ネーグル子爵だったのだ。確かに地位も財産もある相手だが、それはあまりに酷い縁談だと思った。アグネスに対して、そんな扱いをしていいはずがないのに。
僕は自分が許せない。アグネスは救って欲しかったに違いない。毎日、手紙を書いては返事を待っていたのに違いないのに……
「お兄様、ごめんなさい。まさか、こんなことになるなんて」
ミラはしきりに謝ったが、悪いのはミラではなくて、こんな結果を招いたモーガン男爵夫妻だ。
愛する女性ひとり守れなかった自分が騎士団で副団長補佐などおこがましい。僕は騎士団をやめることを家族に伝えた。ハース男爵家は弟に継がせるように、父上にも言う。
「勝手なことを言うな。騎士団をやめるなんて許さんぞ。長男のくせにお前は……」
「もう既に長男の務めは果たしました。そのために最愛の女性を死なせてしまった。もう、たくさんだ。これからはアグネスの供養をしながら、好きに生きますよ」
そう言えば、父上は言葉を詰まらせた。死体さえないけれど、望まない嫁ぎ先へと向かう途中の自殺とされて、捜索は打ち切られる。事情を知った誰もがモーガン男爵夫妻を責め、僕とアグネスは毒親に引き裂かれた悲恋の恋人達になった。
そんなに美しいものじゃないよ・・・・・・だって僕はアグネスを捨てたのと同じ・・・・・・妹とハース男爵家を守った代わりに、この世で一番大事な女性を亡くした大ばか者なんだ。
虚しくて悲しくて・・・・・・自分も後を追って死にたかった……
ハース男爵家は弟に譲り王立騎士団も辞め、旅に出ることにした。この国にいてもアグネスを思い出して悲しいだけだから。
この国とローマムア大帝国、スペイニ国の3国はお互いが重なりあうようにして隣り合っている。胸ポケットからコインを取り出すと空に向かって放り投げた。裏ならローマムア大帝国。表ならスペイニ国だ。
結果は表。弱小国のスペイニ国に向かうと、ここは全くの途上国で民の暮らしも貧しかった。スペイニ人は真面目に働く民であったが、重税を課せられ労働環境は劣悪だった。
未だに国境付近の治安は守られておらず、ローマムア大帝国の下級騎士がたびたび悪さをしに侵入してきて平民の暮らしを脅かした。店からはお金を払わず物を平然と盗み、女子供に暴力をふるう。
僕はそのたびにスペイニ国民を助ける。スペイニ国にも王はいるが、民は貧困にあえぎ無法者から守られてもいない。
おかしい。ローマムア大帝国は豊かで強大な国だから、下級騎士であろうと飢えるはずはない。それなのにこの国で悪さをする為に、わざわざ国境を越えてやって来るのだろうか?
自分勝手な独裁者は愚政で飢えかけた国民の不満を外に向けさせるのが得意だ。庶民の暮らしがクソみたいに最低水準なのは、一部の上に立つ者が富を独占するからだ。それを誤魔化す為に、他国に庶民の不満を誘導するやり口はよく使われる手法だ。
・・・・・・もしかしたら、情報が操作されている? 仕組まれている?
定期的に街を荒らし、強奪していくローマムア大帝国の下級騎士と戦うそぶりもないスペイニ国の騎士達には違和感しか感じない。
「皆、ローマムア大帝国が怖いんですよ! 戦いたいけれど戦えないんです」
スペイニ国側の騎士達が情けない顔をして愚痴る。
自国を守る為に戦いもしない騎士なんて存在意義があるのか? ますます僕は首を捻る。
ついに住民達は憤りローマムア大帝国に復讐しに行くと言い出す者まで出てきた。ローマムア大帝国に乗り込み、「大事なものを傷つけてやる」と叫ぶスペイニ国の一部の過激派。
「大事なものってなんだい?」
「ローマムア大帝国には最近、留学先から戻ってきた皇帝の妹がいるんだって! そいつの誕生日には盛大なお祭りが開かれるって話だ。皇妹はそのパレードをご覧になるはずさ。だからそこで毒物をかけてやるのさ! 俺ら皆で行けば、一人ぐらい成功するんじゃね――か? 冷血皇帝の宝物だと聞いたぜ!」
時間は少し遡る。アグネスは崖から飛び降りたはずなのに、なぜか一人の男性の腕に抱かれていた。崖の途中の窪みに奇跡的に収まっているが、これはどのような状況なのだろうか?
「ビクトリア。最愛の妹よ。やっと見つけ出した……」
ビクトリアって誰?
僕の婚約者となったアグネスは、透き通るような白い肌を持ち、すらりと背が高い。豊かに流れる金髪と、青空を切り取ったかのような美しい瞳は、見る者を魅了する。高く通った鼻梁に、形の整った唇――その気品は男爵令嬢というよりも、むしろ王女と呼ぶにふさわしいほどだった。
初めて会った時、「アグネス嬢はモーガン男爵夫妻に似ていないね。隔世遺伝かな? ちなみに僕も両親にはあまり似ていなくてね。祖父似らしい」と話しかけた。彼女は悲しげな表情で「やはり自分に似た人間のほうが可愛いのでしょうか?」と聞いてきた。
確かに、モーガン男爵家では、いつもアグネスを除いた家族だけが、楽しげに談笑している姿を見かける。両親は自分たちにそっくりな二人の子供にしか関心がないようで、まるでアグネスの存在など最初からなかったかのようだ。それが理由なのだろうか、アグネスの表情はいつもどこか寂しげだった。
滅多に笑顔を見せない彼女を、なんとか笑わせたい。
だから、僕はモーガン男爵家を訪れるたびに花束を持参し、面白い話題を探してアグネスを笑顔にしようと努めた。彼女は読書が好きだったが、家族愛を描いたほのぼのとした小説は苦手だと言う。理由を尋ねると「読んでいると、自分が惨めに感じるから」と答えた。それはつまり、彼女がモーガン男爵家で幸せではないことを示している。
僕はアグネスを守りたい。彼女のために、王立騎士団で昇進し、幹部になろう。もっと美しいドレスや宝石を贈り、美味しいものを食べさせて、彼女を思い切り甘やかしてあげたい。
模擬試合の際に手料理を差し入れてくれる心優しいアグネス。彼女を幸せにするのが自分の務めだと信じて、日々騎士団での鍛錬に励んでいた。その甲斐あって、ついに騎士副団長補佐に昇進したときは、まるで天にも昇るような気持ちだった。
これで、アグネスをすぐにでも妻として迎え、あの家から解放してあげられる!
ところが、その頑張りが思わぬ方向に進んでしまった。モーガン男爵家で昇進の報告をすると、それを聞いていたモーガン男爵夫人は突然サロンへと案内し、アグネスではなく妹のアリスとばかり話をさせようとしてきた。アグネスと話したいのに、夫人はまるでそれを阻むかのようだった。
数日後、モーガン男爵夫人とアリスが突然ハース男爵家を訪れ、信じられない提案をしてきた。それは「婚約者の交換」だった。
「なぜですか? 僕はアグネスを心から愛しています……」
「アリスがオリバー様を想っているのですよ。アグネスよりも気立てが良くて、何よりも可愛らしい。オリバー様も、アリスを気に入りますわ」
「まったく意味がわかりません。僕はアグネスを一生守ると誓ったんです。どんなことがあっても、彼女を妻に迎えます。そのためにここまで努力してきました」
「オリバー様の妹ミラ様は、もうすぐリアム・ハサノフ子爵に嫁がれますよね? 奇遇だわ、ちょうど当家がハサノフ子爵家に貸していたお金を、全額返済していただこうと思っていたところです。利息も含めればかなりの金額ですよ」
モーガン男爵家は金貸しのようなこともしており、お金に対してがめついとか、拝金主義だとか、そうした悪評は聞いたことがあった。
「私を脅しているのですか?」
「いいえ、お願いしているのですわ。脅しだなんて、人聞きの悪いことをおっしゃらないで」
モーガン男爵夫人は、真っ赤な口紅を塗った唇を歪めて笑った。
僕にアグネスと妹のミラを天秤にかけさせるなんて、あまりにも卑怯すぎる。次第に僕の家族を交えた家族会議にまで発展し、僕はどんどん追い詰められていく。
「アグネスはどうなるのですか?」
「アグネスは慣れていますわ。いつも『お姉さんなんだから』と言い聞かせてきましたからね。問題なんて何もありません」
モーガン男爵夫人の言葉に、嫌悪感を覚えた。きっと、彼女はずっとアグネスに我慢を強いてきたのだろう。
「お兄様、お願い ! リアム様を助けて! ハサノフ子爵領は去年洪水で農作物が大打撃を受け、その影響は今も続いているわ。全額返済なんて要求されたら破産してしまうわ」
「オリバー。自分の幸せを優先して、妹の結婚を壊す気か? 私はそんな勝手な人間に育てた覚えはない。長男なら、妹や弟を守るべきだろう?」
泣きながら懇願するミラを無視できない。
「アグネスは美しく、賢いですからね。高位貴族からの縁談もありますわ。オリバー様は心配なさらなくても大丈夫です。むしろ、アグネスはオリバー様と一緒になるより、もっと良い相手と結ばれて、幸せな生活を送るでしょう」
それから、僕はアグネスに会いに行くこともできなくなった。彼女から何度も手紙が届いた。最初の手紙は、僕の体調を気遣う優しいもので、次は「もし何かあなたを怒らせたのなら謝りたい」と、心から謝罪する内容だった。最後には、「なぜ返事をくれないのか」と真剣に問いかける手紙が届いた。すべての手紙を読んだし、正直なところ、すぐにでも彼女に会いに行きたかった。しかし、ミラのことが足かせになっていた。
その後、アグネスの嫁入りの話を耳にした。アリスによると、その相手はとても裕福な、格上の貴族らしい。僕はその話を聞いて胸が苦しくなった。自分が彼女を守れず、結果的に振ったような形になってしまったのに、今さら彼女のことを気にする資格なんてないはずだ。
しかし、アグネスが崖から飛び降りたと聞いたときには……言葉を失った。彼女が嫁がされそうになった相手は、二度も離婚歴のある、親子ほど年の離れたグラント・ネーグル子爵だったのだ。確かに地位も財産もある相手だが、それはあまりに酷い縁談だと思った。アグネスに対して、そんな扱いをしていいはずがないのに。
僕は自分が許せない。アグネスは救って欲しかったに違いない。毎日、手紙を書いては返事を待っていたのに違いないのに……
「お兄様、ごめんなさい。まさか、こんなことになるなんて」
ミラはしきりに謝ったが、悪いのはミラではなくて、こんな結果を招いたモーガン男爵夫妻だ。
愛する女性ひとり守れなかった自分が騎士団で副団長補佐などおこがましい。僕は騎士団をやめることを家族に伝えた。ハース男爵家は弟に継がせるように、父上にも言う。
「勝手なことを言うな。騎士団をやめるなんて許さんぞ。長男のくせにお前は……」
「もう既に長男の務めは果たしました。そのために最愛の女性を死なせてしまった。もう、たくさんだ。これからはアグネスの供養をしながら、好きに生きますよ」
そう言えば、父上は言葉を詰まらせた。死体さえないけれど、望まない嫁ぎ先へと向かう途中の自殺とされて、捜索は打ち切られる。事情を知った誰もがモーガン男爵夫妻を責め、僕とアグネスは毒親に引き裂かれた悲恋の恋人達になった。
そんなに美しいものじゃないよ・・・・・・だって僕はアグネスを捨てたのと同じ・・・・・・妹とハース男爵家を守った代わりに、この世で一番大事な女性を亡くした大ばか者なんだ。
虚しくて悲しくて・・・・・・自分も後を追って死にたかった……
ハース男爵家は弟に譲り王立騎士団も辞め、旅に出ることにした。この国にいてもアグネスを思い出して悲しいだけだから。
この国とローマムア大帝国、スペイニ国の3国はお互いが重なりあうようにして隣り合っている。胸ポケットからコインを取り出すと空に向かって放り投げた。裏ならローマムア大帝国。表ならスペイニ国だ。
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未だに国境付近の治安は守られておらず、ローマムア大帝国の下級騎士がたびたび悪さをしに侵入してきて平民の暮らしを脅かした。店からはお金を払わず物を平然と盗み、女子供に暴力をふるう。
僕はそのたびにスペイニ国民を助ける。スペイニ国にも王はいるが、民は貧困にあえぎ無法者から守られてもいない。
おかしい。ローマムア大帝国は豊かで強大な国だから、下級騎士であろうと飢えるはずはない。それなのにこの国で悪さをする為に、わざわざ国境を越えてやって来るのだろうか?
自分勝手な独裁者は愚政で飢えかけた国民の不満を外に向けさせるのが得意だ。庶民の暮らしがクソみたいに最低水準なのは、一部の上に立つ者が富を独占するからだ。それを誤魔化す為に、他国に庶民の不満を誘導するやり口はよく使われる手法だ。
・・・・・・もしかしたら、情報が操作されている? 仕組まれている?
定期的に街を荒らし、強奪していくローマムア大帝国の下級騎士と戦うそぶりもないスペイニ国の騎士達には違和感しか感じない。
「皆、ローマムア大帝国が怖いんですよ! 戦いたいけれど戦えないんです」
スペイニ国側の騎士達が情けない顔をして愚痴る。
自国を守る為に戦いもしない騎士なんて存在意義があるのか? ますます僕は首を捻る。
ついに住民達は憤りローマムア大帝国に復讐しに行くと言い出す者まで出てきた。ローマムア大帝国に乗り込み、「大事なものを傷つけてやる」と叫ぶスペイニ国の一部の過激派。
「大事なものってなんだい?」
「ローマムア大帝国には最近、留学先から戻ってきた皇帝の妹がいるんだって! そいつの誕生日には盛大なお祭りが開かれるって話だ。皇妹はそのパレードをご覧になるはずさ。だからそこで毒物をかけてやるのさ! 俺ら皆で行けば、一人ぐらい成功するんじゃね――か? 冷血皇帝の宝物だと聞いたぜ!」
時間は少し遡る。アグネスは崖から飛び降りたはずなのに、なぜか一人の男性の腕に抱かれていた。崖の途中の窪みに奇跡的に収まっているが、これはどのような状況なのだろうか?
「ビクトリア。最愛の妹よ。やっと見つけ出した……」
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