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61 お鮨を食べようその2(デリア視点)そして、新たな人物登場!
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頭と尾を切り落としたら、いよいよ背骨に沿って2つにザクリと切り三枚におろしていく。
「これがフィレと呼ばれるものです・・・・・・」
源さんは丁寧に説明しながら豪快に切り分けていくけれど、正直その手際の良さと魚の身の綺麗な断面に心を奪われて、魚の部位の名前などは覚えられないわ。
刺身包丁の刃がまぐろの身にスムーズに入り込み、芸術的な動きで魚を解体していく。包丁が舞い踊り、まぐろの身がひときわ美しい輝きを放つなか、あれほど大きかった魚があっという間に薄く削るように切られた。
「そぎ切りは特に脂ののった部位や高級な魚の刺身など、素材の風味を最大限に引き出すための切り方です。これを上手に切るには長い修行期間が必要なのですよ。なかなか、すぐに身につくものではないです」
自慢気にそう言い放った源さんに、私とエレナ王女殿下は見惚れて盛大な拍手を送った。これこそ職人技というものだと思う。
そぎ切りにされた身は、白い粒々を握った上にそっと置かれた。白い粒々は米と呼ばれており、酢と砂糖等で味付けされていたわ。
源さんは大きな魚を捌いた後でも、疲れることなくにこにこと鮨を握り続けた。小さく握られた米にちょこんと乗せられた生魚を、エレナ様とペーン様はキョトンとして見つめた。
まず、私がお手本を示したわ。お魚の上に緑の香辛料を乗せてほんの少し黒い液体をたらすと、手づかみで口の中に入れた。魚の生臭さなど一切感じられず、まぐろの旨味だけがじんわりと広がる。赤身の部分はさっぱりとした味わいで、大トロと呼ばれる部分は口のなかで溶けていった。
「うわぁー、美味しい! 生の魚を食べるのは初めてです。こんなに美味しいものだなんて知りませんでした」
私を真似て生魚を食べたエレナ王女殿下は、目を輝かせて絶賛してくれた。
「凄い! 俺にぴったりです。手づかみで食べられて、ほっとしました。フルコース料理を出されたら、育ちの悪さが目立ってしまいますからね。俺の家は八百屋でしたが、兄弟も多くて大皿料理を奪い合いの毎日でした」
ペーン様はそれを愉快なことだったように笑いながら話す。なんでも前向きに明るく捉える性格は、一緒に食事をしていても楽しかった。
次は鯛。鯛の鮨が目の前に現れると、まず視線を引きつけるのはその美しい彩りだった。真っ白で清らかな鯛の身が、酢飯に優雅に寄り添っている。鯛の薄切りはまさに芸術品のように均一に切られ、光沢を帯びていた。
鯛の上には大葉というハーブを細く切ったものが乗せられている。大葉からは爽やかな香りが漂よい、全体的な見た目に清澄な美しさと調和を生みだしていた。
鯛の味わいは淡白でありながらも、ほんのりとした旨味があり、口の中に広がる余韻も穏やかだった。特に新鮮なものは脂が適度にのっていて、口に含む瞬間に脂の甘みが広がると、源さんが説明した。
(ということは、今日の鯛はこの上なく新鮮だわね)
酢飯との相性も抜群で、鯛の刺身がさっぱりとした酸味と調和することで、全体のバランスが整っている。爽やかな大葉の風味や、わずかなワサビの辛味も加わり、味覚に新たな奥行きをもたらしていた。
総じて、鯛の刺身はその清らかな味わいと繊細な食感から、シンプルながらも優雅で美味しい海の幸を堪能できる一品だった。
甘エビはまるで宝石箱から飛び出したような鮮やかな美しさだった。均等に握られた酢飯の上に美しく並べられた甘エビが、一つ一つ繊細に仕上げられていた。透明感のある身と淡いピンク色が白い酢飯に映え、まるで春の花々が咲き誇る庭園のような美しさだった。
甘エビの身は口の中にほんのりとした甘みを与え、その繊細でしっとりとした食感が広がる。エビ本来の風味が存分に楽しめ、噛むたびにぷりっとした歯ごたえがあり、舌に広がるのはそのままの鮮やかな海の香りだった。
甘エビの鮨は見た目の美しさと共に、口に運べばその豊かな味わいが堪能できる贅沢な一品よ。彩りと味わい、食感が絶妙に調和しており、まさに美食の極みを味わうための宝石のような存在といえるわね。
「このお料理をガーネット王国でも出したいです。ガーネット王国のドレス用生地やフルーツなどをもっとたくさん持って来ますから、お魚の解体技術や酢飯の作り方などを教えていただけないでしょうか?」
エレナ王女殿下のそんな言葉が、東洋の国とガーネット王国が国交を始めるきっかけにもなり、イシャーウッド王国も交えた国同士の活発な交流が開けていった。
外交交渉、貿易合意、国際協力、国際機関での連携などは外務大臣であるお父様の管轄だから、前にも増してお父様は忙しくなり嬉しい悲鳴をあげていたわ。
もちろん、私もお父様を率先してお手伝いした。学園の授業が終わると、お父様のいる外務省に寄ることが多くなったの。そして、多くの話し合いをするためにイシャーウッド王国に訪れたのは、鮨の発祥国の皇太子だった。
皇太子は黒髪と黒い瞳の・・・・・・
「これがフィレと呼ばれるものです・・・・・・」
源さんは丁寧に説明しながら豪快に切り分けていくけれど、正直その手際の良さと魚の身の綺麗な断面に心を奪われて、魚の部位の名前などは覚えられないわ。
刺身包丁の刃がまぐろの身にスムーズに入り込み、芸術的な動きで魚を解体していく。包丁が舞い踊り、まぐろの身がひときわ美しい輝きを放つなか、あれほど大きかった魚があっという間に薄く削るように切られた。
「そぎ切りは特に脂ののった部位や高級な魚の刺身など、素材の風味を最大限に引き出すための切り方です。これを上手に切るには長い修行期間が必要なのですよ。なかなか、すぐに身につくものではないです」
自慢気にそう言い放った源さんに、私とエレナ王女殿下は見惚れて盛大な拍手を送った。これこそ職人技というものだと思う。
そぎ切りにされた身は、白い粒々を握った上にそっと置かれた。白い粒々は米と呼ばれており、酢と砂糖等で味付けされていたわ。
源さんは大きな魚を捌いた後でも、疲れることなくにこにこと鮨を握り続けた。小さく握られた米にちょこんと乗せられた生魚を、エレナ様とペーン様はキョトンとして見つめた。
まず、私がお手本を示したわ。お魚の上に緑の香辛料を乗せてほんの少し黒い液体をたらすと、手づかみで口の中に入れた。魚の生臭さなど一切感じられず、まぐろの旨味だけがじんわりと広がる。赤身の部分はさっぱりとした味わいで、大トロと呼ばれる部分は口のなかで溶けていった。
「うわぁー、美味しい! 生の魚を食べるのは初めてです。こんなに美味しいものだなんて知りませんでした」
私を真似て生魚を食べたエレナ王女殿下は、目を輝かせて絶賛してくれた。
「凄い! 俺にぴったりです。手づかみで食べられて、ほっとしました。フルコース料理を出されたら、育ちの悪さが目立ってしまいますからね。俺の家は八百屋でしたが、兄弟も多くて大皿料理を奪い合いの毎日でした」
ペーン様はそれを愉快なことだったように笑いながら話す。なんでも前向きに明るく捉える性格は、一緒に食事をしていても楽しかった。
次は鯛。鯛の鮨が目の前に現れると、まず視線を引きつけるのはその美しい彩りだった。真っ白で清らかな鯛の身が、酢飯に優雅に寄り添っている。鯛の薄切りはまさに芸術品のように均一に切られ、光沢を帯びていた。
鯛の上には大葉というハーブを細く切ったものが乗せられている。大葉からは爽やかな香りが漂よい、全体的な見た目に清澄な美しさと調和を生みだしていた。
鯛の味わいは淡白でありながらも、ほんのりとした旨味があり、口の中に広がる余韻も穏やかだった。特に新鮮なものは脂が適度にのっていて、口に含む瞬間に脂の甘みが広がると、源さんが説明した。
(ということは、今日の鯛はこの上なく新鮮だわね)
酢飯との相性も抜群で、鯛の刺身がさっぱりとした酸味と調和することで、全体のバランスが整っている。爽やかな大葉の風味や、わずかなワサビの辛味も加わり、味覚に新たな奥行きをもたらしていた。
総じて、鯛の刺身はその清らかな味わいと繊細な食感から、シンプルながらも優雅で美味しい海の幸を堪能できる一品だった。
甘エビはまるで宝石箱から飛び出したような鮮やかな美しさだった。均等に握られた酢飯の上に美しく並べられた甘エビが、一つ一つ繊細に仕上げられていた。透明感のある身と淡いピンク色が白い酢飯に映え、まるで春の花々が咲き誇る庭園のような美しさだった。
甘エビの身は口の中にほんのりとした甘みを与え、その繊細でしっとりとした食感が広がる。エビ本来の風味が存分に楽しめ、噛むたびにぷりっとした歯ごたえがあり、舌に広がるのはそのままの鮮やかな海の香りだった。
甘エビの鮨は見た目の美しさと共に、口に運べばその豊かな味わいが堪能できる贅沢な一品よ。彩りと味わい、食感が絶妙に調和しており、まさに美食の極みを味わうための宝石のような存在といえるわね。
「このお料理をガーネット王国でも出したいです。ガーネット王国のドレス用生地やフルーツなどをもっとたくさん持って来ますから、お魚の解体技術や酢飯の作り方などを教えていただけないでしょうか?」
エレナ王女殿下のそんな言葉が、東洋の国とガーネット王国が国交を始めるきっかけにもなり、イシャーウッド王国も交えた国同士の活発な交流が開けていった。
外交交渉、貿易合意、国際協力、国際機関での連携などは外務大臣であるお父様の管轄だから、前にも増してお父様は忙しくなり嬉しい悲鳴をあげていたわ。
もちろん、私もお父様を率先してお手伝いした。学園の授業が終わると、お父様のいる外務省に寄ることが多くなったの。そして、多くの話し合いをするためにイシャーウッド王国に訪れたのは、鮨の発祥国の皇太子だった。
皇太子は黒髪と黒い瞳の・・・・・・
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