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6 アイリス視点 / ジュリア視点
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ꕤ୭*アイリス・ハービィ女公爵視点
「私は狭義の意味では王族ではありませんよ。現王妃殿下の伯母ですからね。ただ公爵家はそもそも王にならなかった先王の子供が賜る爵位ですからね。そういった意味では王族ですが。そこのベイリャル公爵夫人は先王の娘、現国王の妹ですがあなたの母親がしでかした愚行の被害者だったことはご存じかしら?」
ハッチンソン公爵夫人は得意そうにジュリアに説明しようとする。
知らなくていいことを教えるのが正しいとは思わないが、こんな勘違いを正すにはそれしかないようね。
「被害者? さぁ、何も聞いてません。母さんはこのハービィ女公爵に嵌められたのだと思います。その証拠に一番得した人間がこのハービィ女公爵とマリアですもの!」
あぁ、そうなふうに思っていたのか! やはりジュリアはあのダーシーお姉様の子だ。思い込みの激しさや自分に都合の良い解釈をするのが得意なあのお姉様とそっくりなのね。
「嵌められた? 嵌められたのはあたくしとそこのベイリャル公爵夫人(モニカ王女)ですよ。やはり事実を伝えないで引き取ったのは間違いだったようね。あなたのお母様のダーシーお姉様は素行が大変悪く、変装をして夜ごと遊び歩いていたのよ。しかも目立つ髪色を隠す為にカツラを被ってカラーコンタクトまでして変装したの。背格好が似ていたあたくしとベイリャル公爵夫人が代わりに悪評を立てられたのよ」
私は洗いざらい教えるとにした。こうなってはそうするしかないものね。
「そんなの嘘だわ」
「いいえ、嘘じゃないわ。あたくし達は身長が他の女性達より10センチは高いのよ。すらりと背が高くて髪色が銀髪だと私。黒髪だとベイリャル公爵夫人、ピンクならダーシーだわ。だから、あたくしとベイリャル公爵夫人は夜遊びをするふしだらな女性と噂されとても迷惑したのよ」
「嘘だわ! そんなのでっち上げです。信じないわよ、そんな話は!」
「困ったなぁ。だったら今写真を持ってくるよ。私が昔撮ったものだけれどね」
夫は苦笑しながら昔の証拠写真をとってきたのだった。
なんでこのおめでたい席で昔のハービィ公爵家の恥をほじくりかえされなければいけないの! 引き取ったことはやはり大きな間違いだったわ。
ーー世の中にはしてもらったことに感謝する者もいれば、してくれなかったことに文句だけを言う者がいる。ジュリアは後者で、きっとなにをしてもらってもあら探しをして不平不満を言う性質なのだろう。
ꕤ୭*ジュリア視点
ハービィ女公爵の夫がなにやら持ってきて、大広間の床一面にぶちまけた。それは写真で、私によく似た女性が怪しげな会場に着くなり大きな荷物をもって化粧室に行き、銀髪になって出てくる様子が連写されていた。
「私が王女殿下の護衛騎士だった頃、ダーシーを尾行して写したものだ。ジュリアの母親はこのように変装して夜ごと遊び歩いていたんだよ」
ルーバン様が苦笑しながらあたしに説明するけれど、もちろんでっち上げに決まってるわ。
「そうよ。お姉様の部屋には黒髪と銀髪、それに栗色とブロンドのカツラもあったのよ。栗色とブロンドの高身長の女性で貴族の令嬢はいなかったから謎の女性と思われていたけれど、黒髪と銀髪を使った時点であたくしとモニカ王女殿下に見えてしまうのよ。背格好がとてもよく似ていたので遠目にはそう見えるだろうし、まして秘密の仮面パーティなら照明は暗いでしょうからね。」
「そ、そんなぁ・・・・・・あ、わかった! ハービィ女公爵の夫であるルーバン様が撮ったものならねつ造に違いないわ! 全てはハービィ女公爵がやったことでルーバン様が自分の恋人を庇うためにでっちあげたんだ! あぁ、良かった。これで母さんの汚名を晴らすことができるわ。覚悟しなさい! この爵位泥棒め!」
あたしはとても頭がいいわ。すぐにこれが嘘だと見破れたもの!
ところが、あたしは頬にいきなり鋭い痛みを感じた。誰かが、あたしの頬を殴ったのよ。
「誰よ? マリアでしょう! 卑怯者!」
その手を掴んで思いっきり噛みついたら、オスカー様が涙目になって痛がっていた。
「なによぉおおおーー! 結婚を誓い合ってあたしを殴るなんてこのウジ虫がぁああーー!」
あたしはつい母さんのように声を張り上げた。母さんはよく男の人と言い争いをするときは必ず『ウジ虫』と言ったから。
「私は狭義の意味では王族ではありませんよ。現王妃殿下の伯母ですからね。ただ公爵家はそもそも王にならなかった先王の子供が賜る爵位ですからね。そういった意味では王族ですが。そこのベイリャル公爵夫人は先王の娘、現国王の妹ですがあなたの母親がしでかした愚行の被害者だったことはご存じかしら?」
ハッチンソン公爵夫人は得意そうにジュリアに説明しようとする。
知らなくていいことを教えるのが正しいとは思わないが、こんな勘違いを正すにはそれしかないようね。
「被害者? さぁ、何も聞いてません。母さんはこのハービィ女公爵に嵌められたのだと思います。その証拠に一番得した人間がこのハービィ女公爵とマリアですもの!」
あぁ、そうなふうに思っていたのか! やはりジュリアはあのダーシーお姉様の子だ。思い込みの激しさや自分に都合の良い解釈をするのが得意なあのお姉様とそっくりなのね。
「嵌められた? 嵌められたのはあたくしとそこのベイリャル公爵夫人(モニカ王女)ですよ。やはり事実を伝えないで引き取ったのは間違いだったようね。あなたのお母様のダーシーお姉様は素行が大変悪く、変装をして夜ごと遊び歩いていたのよ。しかも目立つ髪色を隠す為にカツラを被ってカラーコンタクトまでして変装したの。背格好が似ていたあたくしとベイリャル公爵夫人が代わりに悪評を立てられたのよ」
私は洗いざらい教えるとにした。こうなってはそうするしかないものね。
「そんなの嘘だわ」
「いいえ、嘘じゃないわ。あたくし達は身長が他の女性達より10センチは高いのよ。すらりと背が高くて髪色が銀髪だと私。黒髪だとベイリャル公爵夫人、ピンクならダーシーだわ。だから、あたくしとベイリャル公爵夫人は夜遊びをするふしだらな女性と噂されとても迷惑したのよ」
「嘘だわ! そんなのでっち上げです。信じないわよ、そんな話は!」
「困ったなぁ。だったら今写真を持ってくるよ。私が昔撮ったものだけれどね」
夫は苦笑しながら昔の証拠写真をとってきたのだった。
なんでこのおめでたい席で昔のハービィ公爵家の恥をほじくりかえされなければいけないの! 引き取ったことはやはり大きな間違いだったわ。
ーー世の中にはしてもらったことに感謝する者もいれば、してくれなかったことに文句だけを言う者がいる。ジュリアは後者で、きっとなにをしてもらってもあら探しをして不平不満を言う性質なのだろう。
ꕤ୭*ジュリア視点
ハービィ女公爵の夫がなにやら持ってきて、大広間の床一面にぶちまけた。それは写真で、私によく似た女性が怪しげな会場に着くなり大きな荷物をもって化粧室に行き、銀髪になって出てくる様子が連写されていた。
「私が王女殿下の護衛騎士だった頃、ダーシーを尾行して写したものだ。ジュリアの母親はこのように変装して夜ごと遊び歩いていたんだよ」
ルーバン様が苦笑しながらあたしに説明するけれど、もちろんでっち上げに決まってるわ。
「そうよ。お姉様の部屋には黒髪と銀髪、それに栗色とブロンドのカツラもあったのよ。栗色とブロンドの高身長の女性で貴族の令嬢はいなかったから謎の女性と思われていたけれど、黒髪と銀髪を使った時点であたくしとモニカ王女殿下に見えてしまうのよ。背格好がとてもよく似ていたので遠目にはそう見えるだろうし、まして秘密の仮面パーティなら照明は暗いでしょうからね。」
「そ、そんなぁ・・・・・・あ、わかった! ハービィ女公爵の夫であるルーバン様が撮ったものならねつ造に違いないわ! 全てはハービィ女公爵がやったことでルーバン様が自分の恋人を庇うためにでっちあげたんだ! あぁ、良かった。これで母さんの汚名を晴らすことができるわ。覚悟しなさい! この爵位泥棒め!」
あたしはとても頭がいいわ。すぐにこれが嘘だと見破れたもの!
ところが、あたしは頬にいきなり鋭い痛みを感じた。誰かが、あたしの頬を殴ったのよ。
「誰よ? マリアでしょう! 卑怯者!」
その手を掴んで思いっきり噛みついたら、オスカー様が涙目になって痛がっていた。
「なによぉおおおーー! 結婚を誓い合ってあたしを殴るなんてこのウジ虫がぁああーー!」
あたしはつい母さんのように声を張り上げた。母さんはよく男の人と言い争いをするときは必ず『ウジ虫』と言ったから。
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