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19 私は繋ぎ的な存在だよな(ナサニエル視点)
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「この金は受け取れんよ。ナサニエル君ができる償いは、これからデリアが出席するパーティ等でエスコート役をすることだ」
「はい? もちろん、私で良ければエスコートさせていただきますが」
なぜ、そのようなことをおっしゃるのだろう?・・・・・・しばし考えて、ひとつの結論に至った。これはアレだ。次の婚約者が正式に決まるまでの繋ぎ的なことだ。だから、償いとおっしゃったのか。
「しかしナサニエル君は痩せすぎだな。魔法省の宿舎からグラフトン侯爵邸は近い。ディナーは毎食こちらに来なさい」
「は? なぜでしょう?」
「君が不健康に見えるからだよ。デリアのエスコートをしっかりしてもらうためにも、もう少し食べなさい」
つまり、デリア嬢の一時的なエスコート役だとしても、デリア嬢に恥をかかすな、ということだな。
当たり前のように私の横にストンと座ったデリア嬢は、私の持参した巣箱の包みをほどき、顔を輝かせている。
きょ、距離が近すぎる。
「ナサニエル様! すごく素敵だわ。お花の彫刻が繊細ですし、綺麗にペイントなさったのね。お母様、ご覧になって? これは芸術品ですわ。とてもお庭に置いておけません。私のお部屋に飾ります」
「褒めすぎですよ。そのようなもので良いのならいくらでも作ります。今度はペイントせずに素朴な巣箱にしましょうか」
「えぇ、あまり素敵だと外に置けなくなるのでお願いします」
私が作った巣箱を大事に抱え、マカロンを嬉しそうに食べるデリア嬢がたまらなく可愛かった。
「そのような物でそれほど喜んでくださるなんて思わなかったです。ほんの手作りで、高価な物ではありませんよ」
「これはどんな宝石よりも高価でしてよ? ナサニエル様の手作りなのでしょう?」
「はい。宝石ほど価値のあるものではないんですが」
「宝石よりも何百倍も価値があります。だって、私のために作ってくださったのでしょう?」
「はい。デリア嬢の喜ぶ顔を思い浮かべて作る時間はとても幸せでした」
「嬉しい! 私もとても幸せだわ」
薔薇のように艶やかに微笑むデリア嬢は、なぜか私の口元にマカロンを差し出した。
「ほら、お口を開けてくださいな。さきほどお父様に、もっと食べるように言われたでしょう?」
言われるがまま口を開けると、ポンとマカロンが飛び込んできた。サルテッドキャラメル味のマカロンは、塩味のアクセントが効いたキャラメルの濃厚な甘さと、アーモンドのバランスが絶妙だった。
しかし、なぜ、私はデリア嬢からマカロンを食べさせられたのだろう?
婚約者の代わりってここまでするのか?
予行練習的な?
情報処理が頭の中で滞ってしまっているところで、グラフトン侯爵閣下がおっしゃった言葉に心臓が跳ね上がった。
「そう言えば、クラーク君の釣書に添付されていた成績簿はナサニエル君のものだったよ」
「はい? もちろん、私で良ければエスコートさせていただきますが」
なぜ、そのようなことをおっしゃるのだろう?・・・・・・しばし考えて、ひとつの結論に至った。これはアレだ。次の婚約者が正式に決まるまでの繋ぎ的なことだ。だから、償いとおっしゃったのか。
「しかしナサニエル君は痩せすぎだな。魔法省の宿舎からグラフトン侯爵邸は近い。ディナーは毎食こちらに来なさい」
「は? なぜでしょう?」
「君が不健康に見えるからだよ。デリアのエスコートをしっかりしてもらうためにも、もう少し食べなさい」
つまり、デリア嬢の一時的なエスコート役だとしても、デリア嬢に恥をかかすな、ということだな。
当たり前のように私の横にストンと座ったデリア嬢は、私の持参した巣箱の包みをほどき、顔を輝かせている。
きょ、距離が近すぎる。
「ナサニエル様! すごく素敵だわ。お花の彫刻が繊細ですし、綺麗にペイントなさったのね。お母様、ご覧になって? これは芸術品ですわ。とてもお庭に置いておけません。私のお部屋に飾ります」
「褒めすぎですよ。そのようなもので良いのならいくらでも作ります。今度はペイントせずに素朴な巣箱にしましょうか」
「えぇ、あまり素敵だと外に置けなくなるのでお願いします」
私が作った巣箱を大事に抱え、マカロンを嬉しそうに食べるデリア嬢がたまらなく可愛かった。
「そのような物でそれほど喜んでくださるなんて思わなかったです。ほんの手作りで、高価な物ではありませんよ」
「これはどんな宝石よりも高価でしてよ? ナサニエル様の手作りなのでしょう?」
「はい。宝石ほど価値のあるものではないんですが」
「宝石よりも何百倍も価値があります。だって、私のために作ってくださったのでしょう?」
「はい。デリア嬢の喜ぶ顔を思い浮かべて作る時間はとても幸せでした」
「嬉しい! 私もとても幸せだわ」
薔薇のように艶やかに微笑むデリア嬢は、なぜか私の口元にマカロンを差し出した。
「ほら、お口を開けてくださいな。さきほどお父様に、もっと食べるように言われたでしょう?」
言われるがまま口を開けると、ポンとマカロンが飛び込んできた。サルテッドキャラメル味のマカロンは、塩味のアクセントが効いたキャラメルの濃厚な甘さと、アーモンドのバランスが絶妙だった。
しかし、なぜ、私はデリア嬢からマカロンを食べさせられたのだろう?
婚約者の代わりってここまでするのか?
予行練習的な?
情報処理が頭の中で滞ってしまっているところで、グラフトン侯爵閣下がおっしゃった言葉に心臓が跳ね上がった。
「そう言えば、クラーク君の釣書に添付されていた成績簿はナサニエル君のものだったよ」
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