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ꕤ୭*マリリン・ギャラテ侯爵令嬢視点
それは初めて夜会で見たとても素晴らしい美貌の持ち主。あの見事な金髪と澄んだ蒼い瞳に私の心はわしづかみにされたわ。なんで今まで気がつかなかったのかしら?
その方の名前はライアン・チョコラ伯爵。でも一瞬で失恋することになる。それは彼の傍らに婚約者がいたから。
――ふん、あの女が婚約者? 黒髪は艶々と天使の輪を描き色白で目はぱっちり、均整のとれたプロポーションのなかなかの美人ね。でも、私は侯爵令嬢だから相手が私より上の爵位なはずはないわ。貴族の令嬢達のお茶会でも見たことないもの。
「ライアン様! どうか私の手を取って! 私こそが真実の愛に相応しい相手なのよ。私はライアン様と同じ髪の色と瞳、そして由緒ある貴族の家柄! どう考えても私をとるべきでしょう?」
私はその女が離れた隙を見計らって声をかけてみた。
「まぁ、そうだよね。でも、私はダイアナのお祖父様には金を援助してもらっていて・・・・・・ダイアナは平民だが金持ちだ」
「あらあら、伯爵ともあろう方がたかが平民を怖がるなんて! あいつらは所詮、私達貴族の下僕ですわ。私達は選民ですから! 平民からの借金ぐらい踏み倒しても相手は泣き寝入りですわ。高位貴族のギャラテ侯爵家が介入すれば一発で解決です」
――確かに爵位をとりあげられたのは税金を払わなかっただからだし、平民から借りたお金を返さないで酷い目にあったことはなかった気がする。なんで今まで、それに気がつかなかったのだろう?
「あぁ、そうだな。相手はただの平民。だとしたら踏み倒せるか・・・・・・裁判になっても裁判官は貴族の味方だよね?」
「ふっ。そもそも、普通の平民は貴族相手に裁判など起こせませんわ。裁判官だって出身は皆貴族ですよ」
「だったら私はマリリンを選ぶよぉ。いいことを教えてくれてありがとう」
ライアンは急に子犬のような表情になり嬉しそうに笑った。なんて、可愛いの!
ーー他の女の男をとるってすっごい快感! 自分がどの女より優れていると確信できる充足感。最高だわ。
けれど数日後、なぜかギャラテ侯爵家の執事と侍女長がやってきて退職願いを出してきた。
「長い間、お世話になりました」
それだけを言って、そそくさと荷物をまとめて出て行こうとしたのだ。
「おい、こんなにいきなり辞めるのなら退職金も次の仕事先の紹介状もやらんぞ!」
お父様の怒りの言葉にも澄ました顔で答えたのだった。
「大丈夫でございます。退職金も紹介状も必要ございませんので。では、失礼いたします」
あっという間に出て行った二人に唖然としていると、後ろからぞろぞろと侍女達が退職願いを持って並んでいる。
「ひゃぁーー! なんだ、これは? どういうことだ!」
お父様は顔色を変えて侍女達を引き止める。
「給料は今までの1.2倍にしよう。いや1.5倍だ! それならどうだ?」
「いいえ、こちらは家庭の事情でして」
「私は母の様態が・・・・・・」
「俺は父の病気の看護で・・・・・・」
使用人の全ての家庭で家族が病気になったり怪我をしたり。これが本当なら怪奇現象だ。侍従達や下女、コック達までがズラッと並び順番を待っていた。
ーーいったい、これはどういうことなのぉ~~?
それは初めて夜会で見たとても素晴らしい美貌の持ち主。あの見事な金髪と澄んだ蒼い瞳に私の心はわしづかみにされたわ。なんで今まで気がつかなかったのかしら?
その方の名前はライアン・チョコラ伯爵。でも一瞬で失恋することになる。それは彼の傍らに婚約者がいたから。
――ふん、あの女が婚約者? 黒髪は艶々と天使の輪を描き色白で目はぱっちり、均整のとれたプロポーションのなかなかの美人ね。でも、私は侯爵令嬢だから相手が私より上の爵位なはずはないわ。貴族の令嬢達のお茶会でも見たことないもの。
「ライアン様! どうか私の手を取って! 私こそが真実の愛に相応しい相手なのよ。私はライアン様と同じ髪の色と瞳、そして由緒ある貴族の家柄! どう考えても私をとるべきでしょう?」
私はその女が離れた隙を見計らって声をかけてみた。
「まぁ、そうだよね。でも、私はダイアナのお祖父様には金を援助してもらっていて・・・・・・ダイアナは平民だが金持ちだ」
「あらあら、伯爵ともあろう方がたかが平民を怖がるなんて! あいつらは所詮、私達貴族の下僕ですわ。私達は選民ですから! 平民からの借金ぐらい踏み倒しても相手は泣き寝入りですわ。高位貴族のギャラテ侯爵家が介入すれば一発で解決です」
――確かに爵位をとりあげられたのは税金を払わなかっただからだし、平民から借りたお金を返さないで酷い目にあったことはなかった気がする。なんで今まで、それに気がつかなかったのだろう?
「あぁ、そうだな。相手はただの平民。だとしたら踏み倒せるか・・・・・・裁判になっても裁判官は貴族の味方だよね?」
「ふっ。そもそも、普通の平民は貴族相手に裁判など起こせませんわ。裁判官だって出身は皆貴族ですよ」
「だったら私はマリリンを選ぶよぉ。いいことを教えてくれてありがとう」
ライアンは急に子犬のような表情になり嬉しそうに笑った。なんて、可愛いの!
ーー他の女の男をとるってすっごい快感! 自分がどの女より優れていると確信できる充足感。最高だわ。
けれど数日後、なぜかギャラテ侯爵家の執事と侍女長がやってきて退職願いを出してきた。
「長い間、お世話になりました」
それだけを言って、そそくさと荷物をまとめて出て行こうとしたのだ。
「おい、こんなにいきなり辞めるのなら退職金も次の仕事先の紹介状もやらんぞ!」
お父様の怒りの言葉にも澄ました顔で答えたのだった。
「大丈夫でございます。退職金も紹介状も必要ございませんので。では、失礼いたします」
あっという間に出て行った二人に唖然としていると、後ろからぞろぞろと侍女達が退職願いを持って並んでいる。
「ひゃぁーー! なんだ、これは? どういうことだ!」
お父様は顔色を変えて侍女達を引き止める。
「給料は今までの1.2倍にしよう。いや1.5倍だ! それならどうだ?」
「いいえ、こちらは家庭の事情でして」
「私は母の様態が・・・・・・」
「俺は父の病気の看護で・・・・・・」
使用人の全ての家庭で家族が病気になったり怪我をしたり。これが本当なら怪奇現象だ。侍従達や下女、コック達までがズラッと並び順番を待っていた。
ーーいったい、これはどういうことなのぉ~~?
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