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74 決闘(ゴロヨ副団長補佐視点)
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※魔法騎士副団長を長いので副団長と省略して書いています。
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これにはさすがの俺も堪忍袋の緒が切れた。俺だけのことをバカにしてくるのならまだいい。だが、グラフトン侯爵家のことまで持ち出され、ナサニエルの副団長としての資質まで疑われた。俺を補佐にしてくれたのは、デリア様のウエディングベールとはまるで無関係なのに、ナサニエルをそのような私情を持ち込む副団長と決めつけられたことに腹が立った。
「アルドリック中隊長はナサニエル副団長を愚弄するのか? ナサニエル副団長はそのような私情を挟む方ではないぞ」
「だったら、ゴロヨの実力を証明してみろよ。お前は私より遙かに劣った存在だよ。家柄も魔法の才能も全てにおいてだ」
「誰も生まれる家は選べないからな。アルドリック中隊長の家がたまたま貴族だっただけだろう? そこまで言うなら正式に決闘を申し込む!」
決闘は騎士団の伝統に基づいており、名誉の問題に関しては決闘で解決することが許されていた。決闘の条件としては、一対一で行われ、魔法と剣技の両方が許される。勝者は自らの名誉を守り、敗者は公に謝罪しなければならない。
「ああ、生臭い漁師がこのアルドリックに挑むとは笑止千万だよ。だが、楽しませてくれそうだね。君のような者を相手にするのは時間の無駄だと思っていたが、少しは面白くなりそうだ。まあ、すぐにでも君の無謀さを思い知らせてあげよう。覚悟はいいかな?」
(いちいちムカつく奴だな。覚悟なんてとっくにできているし、負けるつもりはさらさらないぞ。俺がナサニエルの補佐でいることが間違っていないことを証明するさ。ナサニエルの決定が私情を挟んだ依怙贔屓ではないことを知らしめてやる)
騎士団の訓練場に集まった多くの騎士たちの中で、特に平民出身の者たちの目は一様に俺に注がれていた。彼らの間には、俺への期待と共感が溢れているようだった。訓練場の片隅では、数人の平民出身騎士が小声で話し合っていた。
「ゴロヨ副団長補佐が勝てば、我々平民出身者にも道が開かれる。彼はナサニエル副団長の右腕だし、我々の希望だよ」
「アルドリックのような貴族がどんなに優れていようと、ゴロヨ副団長補佐のほうが上だよ。彼の勝利は、我々全員の勝利だ」
平民騎士たちの目は俺に釘付けで、訓練の一挙手一投足を見守りながら、時折励ましの言葉を投げかけてくれた。俺が技を決めるたび、彼らの間から小さな歓声が漏れたのさ。
「ゴロヨ副団長補佐は我々の誇りを背負っている。絶対に、勝つさ」
「元第9小隊の意地を見せてやれ! 俺らはナサニエル副団長の親衛隊で、ゴロヨ副団長補佐は親衛隊長だからな」
ペーンとイアゴを筆頭に元第9小隊の仲間たち、今はナサニエル直属部隊のみんなが、俺を励まし必ず勝つようにと祈ってくれた。
このように、平民出身の騎士たちは俺に大きな期待を寄せ、俺の成功を自分たちの可能性として捉えているのがわかった。ここはどうしても、勝たねばならん。
☆彡 ★彡
ナサニエルが副団長になってから、食堂は大規模に改装され、今は平民も貴族も同じ大食堂で食事をするようになっていた。俺はその大食堂で貴族出身の騎士たちの不満の声を耳にした。彼らは俺が挑戦を申し込んだことについて、明らかに反感を抱いているようだった。
「信じられない、あの平民が!」一人の騎士が声を荒げた。
「彼のような者が我々に挑むなど、身の程を知らない。」
「まったくだ。平民が出しゃばるなんて、団の名誉に関わる」と別の騎士が付け加えた。
彼らの言葉には俺への明確な軽蔑が込められていた。 俺は彼らに背を向けたまま、静かに聞いていた。 心の中では、俺の決断の正しさを証明しているように思った。 彼らは俺たち平民がただ黙って従うべきだと思っている。 だが、俺は違う。 俺は俺の力で道を切り開く。
食堂を後にしながら、俺は決意を新たにした。 この決闘はただの勝負ではない。 これは俺たち平民が貴族にどれだけ肩を並べるかを示す戦いだ。 俺は彼らの不満や反感など気にしない。 俺は俺の戦いを戦うんだ。
そうして俺は今、ナサニエルの執務室の前に立っていた。 ドアを開けると、彼は真剣な表情で書類を見つめていたが、俺が入ると静かに顔を上げた。
「ゴロヨ補佐、決闘のことで何か?」
決闘になったという情報は、既にナサニエルの耳には届いていたし、その声は落ち着いていた。
「この決闘をどのように考えているか、ナサニエルの考えを聞きたい」
ナサニエルは一瞬思考にふけるように見えたが、すぐに口を開いた。
「この決闘は団内の緊張を高めるかもしれない。だが、同時に団員間の和解と結束を促進する機会にもなりえます」
彼の言葉には確固たる信念が感じられた。 ナサニエルは決闘を単なる対立ではなく、団員間の相互理解と尊重を深めるきっかけとして捉えているようだった。
「私たち騎士団は多様性を受け入れそれを強みとする組織になるべきだ。 ゴロヨ補佐の挑戦は、そうした団の価値を再確認する機会だと思います」
俺は深く感じ入りながら、彼の言葉を胸に刻んだ。 ナサニエルはこの団をただ統率するだけでなく、団員一人ひとりの成長と和解を真剣に考えている。 それが彼が尊敬される理由だ。
俺はナサニエルに敬礼し部屋を後にした。 心はより一層、決闘への覚悟を固めていたのだった。
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これにはさすがの俺も堪忍袋の緒が切れた。俺だけのことをバカにしてくるのならまだいい。だが、グラフトン侯爵家のことまで持ち出され、ナサニエルの副団長としての資質まで疑われた。俺を補佐にしてくれたのは、デリア様のウエディングベールとはまるで無関係なのに、ナサニエルをそのような私情を持ち込む副団長と決めつけられたことに腹が立った。
「アルドリック中隊長はナサニエル副団長を愚弄するのか? ナサニエル副団長はそのような私情を挟む方ではないぞ」
「だったら、ゴロヨの実力を証明してみろよ。お前は私より遙かに劣った存在だよ。家柄も魔法の才能も全てにおいてだ」
「誰も生まれる家は選べないからな。アルドリック中隊長の家がたまたま貴族だっただけだろう? そこまで言うなら正式に決闘を申し込む!」
決闘は騎士団の伝統に基づいており、名誉の問題に関しては決闘で解決することが許されていた。決闘の条件としては、一対一で行われ、魔法と剣技の両方が許される。勝者は自らの名誉を守り、敗者は公に謝罪しなければならない。
「ああ、生臭い漁師がこのアルドリックに挑むとは笑止千万だよ。だが、楽しませてくれそうだね。君のような者を相手にするのは時間の無駄だと思っていたが、少しは面白くなりそうだ。まあ、すぐにでも君の無謀さを思い知らせてあげよう。覚悟はいいかな?」
(いちいちムカつく奴だな。覚悟なんてとっくにできているし、負けるつもりはさらさらないぞ。俺がナサニエルの補佐でいることが間違っていないことを証明するさ。ナサニエルの決定が私情を挟んだ依怙贔屓ではないことを知らしめてやる)
騎士団の訓練場に集まった多くの騎士たちの中で、特に平民出身の者たちの目は一様に俺に注がれていた。彼らの間には、俺への期待と共感が溢れているようだった。訓練場の片隅では、数人の平民出身騎士が小声で話し合っていた。
「ゴロヨ副団長補佐が勝てば、我々平民出身者にも道が開かれる。彼はナサニエル副団長の右腕だし、我々の希望だよ」
「アルドリックのような貴族がどんなに優れていようと、ゴロヨ副団長補佐のほうが上だよ。彼の勝利は、我々全員の勝利だ」
平民騎士たちの目は俺に釘付けで、訓練の一挙手一投足を見守りながら、時折励ましの言葉を投げかけてくれた。俺が技を決めるたび、彼らの間から小さな歓声が漏れたのさ。
「ゴロヨ副団長補佐は我々の誇りを背負っている。絶対に、勝つさ」
「元第9小隊の意地を見せてやれ! 俺らはナサニエル副団長の親衛隊で、ゴロヨ副団長補佐は親衛隊長だからな」
ペーンとイアゴを筆頭に元第9小隊の仲間たち、今はナサニエル直属部隊のみんなが、俺を励まし必ず勝つようにと祈ってくれた。
このように、平民出身の騎士たちは俺に大きな期待を寄せ、俺の成功を自分たちの可能性として捉えているのがわかった。ここはどうしても、勝たねばならん。
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ナサニエルが副団長になってから、食堂は大規模に改装され、今は平民も貴族も同じ大食堂で食事をするようになっていた。俺はその大食堂で貴族出身の騎士たちの不満の声を耳にした。彼らは俺が挑戦を申し込んだことについて、明らかに反感を抱いているようだった。
「信じられない、あの平民が!」一人の騎士が声を荒げた。
「彼のような者が我々に挑むなど、身の程を知らない。」
「まったくだ。平民が出しゃばるなんて、団の名誉に関わる」と別の騎士が付け加えた。
彼らの言葉には俺への明確な軽蔑が込められていた。 俺は彼らに背を向けたまま、静かに聞いていた。 心の中では、俺の決断の正しさを証明しているように思った。 彼らは俺たち平民がただ黙って従うべきだと思っている。 だが、俺は違う。 俺は俺の力で道を切り開く。
食堂を後にしながら、俺は決意を新たにした。 この決闘はただの勝負ではない。 これは俺たち平民が貴族にどれだけ肩を並べるかを示す戦いだ。 俺は彼らの不満や反感など気にしない。 俺は俺の戦いを戦うんだ。
そうして俺は今、ナサニエルの執務室の前に立っていた。 ドアを開けると、彼は真剣な表情で書類を見つめていたが、俺が入ると静かに顔を上げた。
「ゴロヨ補佐、決闘のことで何か?」
決闘になったという情報は、既にナサニエルの耳には届いていたし、その声は落ち着いていた。
「この決闘をどのように考えているか、ナサニエルの考えを聞きたい」
ナサニエルは一瞬思考にふけるように見えたが、すぐに口を開いた。
「この決闘は団内の緊張を高めるかもしれない。だが、同時に団員間の和解と結束を促進する機会にもなりえます」
彼の言葉には確固たる信念が感じられた。 ナサニエルは決闘を単なる対立ではなく、団員間の相互理解と尊重を深めるきっかけとして捉えているようだった。
「私たち騎士団は多様性を受け入れそれを強みとする組織になるべきだ。 ゴロヨ補佐の挑戦は、そうした団の価値を再確認する機会だと思います」
俺は深く感じ入りながら、彼の言葉を胸に刻んだ。 ナサニエルはこの団をただ統率するだけでなく、団員一人ひとりの成長と和解を真剣に考えている。 それが彼が尊敬される理由だ。
俺はナサニエルに敬礼し部屋を後にした。 心はより一層、決闘への覚悟を固めていたのだった。
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